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煮れば煮るほど味が出る。杉田水脈総務政務官周辺の三つの問題

杉田水脈総務政務官が任命されネットでは波紋が広がっているそうだ。記者たちに追及され釈明したのだが案の定出てきた記事はネガティブなものになった。「総務政務官」という肩書きのために説明責任を求められる杉田氏は今後多くの課題を抱えることになるだろう。問題は大きく分けて三つありそうだ。二つは既知のものだがもう一つはまだ出てきていない。

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第一の問題は統一教会問題

一つ目の問題は共同通信が指摘する統一教会関連の問題である。過去に「統一教会に支援してもらっても何の問題もない」と宣言したTweetが就任当時に残っていた。ただし、講演活動をやっていた時期には自民党の所属でもなく議員でもなかった。つまり「民間人がどこで何をやろうがそれは個人の自由」ということになる。ワイドショーでも統一教会に関連した人として名前が上がらないことがあるのはそのためだろう。

ただ釈明の仕方があまり上手ではなくつい攻撃に転じてしまうという姿勢が見える。このためマスコミから見れば「煮れば煮るほど味が出る」というニュースバリューのある人だ。良くも悪くも注目を集めやすい人なのである。

ご本人は所属政党がなかなか定まらなかったという事情があり、政治家・候補者として注目を集めるのに苦労していたという事情があるのだろうが、いずれにぜよ積み上がった過去を清算するのはなかなか大変そうである。

次の問題はLGBTと多様性の問題

次の問題は多様性の否定である。今回の弁明の中で「多様性を否定したことは一度もない」と釈明した。ご本人も発言は撤回したから問題はないという認識のようだ。だが、発言を撤回する前に徹底抗戦の構えを見せていたこともあり「本当に反省しているのだろうか」という疑念は今でも残っている。

この点に関してはおそらく岸田総理の任命責任が追及されることになるだろう。岸田総理は「新しい資本主義」や「成長点の模索」と言った経済的な問題については関心が高いのだが、生き方や多様性といった価値観についてはあまり感度が高くないようだ。ここがウィークポイントになっているため、今後野党からの攻撃が予想される。

多様性についての感度の低さが際立つのが「女性の扱いの雑さ」である。前回は野田内閣府特命担当大臣をナンバーツーの席次に据えて「内閣は女性を大切にしていますよ」とアピールしていた。総理大臣の臨時代理でも官房長官に次いで三人目という高い地位にあった。利権のある地位にはつかせないが象徴的に女性を登用してみれせば、有権者は納得するであろうという気持ちがあるのだろう。

今回は高市大臣に同じことをやった。臨時代理は松野官房長官の次になるため野田大臣のように閣議を主宰する可能性がある。しかし高市さんは大臣としては軽量級の経済安全保障担当である。前職は政調会長なのだから明らかに格落ちである。さらに岸田政権は支持率が落ちており「泥舟化」する可能性がある。こうした事情を敏感に感じ取った高市氏は「実は大臣になりたくなかった」とほのめかす発言をした。のちに「前任者のことを慮った」と釈明していることから事前に「言われたらこう答えよう」ということは考えていたのかもしれない。いずれにせよ、これが時事通信に取り上げられ「高市氏、「入閣つらい」投稿で釈明」という記事になっている。高市氏のメッセージは「正しく」伝えられたといって良いだろう。

女性をうまく「活用」し支持率を上げようとしているのだろうが、政権にとって見れば完全に逆効果だ。

こうした「雑さ」が多様性の推進を強調する立憲民主党から狙い撃ちにされるのは目に見えている。立憲民主党はおそらく参議院選挙の反省からさらに激しい内閣攻撃を展開することだろう。辻元清美議員と蓮舫議員の怒りは現在立憲民主党の執行部に向かっているようだが、提案型という従来の路線は否定され、今まで通りの「対決型・攻撃型」に回帰するものと思われる。

最後の問題は自治体の管理・評価問題

ここまでは杉田氏のこれまでの言動に関するものだった。ただ一介の議員時代の発言と政府の要職に就いている人としての発言は分けて考えられるべきなのかもしれない。しかしながら最後の問題は事によると政治的にはかなり大きなものになるだろう。「大人の世界」に足を踏みいいれるからである。

岸田総理は物価高対策として二つの決定をした。これが高評価されれば物価高対策に成功した総理大臣という良い評価が得られることになるだろう。「経済に強い総理大臣」としてはぜひ成功させてもらいたいものだと思う。このためには誰に実務を任せるかは極めて重要である。

この地方創生人事交付金の「増額分」がいくらになるのかはわからないがいずれにせよ「配る」必要が出てくる。信頼性のある人が配れば問題にならないのだろうが、困っている自治体や政治力のある自治体ほど「自分のところに多く分けて欲しい」と思うのが人情だろう。杉田氏は先日のTweetで「自治体の管理と評価が仕事」と宣言しているため「うちの自治体はなぜ隣より少ない額しかもらえないのだ」という調整を行う側にまわることになる。ある意味矢面に立つ立場になるのである。

まとめ

ネットでは劇場型の政治課題が多く語られるのだが、実際の日本の政治は「利権」によって回っている。つまり表の劇場型は「ある意味子供のお遊び」ともいえる。一方で実際の政治は「大人たち」が差配する。自治体には総務省出身の首長も多い。旧自治省から出向し地方の総務部長などをやり副市長・副知事に取り立てられて、選挙で市長・知事になるというのもおきまりのコースだ。このため普段はこうした利権をめぐる調整は水面下で行われあまり表沙汰にならない。自治体にとっては死活問題であり一歩間違えれば大混乱に陥りかねないという危うさも含んでいる。

今回は杉田新総務政務官の問題というまとめ方をしたがおそらく実際に問題を抱えるのは岸田政権だろう。今後の手綱捌きに注目が集まる。

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