中国でトガリネズミ由来の新しいウイルス感染症が発見されランヤ(狼牙)ヘニパウイルスと名付けられる

中国の山東省や河南省でで新種のウイルス由来の感染症が発見された。トガリネズミに由来するとみられておりランヤ(狼牙)ヘニパウイルスと名付けられたそうだ。トガリネズミはネズミではなくモグラに近い種類なのだという。死者や重症者は出ていない上に国際的に大きく感染が広がることはないだろうと見られている。

このウイルスが注目されているのは新型コロナ感染症のような動物由来のウイルス感染症が世界中に広がりやすくなっていることが示唆されているからである。






まずウイルスの名前からおさらいしなければならない。パラミクソ・ウイルスというグループがある。パラミクソ・ウイルスには、マレーシアのバル・スンガイ・ニパ村で見つかったニパウイルスとヘンドラウイルスという二つのウイルスがある。これを合わせて「ヘニパ」というそうだ。ランヤウイルスはこのヘニパの新しい種類とされている。

今の所「ランヤ・ヘニパウイルス」が人間同士で感染するかはわかっていない。症例の数が少なすぎて確認が取れないそうだ。これが「国際的な大感染はないだろう」という根拠になっている。

モグラの仲間であるトガリネズミが宿主なのになぜ「狼の牙」という名前がついているのだろうと思ったのだがこれは山東省から安徽省にかけて存在する地域の名前のようだ。ただしランヤの名前で「琅琊」などいくつかの異なった漢字表記がある。

これまで問題になることが多かったのは近縁種の「ニパウイルス感染症」だ。

厚生労働省によるとニパウイルス感染症はインフルエンザと同じような症状を引き起こすが、一部が脳に到達し意識障害を伴う脳炎を発症することがある。感染経路はブタとの体液接触だと考えられているそうだ。また、2021年にはインドでニパウイルスの症例が確認されている。この時は5回目の発生であったことからインドの公衆衛生当局にも知見がたまっておりWHOによるリスク評価は低いものだった。局地的な感染なのでインドの旅行を控えるなどの措置は取らなくても良いものとされた。

今回のランヤ・ヘニパウイルス感染症が注目されたのは、おそらくは新型コロナウイルス感染症が中国由来と考えられているためだろう。つまり、中国になんらかの特有の事情があり「ウイルスの震源地」になっているのではないかという疑いがある。

だが、この問題は政治的に利用されたため国際的な評価は難しいものになっている。発生当初は「武漢ウイルス」などと言われ米中で激しい非難合戦が展開されていた。BBCは今回のランやウイルスの件で今後こうした動物由来の感染症が増えてくる理由として環境破壊と地球温暖化をあげているが、おそらくは交通網の発達とともに都市間移動が容易になったことなども影響を与えているのではないかと思う。こうした問題を防ぐためには国際的な共同研究がなされるべきなのだろうが、米中関係が冷え込んでいる今、そのような協調関係を期待することは難しそうである。

英語版のCNNはさらに詳しい情報を載せている。

  • この感染症が人から人に広がった例は発見されていないため、新しいパンデミックを引き起こす可能性は低い。
  • 動物から人間に気づかれないうちに新しいウイルスが移動できるのは確かだ。おそらくこのウイルスは氷山の一角と考えられる。
  • 病気が見つかったのは2018年から2021年で場所は山東省と河南省だった。
  • 4人を除く全員が農民であった。

いち早く見つかったという評価があるのだが、特定してある程度の情報がわかるまでには長い時間がかかっている。この間、COVID-19(新型コロナ感染症)はアルファ・ベータ・ガンマ・デルタ・オミクロンなど様々な変異種を作り出している。ウイルスの変化が早すぎてキャッチアップが極めて難しいことがわかる。

こうした人畜共通感染症の多くが中国で見つかるのはおそらく偶然ではないだろう。農家が畜産もやっているという場合その衛生環境はあまり良くないはずである。だがこうした遅れた農村地域は都市からは切り離されておりあるウイルスが人間への感染能を獲得したとしても大きく広がることはなかった。

こうした感染症はマレーシアやインドなどでも見つかるが世界に広がることはあまりない。ところが中国は沿岸の豊かさを内陸にも拡大する政策を推し進めた。その取り組みのひとつが新幹線網の建設だ。北京から河南省の鄭州に向かう路線は2012年に試運転が開始されておりわずか二時間半で結ばれている。また、青島も北京から三時間交通圏になった。

ウイルスはまず動物の中で広がる。動物には症状を引き起こさないかもしれない。そのうちのごく一部が稀に世話をしている農家に感染する。さらにその一部が稀に重篤な症状を引き起こしてしまう。この時点で見つかるものもあるのだが大抵の病気は「重篤な風邪」のようにしかならないため特定に時間がかかる。さらにそのごく一部が人間同志での感染能を獲得する。

人々の行き来は頻繁になっても中国の公衆衛生事情はそれに合わせて向上することはない。

「国際的には極めて迷惑な話だ」とも思うのだがおそらく最も被害を受けているのは当事者である中国だろう。感染が拡大すると共産党の威信をかけて経済を止めて抑え込みを行うことになる。この影響を受けて2022年4月から6月までのGDPの伸びはわずか0.4%だったという。急激な資本主義の拡大に公衆衛生のインフラが追いついていないということがよくわかる。表面上は内陸部も豊かになったのだろうが、公衆衛生インフラを整えたり農村の環境を整備したりすることまではできていないのではないかと思う。この問題を解決しない限り我々は今後もこの種のリスクを抱え続けることになるだろう。

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