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イーロン・マスク氏のTwitter買収と試される民主主義

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Twitter社がついにイーロンマスクしに買収された。本来なら単なるテックニュースなのだが、今回は一味違っている。「言論の自由」が試されるという事態に陥っている。

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現職のパラグ・アグラワル最高経営責任者がCEOになったのは2021年11月だった。それまではCTOとしてモデレーションの自動化などに尽力してきた。政治的言論なども飛び交うTwitterではモデレーションは常に手間のかかる仕事だ。一部は機械化ができるのだろうが全てをAIによって管理することはできないだろう。

株主からは収益向上が期待されていたのだが、アグラワル氏ら経営陣はその期待に応えられず次第に買収先を探すようになっていった。そこに名乗りを挙げたのがイーロン・マスク氏だった。だが現在の経営陣とマスク氏の関係は必ずしも良好なものではなかったようだ。結局、多くの経営陣が会社を離れることになりそうである。追い出されるという見方もできるが経営悪化を持て余していたといえるのかもしれない。

マスク氏の買収は一筋縄ではいかず法廷闘争にまで発展していたが、結局マスク氏は買収を決めた。結果的にTwitter社の株式は非公開化されるようだ。資本構成が大きく変わるため、Twitterの経営方針はこれまでとは大きく変わりそうだ。

現在、懸念されているのがマスク氏がTwitterをどのような言論空間に変えるのか(あるいは変えないのか)という点だ。

マスク氏はかねてからTwitter社のモデレーション方針に反対していた。恣意的に言論を抑えているというのである。

BBCによればさらにマスク氏は「言論の自由絶対主義者」を自称している。右派は歓迎しているが左派は懐疑的だ。例えば、トランプ氏はTwitterの買収を歓迎している。トランプ氏は我が国を心底憎む急進左派の変人・狂人たちからTwitterが取り戻されたようだと主張している。またTwitterは私なしでは成功できないだろうと強烈な自負心をのぞかせている。

マスク氏の最初の仕事はCEOとCFOら旧経営陣の解雇だったわけだが次の仕事は投稿監視評議会の設置になる。マスク氏が考える「理想的な言論空間」を作るための「透明な」議論が始まるものと考えられている。

マスク氏のこれまでの言動から、マスク氏は自身を公明正大な人物だと認識しているようである。ただ最高権力者であることには変わりはない。大抵の場合最高権力者の考える公明正大さは公明正大ではない。

マスク氏は大規模なリストラを行うと発表している。一部では75%が退職を余儀なくされると言われているようだ。これまでのモデレーションチームも大規模な人員削減の対象になると見られている。つまりTwitterは「なんでもあり」の空間になることも予想される。すでに限界を試すような投稿が多数行われているようである。

Twitterが言論的に荒れれば広告主が離れる。広告主が離れれば過激な言論を取り締まらざるを得なくなる。それがこれまでTwitterが穏健に守られてきた「原理」のようなものである。マスク氏がTwitterのオーナーになったことでこの市場による統制は効かなくなる。マスク氏はTwitterをさまざまなことができるプラットフォームに変貌させるといっている。つまり広告依存はやめるということである。

すでにアメリカでは中間選挙前にかなり過激な言論が飛び交っているようだ。中間選挙前前後に「放埒な言動」がどこまで広がるのかが注目ポイントになりそうである。

安倍政権時代の日本でも「Twitterは官邸の味方ばかりしている」という不満が多かった。おそらくTwitter社の経営陣の入れ替えとモデレーション方針の入れ替えは少なからぬ影響を与えるのではないかと思われる。

女性、LGBTQ、少数民族などの存在に疑問を呈するような投稿が「表現の自由」として横行するようなことが起きた場合の対応は考えておいた方がいいかもしれない。情報取得がTwitter依存になっている人というのは意外と多いのではないだろうか。

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