ざっくり解説 時々深掘り

FOMCは0.75%で決着。直後に円の急騰もすぐに「鎮火」されてしまう。

FOMCでは「出口」に対する見通しは示されなかった模様

FOMC会合が行われ0.75%の利上げで決着した。通常であればかなりの利上げになるのだが、4会合連続なので特に驚きはなくなっている。事前には1%行くのではないかという観測も出ていたことから「予想通りに終わった」ということなのだろう。

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会見ではパウエル議長から「そろそろゴールが見えてきた」という見解が出ることが期待されたようだ。ロイターのまとめ(発言要旨)によると経済の悪化については分かっているがインフレ対策を優先する」との姿勢が改めて提示されたようだ。その上で「労働市場は引き続きタイトであり不均衡な状態にある」との認識を示し「最近のインフレ関連指標は予想を上回っている」と総括された。つまり気を許せば再び高いインフレが続く可能性があると見ていることになる。出口を示すような状況にはなっていないように思える。

ただ発言要旨が出てきたばかりの段階だ。今後また詳しい分析が出るものと期待される。引き続き注視したい。

財務省・日銀は為替介入をしたようだが市場に押し返される

FOMC発表直後に円相場が急騰した。他に買い手もいないところから急落を恐れた財務省・日銀が介入したのかもしれない。もちろん介入直後に「介入しました」と報告されることはないため発表は出ていない。「ステルス介入」というようにマスコミで報道されないこともある。

24時間体制で介入する体制が整っていると事前に宣言されているところからニューヨークで取引が行われている時間であっても躊躇せずに介入するとの意思を示したのだろう。ただこの急騰はすぐに市場によって押し戻された。介入前は147円前半だったが一時146円台前半になり、その後147円台後半まで下落している。却って市場の勢いの強さを感じる。

黒田日銀総裁は以前強気の姿勢

黒田総裁は「将来物価安定目標の実現が見通せる状況になったら柔軟に見直す」と国会で発言した。これを受けて「日銀が政策を変更するのでは」と円を買い戻す動きがあったと日本テレビが伝えている。

だがこれはおそらく「今はそうではないから政策は変更しない」という従来の見解を繰り返したに過ぎないだろう。金融政策だけで経済が安定成長の軌道に乗ることはないわけだから「特に何もしない」と言っているに過ぎない。

ではなぜ表現だけが変わったのか。政府からは「黒田さんには発言に気を遣ってほしい」というリクエストが出ていると朝日新聞が伝えている。答弁表現が変わったのは「黒田さんなりの配慮」だったのかもしれない。あるいは「どうせ国会答弁など表現の仕方の違いでどうにでもなる」と考えている可能性もある。

黒田総裁の立場に揺らぎがないことは明らかだ。従来通り「辞めるつもりはない」と強気の姿勢を示しつづけている。IMFからは「今は動かないでくれ」と期待されており、規模にこだわる岸田政権は国債発行に依存した補正予算の編成を行なっている。辞任目前の黒田総裁の自信にはそれなりの根拠がある。

これまで以上に日銀依存を強める政権

日銀は市中発行額以上の「10年368回債」を保有しているとされる。ロイターは極めて異例と書いている。市中にあるものだけが「発行残高」と言われるようで日経新聞の書き方だと「日銀は発行されている額以上の新発10年物国債(368回)を抱えている」という表現になる。つまり日銀は発行されたばかりの国債を市場から積極的に買い取っている。

同じことが次の国債でも起こることは明らかだ。岸田政権が支援者たちからの信任を勝ち取るための原資は黒田総裁に依存しているのだから政権が黒田さんを切れるはずはない。また黒田総裁の任期はもうあと半年なのだから「後のことはなるようになる」と考えてもそれほど不思議ではないだろう。

TBSは「物価高に苦しむ現場を見にきてほしい」というスーパー店主の要望を流している。庶民の声としては懇願に近いものがある。だが、おそらく黒田総裁は物価高を自分の問題だとは考えていないものと思われる。財政再建の見通しがないままで日銀が突然政策を変えればおそらく大きな混乱が起こる。つまり、野党の国会議員がいくら要請しようと実効力がないということを黒田氏はよく知っているのだ。

いずれにせよアメリカの金融政策の「出口」は遠く日銀は政策を変える見込みもなさそうだ。我が国の経済は財務省・日銀がどれくらいのドル資産を放出して日本円を買い支えることができるかにかかっているのかもしれない。

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