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崖っぷちのネタニヤフ氏は11月1日の選挙を勝ち抜くことができるのか?

今週の火曜日11月1日にイスラエルで総選挙が行われるとCNNが伝えている。4年間で5度目の選挙だ。汚職裁判を抱えるネタニヤフ氏にとっては「崖っぷち」の選挙だ。イスラエルはアラブ人の土地だったところにユダヤ人を世界中から集めてきて作られた人工国家である。面積は四国と同じ程度で人口は1,000万人に満たない。一口に「ユダヤ人」「ユダヤ教徒」と言ってもさまざまな国や地域で独自の進化を遂げており考え方は一枚岩ではない。さらに元々のこの地域に住んでいたアラブ系の人たちが作った政党もある。

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複雑な成り立ちの国家のため、イスラエルには建国以来一度も過半数を確保した政党は現れなかった。与党を形成するために必要な議席数は過半数の61だが、この61議席がなかなか確保できない。

人口が増えるに従って住宅地などを確保する必要がでてくる。こうしてもともとアラブ人が多かったヨルダン川の西岸などに植民が行われた。2016年には入植地が国連安保理から非難決議が出ている。後ろ盾になったアメリカは拒否権を発動せず棄権した。オバマ大統領の任期最後の出来事でありトランプ次期大統領も介入したと言われているそうだ。

こうした不安定な状態で生まれた指導者がベンジャミン・ネタニヤフ氏である。今回もベンジャミン・ネタニヤフ氏が率いるリクードが政権に復帰できるかが争点になる。評判も高いが敵も多いという人物で政権は安定しない。今回の獲得議席も30程度とみられている。

ネタニヤフ氏には兼ねてからさまざまなスキャンダルがあった。そこで敵対勢力が結束して政権を奪取することに成功した。その政権が崩壊したのは2022年6月だった。連立政権は2年間成立していなかった予算を議会に通すことには成功したが、その代償は大きく離反者が出たことで内閣は崩壊したのだった。

現在はラピド暫定首相の統治下にあり総選挙を目指していた。

イスラエルは首相公選制を目指したことがある。だが首相と議会が敵対関係に陥ることが多く、首相公選制は中止された。やはり背景にあったのはネタニヤフ氏に対する反発だ。首相公選制にしろ大統領制にしろ、国のリーダーが議会でも多数派を勝ち取ることが安定の条件になることがわかる。今度の選挙でもネタニヤフ・反ネタニヤフで議会が二分されることが予想される。ネタニヤフ氏がいなくなればまとまる可能性はあるが少数とはいえ第一政党なので無視するわけにはいかないという状況である。

今回の選挙でネタニヤフ氏が率いるリクードが単独過半数をとる見込みはなく同調する勢力が過半数を取れるかも微妙な状態だそうだ。過半数が確保できればそのままネタニヤフ氏が代表に復帰することになる。仮にそうならなかった場合には相手陣営がまとまることができるかが鍵になる。大統領はネタニヤフが再び首相になることがないように「見込みのある人物」に組閣の要請をする可能性がある。

つまり、今回のイスラエルの議会選挙ではまずネタニヤフ氏とそれに同調する勢力が過半数を取れるかどうかが焦点になる。仮に過半数が取れなければ大統領が誰に組閣を依頼するのかが次の注目ポイントだ。

このように復帰の可能性も大きいネタニヤフ氏だが実は汚職裁判を抱えている。つまり首相に返り咲き汚職裁判を「なんとか」しなければ次はないという崖っぷちの状況だ。

ただし崖っぷちなのはネタニヤフ首相だけではない。テルアビブは世界一生活費が高いと言われているそうだ。イスラエルもまたインフレに見舞われているのである。コロナとウクライナの戦争によって物価が上がっているというよりはもともと物価が高い構造だったところに今回の危機が起きたという状況のようだ。周囲に拡張できる余地がない上にハイテク企業が集まり庶民の生活を圧迫していた。

アラブ人の土地に無理やり国をつくったイスラエルは常に難しい外交課題に直面し「なんでもあり」で乗り切る必要がある。だが、そのためには汚職などの矛盾も蓄積してゆく。つまりネタニヤフ氏くらいの政治家でなければ乗り切れないが常にその政治には危うさがつきまとうということになる。

まずは選挙が注目される。

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