アメリカ合衆国の消費者物価指数(CPI)が発表された。6.5%の上昇率で景気加熱が鈍化している。この発表に伴って安堵と失望が交錯している。関連する記事を短くまとめた。
まず安堵の方から確認したい。前回の雇用統計と同じく景気加熱が鈍化しているということが確認された。
現在の高金利政策は景気を冷ますための措置であり景気加熱が鈍化すれば継続する必要はなくなる。出口はまだだが時事通信は「峠を越えた」と書く。また、連銀総裁の中には「次回は0.25%だ」と言及する人が出てきた。これまで暗かったトンネルの向こうに出口とみられる明かり(最終局面)が見えたということになる。投資家にとっては冬の終わりが見えたと読み取れる。
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現在の円安ドル高は日米の金利差が意識されている。高金利政策が続かなければ円安のポジションを取る必要はない。共同通信は一時129円台との見出しを打っているが128円台後半まで下がっている。行きすぎた円安が修正されれば輸入食材や燃料などの価格上昇が抑えられることになるだろう。これも明るい兆しと言って良い。
次は失望の方である。ここ最近の株式市場は「予想がどの程度外れるか」によって動く傾向がある。つまり極めて投機性が高くなっている。なんだ予想通りかということになり市場関係者の間には失望が広がっているようだ。Bloombergが伝えている。
さらに内容を詳しく見ると日用品の価格上昇は抑えられているもののサービスなどの価格上昇は抑えられていない。労働市場は比較的好調で失業者の数も増えていない。つまり完全雇用に近い状態が継続されているようだ。タイトな労働市場は景気加熱が容易に再燃することを意味している。つまり統計的な平均で市場が語れなくなった(つまり予想が難しくなった)ことになる。株式市場は「なんだ予想通りか」で失望しているのだが、その先の動向をつかみたい人たちの間には困惑が広がっている。一体何がどうなっているのかがわからなくなっているというわけである。
下院議長選挙での混乱でわかるように2024年の大統領選挙を見据えてアメリカの政治は混乱が続きそうだ。政治的に混乱が続けば引き続き金融政策だけでインフレ抑制を行わなければならなくなる。これが不安に一層の拍車をかけている。詳しい内容まで知る必要はないが、議会と大統領の動向については見出しレベルだけでも抑えておいた方が良いだろう。
日本の状況はどうだろうか。
金利差が縮小すれば日銀にも明るい兆しといえる。しかしこれまでの金利抑制があまりにも「異次元」だったため実際には国債買い入れの状況が悪化しているようだ。共同通信が記事を書いているが、記事よりもコメント欄の共同通信解説委員のコメントが興味深い。市場は日銀の窮状を見透かしているのではないかというような意味のことが書かれている。コメント欄の内容が興味深いため、共同通信の配信ではなくYahoo!ニュースの方の記事をご紹介しておく。
そもそもアメリカの利上げは鈍化するとはいえまだまだ続きそうだ。このため日本が低金利を固定するのはどんどん難しくなってゆくと容易に予想できてしまうのだ。黒田総裁の「事実上の利上げ」は市場に対してそれを仄めかしてしまったことになる。