河野太郎消費者担当大臣はまだ諦めていなかったようだ。霊感商法検討会の立ち上げが発表された。各種報道内容を見ると「ワイドショーで話題の統一教会問題」で名前をお茶の間に売り込もうという作戦のように思える。インターネットとSNSの影響力を熟知していることもわかる。
このため各社とも消費者庁の動きに注目している。
最大の特徴はこれまでこの問題に取り組んできた紀藤正樹弁護士など「引き」のある名前が並んでいるところだ。この中に菅野志桜里さんという聞きなれない名前が入っているが旧姓は山尾志桜里さんである。消費者問題という看板になっているがカルト問題対策協議会のようになっておりSNSで情報発信力のありそうな菅野志桜里さんも会議に加わっている。Twitterのフォロワーが多いので菅野さん系腕の情報の拡散も期待できそうだ。
菅野志桜里さんはすでに各種スポーツ紙で話題になっている。訴求力の高さが伺える。
メンバー以外にも注目すべき特徴がある。「会議はオンラインで行い原則公開とする」という点だ。誰でも視聴できるということは、誰でも引用しやすいということになる。つまり、テレビのワイドショーでも自由に使うことができるのである。豊富な情報を持っている紀藤弁護士らの発言を「ワイドショーは取材し放題」になる。
すでに葉梨法務大臣のもとで連絡協議会ができており消費者庁はこちらにも入っている。だがメンバーは官僚で固められておりあまり広がりはなさそうだ。会議としてはこちらが本筋なのだが、葉梨法務大臣は「炎上を鎮圧する」守りの会議設定になっている。
すでにコロナ対策で書いたように「実績をアピールしたい」リーダーは問題解決に前のめりになる傾向がある。このため情報を広く公開して訴求力の強化を図る。SNS時代なのでスピード感も重要だ。つまり「熱いうちに話題を届けないと冷めてしまう」のである。
一方の岸田政権には守りの姿勢が目立つ。情報をコントロールしようとするとどうしても拡散力に欠けることになってしまうのだ。
岸田総理はコロナに感染し会見はオンラインとなった。当初は岸田総理の映像だけが映し出されたため違和感を感じなかったが次第に「引きの画」が出回るようになるとTwitterなどでは違和感を指摘する声が出てきた。
テレビ朝日もこれを取り上げられている。総理公邸(すまい)と官邸(職場)の間には「セキュリティの都合で」光ファイバーによる専用線が整備されており「会議システムが充実している」と政権は胸を張る。記者会見もこの専用線を使って行われたため記者たちは記者たちは一箇所に集まらなければならなかった。この「最新鋭の」システムが時代錯誤な感覚を生んでいる。
記者会見の目的は広く一般に総理の考えを知らしめることである。だが紙を印刷してニュースを届けていた時代の「記者クラブ制度」の伝統が残っている。総理大臣が広く会見を公表してしまえば「次回もそれでいいじゃないか」ということになり記者クラブの既得権は奪われてしまうのだ。
ただこうした既得権が作り出す違和感はSNSに乗って瞬時に伝わってしまう。論理的におかしいと指摘できないまでも「あれ、何かこれは違うんじゃないか?」ということが瞬時にビジュアル的に拡散する。テレビ朝日は「シュールだ」と表現している。
最高権力者である総理大臣に間違いがあってはいけない。だから読売新聞で【独自】記事を出し観測気球を上げてから問題のないものだけを総理が「力強いリーダーシップで」発表するというスタイルが定着してきた。記者クラブのメンバーとはあらかじめ意思疎通ができているのでここで予想外の質問で総理大臣が恥をかくことはない。
だがこうした予定調和的な情報発信の方法は時代遅れになりつつある。新型コロナの全数把握見直しはスピード感を重視するあまり知事たちから丸投げだと批判され「炎上」した。結果的に全国一律で検討しますということになったが方針が出てくるのは9月以降である。
SNS時代の「通知即レス」になれた人たちはいかにも遅いと感じるだろう。
本来はこうした違和感を演出するのは野党の役割なのだろうが今の立憲民主党はこの役割を果たせておらず、皮肉なことに与党内の河野大臣がこの役割を果たしている。今後の注目点は河野大臣がどの程度のスピード感でワイドショーやSNSに「ネタ」を提供し続けられるという点にあるのかもしれない。新しいネタが連続的に投下し続けられない限りマスコミの関心は持続しない。
本来は政治と宗教のあり方についての議論が深まるべきなのだろうが、日本の政治はワイドショーが作り出す空気によって左右されているようだ。