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イスラエルの首相が核兵器保有をほのめかす

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イスラエルのヤイル・ラピド首相がイスラエルの核兵器保有についてほのめかす発言をした。イスラエルが核兵器を持っていることは確実だと言われているがこれまでそれを認めてこなかった。これを首相は外国メディアが「他の能力と呼ぶもの」と表現している。現在は非常に微妙な状態にあり今後イスラエルが発言を軌道修正するのかあるいは既成事実化するのかが注目される。

ただ「イスラエルって核兵器の保有を認めてこなかったの?」と思う人もいるのではないだろうか。核兵器保有国を数えるときには必ず出てくる名前だからである。これまで持っていることを認めてこなかった。つまり保有の事実を優先し、核兵器の保有を抑止力として積極的に使ってこなかった国なのだ。

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今が微妙な状態だという理由はいくつかある。一つはイランの核開発である。バイデン大統領の外交政策が行き詰まりを見せておりイランの核兵器開発を阻止する枠組みの再開が危ぶまれていた。ようやく再開に向けた議論がウィーンで始まる。イスラエルとイランは敵対関係にあり最近もバイデン大統領が「イランが核兵器を開発すれば軍事行動も辞さないと」強い姿勢を示したばかりである。イスラエルが核兵器保有を既成事実化すれば敵対するイランは「アメリカはイスラエルの核兵器保有を黙認しているではないか」と応酬しかねない。

次の理由はイスラエルの政治状況である。現在イスラエルでは総選挙が予定されている。このためこの政権は暫定政権であり中長期的な責任が取れない。逆に各政党が自分たちのプレゼンスを示すために「より強い姿勢」を打ち出しかねない。総選挙は10月25日に行われる。4年間で5回目の選挙になる予定である。

ペロシ下院議長のスタンドプレイからバイデン大統領にこうした「目立ちたがり屋」を阻止できないだろうことは明らかだ。さらに厳密に言えばアメリカとイスラエルは別の国でありバイデン大統領は公式にはイスラエルの発言を制止することはできない。アメリカが板挟みになることは容易に想像ができる。

現在、NPT再検討会議が開かれている。岸田総理の演説が注目されたが実際には1ヶ月をかけて共同声明文書の採択を目指しているそうだ。イスラエルの核兵器保有が既成事実化すればおそらくこの交渉にも大きな影響が出るだろう。

日経新聞が2015年の再検討会議について「最終文書が採択できなかった」と書いている。アメリカの国際的な地位が落ちているため核の力を使って影響力を行使しようとする人が増えていると説明している。

今回のNPT再検討会議について朝日新聞が記事をまとめている。2015年には中東の非核地帯構想をめぐり核兵器を持つ国と持たない国の対立が高まっていたと書かれている。今回イスラエルの暴走を止められずイスラエルが核兵器保有国としての地位を既成事実化すれば、おそらく対抗のために核兵器を持ちたいと考える国が増えるだろう。自分たちで開発するという国もあれば「核の傘」を求める国も出てくるかもしれない。

現在ロシアの安全が守られているのはロシアが核兵器の保有を続けているからだ。核兵器がある限りNATOはロシアを攻撃できない。つまり、ロシアとウクライナの戦争で核兵器保有が安全保障上の大きな武器になることが確認された。こうした「事実」を目の当たりにした国々が核兵器保有に踏み切れば周辺国も連鎖的に対応を迫られる。唯一の戦争被爆国である日本でさえ核シェアリングの議論がある。

こうなるとそもそもどうしてイスラエルは核兵器を持っているのかという気持ちになる。アメリカの援助だと思いがちだが、実はアメリカはイスラエルを核の傘の中に入れなかった。NHKによるとアルジェリアの独立問題を抱えていたフランスが「イスラエルを支援することが自国の利益になる」と考えて支援したのがフランスの核兵器開発の始まりだそうだ。今回引用したNHKのこのドキュメンタリの原題は2001年に製作されたA Bomb in the Basementというドキュメンタリだ。

アメリカ大統領権力が内政上の問題で低下すると大統領が抑えてきた様々な人たちが自分たちの利益に沿った行動を起こすことになる。ロイターはペロシ議長の訪問が中国の軍事行動を先鋭化させるだろうと書いている。直接台湾と対立できない上に経済的関係も切れない。中国は中国で内部に「習近平国家主席の弱腰にがっかりした」という人たちを抱えているため振り上げた拳を下ろすことも難しい。ロイターのこの記事は偶発的な軍事衝突の危険性を指摘している。

今回のイスラエルの首相の発言が今後どうなるかはわからない。戦略的なものであれば今後既成事実化を進めるのだろうがそうでない可能性もある。今後の成り行きが注目される。

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