ざっくり解説 時々深掘り

米雇用統計順調でアメリカの株価は下落。ドル円は145円ライン突破し日銀総裁「道半ばで退任へ」報道も。

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アメリカの雇用統計は好調だった。いい話のように思えるのだがアメリカ金融界は落胆している。こうした動きはドル円レートと連動しており我々の生活や政治に影響を与える。145円ラインが突破された。

そんな中、黒田総裁は任期が残り半年となったが少なくとも為替相場に関してはこれといった対策がなさそうだ。共同通信は「日銀の黒田総裁、道半ばで退任へ 金融緩和の出口見えず」と言う記事を出している。「すわ退任か」と思ったがこれは期待値込みの誤読だった。黒田総裁の任期はあと半年続く。

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共同通信の記事を読んで「すわ退任報道か」と思ったのだが「早くやめて次に道を譲った上でなんとかしてほしい」と思って勝手に行間を読んでいるだけだったようだ。変な期待と予備知識を持って記事を読むとろくなことにならない。

時事通信にはこのような誤読の余地はない。何が道半ばだったのかを示した上で「経済「好循環」道半ば 黒田日銀総裁、残り任期半年」というタイトルにしている。さらに時事通信の興味は次の総裁候補に移っており「次期日銀総裁、雨宮・中曽氏有力 政府、「ポスト黒田」検討本格化 異次元緩和の修正課題」となっている。

記事をよく読むと共同通信が言いたかったのは「黒田総裁の残りの任期が半年しかないが自身が掲げた目標が達成できなかった」ということなのだろうと思う。つまり単に再任がないと言っているだけである。

ちなみに共同通信は9月には「副総裁と任期を揃えるために3月に退任するのではないか」と書いている。日銀の低金利維持政策はこの時点まで続くことが予測されているため円安基調が崩れるのには時間がかかりそうだ。時事通信は人事交代で直ちに政策が変わることはないだろうと予測しているようである。

もっとも金融政策をめぐっては、市場では次期総裁に交代する来春以降も直ちに現行の大規模緩和策が修正されるとの見方は少ない。「雨宮氏、中曽氏のいずれが総裁になっても金融政策に大きな違いは出ない」との指摘が聞かれる。

次期日銀総裁、雨宮・中曽氏有力 政府、「ポスト黒田」検討本格化 異次元緩和の修正課題

一部の指摘する「籠城」はしばらく続くのかもしれない。

基本的に労働統計の数字が良いのは「経済が健全な証」であり。ロイターは「米9月雇用者26.3万人増、伸び鈍化も予想上回る 失業率3.5%に低下」と書いており依然アメリカ経済が好調であることがわかる。

ところが投資関係者はこれを良いことだとは思っていないようだ。ロイターは「米国株式市場=続落、FRB積極利上げによる景気懸念強まる」となっている。雇用統計の好調を受けて利上げが長引くかもしれないと言う予想が広がったようだ。

「株式市場は荒れている」と書こうと思ったが「もはやこの程度では荒れとは呼べないのではないか」というほど上下動が激しくなっている。共同通信はNY株、一時500ドル超安 米利上げ緩和期待が後退などとまとめる。

慣れてしまった人もいるかもしれないが0.75%の利上げというのはかなりのハイペースだ。先物市場ではこれが92%の確率で織り込まれたそうだ。米金利先物、11月0.75%利上げ確率92%に 予想上回る雇用統計でとなっている。ほぼ確実と見做されているのだろう。

こうなると当然「財務省・日銀が設定した例の防衛ラインはどうなるのだろう?」と思う人もいるのではないだろうか。当然突破されている。「NY円、145円台前半」だそうだ。雇用統計待ちの人たちが一斉に円売り・ドル買いに走りその後もじわじわと価を上げ始めているようだ。

これはマスコミが標準の世帯での年間負担率が70,000円から80,000円くらい増えると予測するラインである。資産が減った上に消費者にも影響を与える「悪い円安」の進行が続く。

こうした背景があり「黒田総裁の道半ばでの退任」というヘッドラインを見て一瞬ドキッとした。ついに力尽きてやめてしまうのか?と思ったからだ。だが実際のタイトルはおそらく「黒田総裁の任期が残り半年だが再任の期待はない」という程度のものだ。

黒田総裁が掲げてきた目標は「賃金の上昇」であり「為替相場の適切な維持」ではない。黒田総裁は為替介入は日銀の権限でも責任でもないといっている。一方で賃金上昇が金融政策だけで達成されることはない。

安倍政権のトリクルダウンセオリーには効果はなかった。岸田政権の「構造的な賃上げ」に至っては中身があるのかどうかもよくわからない。岸田総理は職能給についても触れているが人件費抑制圧力のある中で実施すればおそらく「リストラ(元々は再構築という意味合いしかない言葉だったがのちに解雇の別名としての意味合いが付加された)」と同じような意味合いで使われるようになるだろう。つまり職能のない人の賃金カットの名目にされてしまうわけだ。ただ岸田総理がそこまで考えて発言しているかは今のところは不明である。

タイトルが言いたかったのはおそらく「黒田総裁の任期は残り半年しかなく自身が掲げた目標は達成できなかった」ということなのだろう。だから「次の人は出口戦略探しで大変だろう」という観測になっている。ロイターやBloombergを読む限り「早くなんとかしてくれ」という声が強いため「道半ばで早期退任するのか」と勝手に思い込んでしまったがこれは誤解だったようだ。

黒田総裁の任期は10年を超える見込みだそうだ。10年も頑張ったが賃金上昇という達成できなかったのはなぜなのかという分析は共同通信には書かれていない。政権も労働組合もおそらく答えは持っていないとおもわれるので、共同通信が短く書くようなテーマではないのかもしれない。

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