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ケニアの大統領選挙で結果が判明するも三度目の波乱が危ぶまれる

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ケニヤで大統領選挙の開票が続いていた。争っていたのは副大統領と首相だ。8月16日までに結論を出さなければならなかったのだが8月15日に「ルト副大統領の勝利」という結果が出た。普通の国ではこれで選挙は終わりなのだが、ケニアはそうならない。BBCによると当選証書は発行され副大統領に手渡されたものの7名の選挙管理員のうち4名が「選挙は不透明だった」と異議を申し立てている。つまり今後混乱が予想される。過去には1200人以上の虐殺も起きている。

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大統領選挙は国の代表を決めるのだから投票率が高いのが当たり前である。だがケニアの大統領選挙の得票率はわずか65%(暫定)だった。にも関わらず「誰が大統領になるか」に対する国民の関心は高く人々はテレビとラジオの結果に釘付けになっているのだという。

日本でも都道府県知事選挙の投票率はあまり上がらないが「勝負に夢中になる」というようなこともない。政治ではなく選挙という勝負に夢中になるというのがケニアの選挙の特徴のようだ。政治=選挙とみなされ、問題解決手段としての民主主義があまりよく理解されていないことがわかる。

日本語ではあまり記事が出ていないのだがBBCは継続的にケニアの大統領選挙について伝えている。

BBCの取材によると人々の関心が高いのは「選挙結果によっては暴動が起きるかもしれない」からだそうである。過去の暴動では1200名がなくなっている。人々は政治は自分たちには関係がないと感じているが結果によっては大きな被害を受けかねない。だからどっちでもいいから早く決まってほしいと考えている人がいる。

だが実際には政治はケニア人の生活に大きな影響を与えている。BBCによると食料やガソリンなどの基本的品目のインフレは続いている。また対外債務が積み上がっている。人口動態は若者に大きく偏っているが、中学校(セカンダリースクール)への進学率は落ちているそうだ。だがケニアの経済規模は東アフリカでも屈指であり地域に与える影響は極めて大きい。

日本では即日開票が行われるのが当たり前になっている。だがケニアでは手集計と電子集計の二本立てになっている上に選挙プロセスでも不正が横行するようだ。選挙管理委員会は8月16日までに結論をだす必要があった。だが選挙結果が出ても選挙管理委員自身が「この選挙は不透明だ」として全員一致で結果を認めることはなかった。

BBCによると今後のシナリオには次の4つが考えられるそうだ。

  1. 選挙によって勝者が決まり、負けた陣営が負けを認める。チャレンジャーである副大統領は結果を受け入れるつもりだったようだが、首相は認めない方向のようだ。つまりこの可能性が小さくなっている。
  2. 選挙によって勝者が決まるが「誰か」が裁判所に異議を申し立てる。これは2017年に起き、選挙がやり直しになった。この時は対立候補が選挙をボイコットしたため、次の投票で大統領が選ばれた。ちなみにこの時に異議を申し立て選挙をボイコットしたのが現在の首相である。この選挙で敵対していた現在の大統領は今回は首相を支持している。
  3. 選挙によって勝者が決まるが「誰が」が裁判所に異議を申し立てる。しかし候補者は裁判所に従わない。この場合状況は収拾困難になり、国中で騒ぎが起きる。これが2007年に起きた。今回欧米のメディアが注目しているのは再び騒乱が起きる可能性である。
  4. どちらの陣営も50%の得票に達しないか、あるいは47ある郡のうち24の郡である程度の得票(25%)にならなかった場合には選挙がやり直しになる。選挙は9月8日までに行われなければならない。

ケニアでは官僚制度がうまく機能しておらず汚職もある。このためそもそも選挙プロセスに対する信頼が薄い。そればかりか政治には興味がないが「投票」という勝負に熱中する人が多い。さらに負けを絶対に認められないという人も多いようだ。

この時に選挙をボイコットしたオディンガ前首相は今度は前職の大統領からの支持をを受けて出馬した。77歳で5回目の挑戦だったそうだ。今回は48%という僅差で敗れており諦めきれないという気持ちはよくわかる。今回はケニヤッタ大統領の支持も受け万全の準備で選挙に望んでいた。

そこに出てきたのはが前副大統領だった。庶民派でに人気が高く、大統領と首相のコンビを「守旧派」と位置付けることで人気を維持したようだ。だが得票率は51%と圧勝したとは言えない。

ロイターのリポートはさらに深刻だ。現在物価高騰など庶民生活が圧迫されているため「どちらにも投票しない」という人が多かったようだ。どうせ「自分たちの声が政治に反映することはないだろう」という諦めもあるのだろう。ロイターは、ケニヤッタ前大統領は負債を積み上げてケニアの財政を困窮させたまま「政権を投げ出した」と厳しく評価している。この庶民の不満は明らかに「打倒既得権益」のルト副大統領には追い風になっているのだろう。おそらく選挙に行かなかった人がルト副大統領に投票していれば結果は違ったものになったのだろう。

民主主義の国では選挙そのものが自己目的化し、激しい対立が起きることがある。ケニアはその最も極端な例だが東アフリカでは裕福な方であり西側メディアからの情報が手に入る。さらに今回は集計結果を公表していたため西側のメディアを含めて誰もで独自集計が可能だった。BBCやロイターがきめ細かな報道をしているのはそのためだ。

「問題解決のプロセスとしての民主主義」が根付いていない国では、民主主義そのものが有害な対立を生み出すことがわかる。選挙=政治ということになり誰もがその結果に固執することになるからだ。

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