バイデン大統領がOPECプラスにナメられる

「足元を見られる」と「ナメられる」でタイトルをどうしようかと思ったのだが、結局どぎつい方を選択した。最初にこのニュースを見たのは確かNHKだったと思うのだが「小規模増産」という表現だったと思う。一応「OPECプラスは要求に応えて見せた」という内容になっている。NHKは「最低限の配慮を示した」と表現している。朝日新聞もバイデン大統領に寄り添った書き方になっている。

ところが、バイデン政権にきつく当たる傾向が強いBloombergは「微々たる供給増」でバイデン氏の圧力に回答と書いている。つまりほとんど対応しなかったといっているところがそのあとのロイターの記事を見て驚いた。ロイターは「屈辱的」と書いている。経済紙の大統領に対する対応が軒並み冷たいものになっているのを感じた。






アメリカは産油国だがバイデン大統領は産業界との関係が悪い。このためあまり国内の協力を得ることができていなかった。これでは原油高高騰などのインフレ対策ができないためサウジアラビアなどを歴訪し協力を依頼してきた。

今回の報道はこれに対して「OPECは最低限応じただけだった」というのが事実関係のすべてである。だがメディアによってかなり書き方が違う。

例えば朝日新聞は「物価高(インフレ)を抑制したい米バイデン政権に配慮した」と書いている。意外と好意的な優しい書き方である。

日経新聞は事情を細かく書いている。現在はインフレが発生しているが世界経済は減速が予想されている。つまり、バイデン政権の要請に応じて増産しても原油価格が下落しかねないという事情があるようだ。

投資をしている人はすでにご存知だと思うのだが先物の様子を確認しておきたい。

統計を見て過剰に反応しそのあと少し戻すという最近ではおなじみになった展開をたどっている。ただ、この予測を見る限り「将来にわたって原油の需要はおそらく減少する」と予想するとOPECプラスの決定はむしろ妥当なものと言える。アメリカのいうことを聞いて原油価格が暴落してもアメリカは責任を取ってくれない。単に要求だけを一方的に押し付けてくるだけだ。

もう一つの事情はOPECとロシアの距離だ。OPEC事務局長に就任したハイサム・ガイス氏はクウェート紙に「ロシアは戦略的パートナーだ」と述べたそうだ。つまり原油生産国にとってはアメリカよりもロシアの方が重要なのだ。

アメリカの政治家は自分たちの要求があるときには自分たちの価値観で要求を突きつける。これは今回のペロシ議長の台湾訪問を見ても明らかである。「自分たちの主義主張が何よりも大切」という国家だ。新興国が台頭しかつて成り立っていたこの強気な外交が成り立ちにくくなっている。高齢なバイデン大統領やペロシ下院議長はこうした変化に付いてゆくことができないかもしれないのだが時代はもう変化しているのである。

Bloombergは「ガソリン価格の低下が続けば、ホワイトハウスはその功績を主張するだろう」という元エネルギー担当高官の話を伝えている。つまり、宣伝材料さえあれば結果次第でいいように解釈するだろうというのだ。NHKもジャンピエール報道官は発表は歓迎すると言っただけで詳しい評価はしなかったと書いている。つまりアメリカでは「選挙を前にして都合が悪い情報は認識したくない」という態度も問題になりつつある。いずれにせよ激しいタカ派シフトで経済が痛んでもバイデン政権がそれを直視適切な対応を取るのかがわからないということになる。

アメリカではそれがかなり冷ややかに見られている。ロイターの屈辱的というタイトルは独自見解ではなくユーラシアグループの「意味がないほどの小型増産で政治的ジェスチャーとしてはほぼ屈辱的だ」という見方を採用したものだ。つまり、アメリカの中でも「大統領の働きかけはOPECプラスにほぼ受け入れてもらえなかった」ことの意味を冷静に見ている人たちがいる。さらに、FRBの金融政策に振り回され続けたロイターの読者もおそらくはバイデン政権にあまり良い印象を持っていないはずだ。

バイデン政権がOPECブラスにナメられるというのはかなり過激な表現だと思われるかもしれないのだが、実際のメディア評派もっと過激である。経済政策で決定打を打ち出せない大統領に対する落胆が広がっている。大統領の権威が弱まれば周りの抑えが効かなくなり地域情勢に悪影響を与える。

しかしながら、見方をかえると「強いはずのアメリカ経済さえこの有様」ということにになる。スリランカのように国家デフォルトした国は例外だしても、新興国の中にはさらに政局が混乱している国がいくつもある。

リーマンショックからアラブの春にかけての混乱ではまず先進国が揺れそのあとに新興国に政情不安が押し寄せるというように影響は段階的だった。今回は新型コロナやウクライナの戦争といった問題が複合的に重なり合い先進国と新興国が同時期に動揺するという事態になっている。

台湾をめぐる東シナ海・南シナ海の事情を見ても「未知ゾーンに入った」ということがわかる。こうした状態は世界各地で同時多発的に起きておりこの国だけは大丈夫という国がないというのが今回の特徴なのかもしれない。

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