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世界を揺さぶるためにザポリージャ原発を利用するロシア

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ウクライナ南部にあるザポリージャ原発が攻撃されている。この話の最も不気味な点はロシアの思惑がわからないことだ。プーチン大統領なら「クリミアやウクライナが手に入らないなら破壊されても構わない」くらいのことは考えそうだという恐ろしさがあるため容易に手出しができない。

一度ザポリージャ原発で最悪の事態が起これば周辺一帯に人が住めなくなるばかりか、ロシア・ヨーロッパ双方に環境汚染が広がることになるだろう。また、ウクライナの小麦に被害が及べば多くの新興国の経済危機はますます深刻化する。

今回過酷事故を食い止めたのは発電所内にある非常電源システムだったそうだが、攻撃はその後も続いている。

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まず。何が起こりかけているのかを簡単に確認する。福島第一原発では電源喪失により「過酷事故」に陥った。まず地震により外部電源が失われ、さらに津波による浸水により内部の非常用電源が失われたことにより注水ができなくなった。圧力容器の水が蒸発し続け最終的に燃料が水面から露出し炉心損傷が始まった。

ザポリージャでは外部からの送電線が一時遮断された。非常システムが作動したことで過酷事故はかろうじて食い止められた。この報道が出たのが8月26日だった。福島一歩手前というのがザポリージャの今の現状である。

ところが攻撃はこれでは終わらなかった。8月28日のNHKの報道によると27日にも砲撃があり双方とも「相手がやった」と繰り返していた。これが最新の状況である。

IAEAはこの時点で査察官を常駐させると発表していた。

IAEAの査察が決まるとロシア軍はウクライナ職員を地下に呼び出したようだ。地下で何が行われたのかはわからないのだが戻ってきた職員たちは一応に何も話さなくなったという話がウクライナ側の国営原子力企業から出ている。原発はこのようにかなり異常な状態で運営されている。これが3月から続いているそうだ。

ロシア側はウクライナ人職員たちがIAEAに告げ口をすることを恐れている。だが原発に熟知しているウクライナ人職員を「処分」することもできないのだろうということがわかる。職員たちはそもそも3月以来ロシアに占領されるという過酷な状況に置かれている上に重大事故からウクライナの国土を守らなければならないという使命感も持っているはずである。その緊張と過酷さを外側から想像することはできない。

ロシア側の思惑はよくわからない。ウクライナ側が南部やクリミア半島で反転攻勢に出ているため緊張を高めて東部に戦力を引き止めておきたいのだという観測がある。つまりザポリージャが軍事拠点化しているというのだ。地図で見るとザポリージャ原発はキーウからウクライナに向かう地点にありクリミアを守る緩衝地帯の入り口というような場所に立地している。

電力供給を遮断することによってロシアはウクライナを揺さぶることができる。原子力発電はウクライナの電力供給の1/5を占めているという。送電網を遮断することで停電が起これば市民生活は動揺する。

NHKの日曜討論ではウクライナへの電力を遮断してクリミア側に電力を送りたいのではないかと分析する人もいた。

ただこうした「普通」の感覚ではロシアの出方はもはや分析できないかもしれない。クリミアやウクライナが手にいてられないならこの地域などどうなってもいいと思いかねないという恐ろしさがある。もともと誇大なスラブ民族主義が侵攻の原因の一つになっており、最近では精神的支柱であるアレクサンドル・ドゥーギン氏の娘が何者かによって殺害されている。合理的な戦争というより「敵意と憎悪」が戦争を動かしている可能性は否定できない。

砲弾4発は核燃料保管施設にも当たっている。こうなると「わざと核災害を狙っている」と思われても仕方ない。こうなるとこれは拡大自殺である。ロシアが存在できないなら、または自分たちの思い通りにならないならこの地域ごと巻き添えにしてやるという恐ろしさを感じる。このため先進国は迂闊にロシアに手を出せない。「何をしでかすかわからない」という恐れがロシアに対する最大の抑止力になっているのである。

ゼレンスキー大統領はこの事故が「重大事故一歩手前」だったことを強調している。ディーゼル発電機が作動していなければ重大事故が起きていただろうというのだ。つまり、ロシアは市民生活を揺さぶろうとしてヨーロッパ・ロシア・黒海に深刻な被害が及びかねないリスクを冒していることになる。いったん災害級の事故が起こればウクライナ領域だけに収まるとは考えられない。さらにここから積み出される小麦は新興国の治安維持に大きな役割を果たしている。つまり、ロシア側の揺さぶりはウクライナだけの問題ではない。ヨーロッパや新興国に動揺が広がりかねない事態だ。

一旦攻撃されると原子力発電所というのはどんなに安全に管理していようが「ほぼ核爆弾」というような存在になるということもわかる。長年「脅迫」の道具として利用できる上に一度爆発してしまえば長期間にわたって広い地域に深刻なダメージを長年にわたって及ぼしかねないのである。

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