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親プーチン派のルペン候補がNATOからの離脱を示唆

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フランスの大統領選挙がいよいよ2回目の投票を迎える。マクロン大統領の逃げ切りが予想されるなかルペン候補が主張を先鋭化させてきた。個別の記事で読むとよくわからないのだがロシアとの関係を修復しNATOからも距離を置くと言っている。さらにそれだけではなくEUとの関係も見直すのだという。ルペン大統領が誕生すれば現在ウクライナ侵攻に対して一枚岩で対応している西側の結束が大きく揺らぐことが予想される。

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記事はそれぞれかなり断片的だ。現在までルペン候補は経済対策にフォーカスすることで親プーチン派という自身の印象を和らげる戦略をとっていたとされる。ロイターの「アングル:仏極右ルペン氏、インフレ批判で「親プーチン」脱却」はその筋で書かれている。だが時事通信お「NATO軍事機構を離脱」 ルペン氏が提唱―仏大統領選という記事ではいよいよ「親プーチン・親ロシア」という立ち位置を明確に打ち出して来たように思われる。

狙いはいくつか考えられる。

第一の狙いはマクロン大統領との差別化である。マクロン大統領はハイステーク外交を繰り広げ存在感をアピールしてきた。一方でマクロン大統領は内政に十分な関心を寄せていないのではないかという批判もある。ルペン候補はこの潜在的な批判を逆手に取り「内政に集中するために面倒な諍いからは距離を置くべきだ」と主張したいのだろう。それだけこうした不満が多く蓄積していることが背景にあるものと思われる。

第二の狙いは自身に対する批判をかわすことだろう。ルペン候補はかねてよりプーチン大統領と近しいことで知られておりマクロン大統領は「ルペンは親ロシア派だ」という批判を先鋭化させていた。これをかわし「プーチン大統領と関係を修復することは実はフランスにとっていいことなのだ」と支持者を納得させることができれば批判を防衛することができるわけである。

現在西側諸国は結束してロシアのウクライナ侵攻に反対している。しかしルペン候補が大統領になると西側の連帯は大きく損なわれるのかもしれない。可能性としてはそれほど高くないとはいえ「全くない」とは言えないところまで来ている。おそらく背景には「外国の事情に首をつっこまず国民の暮らしをよくしてもらいたい」という不満があるのではないか。

ただ、それぞれの記事は断片的だ。フランス24がLe Pen wants France out of NATO integrated command, backs NATO-Russia linksという記事を出している。NATOの統合司令系統から外れロシアとのつながりを回復すると言っておりこの二つが結びついていることがわかる。ただ「司令系統から離脱する」のだから「NATOを離脱して中立化する」と言っているわけではない。つまりNATOの提供する恩恵は享受したいが命令はされたくないということになる。

さらに記事を読んでゆくとEUとの関係の見直しも示唆しているようだ。一瞬「イギリスに倣ってフランスもEUから出てゆくのか」という印象を受けたのだが「フランスはEUから出てゆかず中から改革する」と言っている。ブリュッセルの官僚機構の役割を弱めた上で負担を減らしたいということなのだろうが具体的に何をするのかは示されていない。フランスはユーロの恩恵を受けているのだからユーロも手放したくはないのだろう。現在ポーランドがEUの法律よりもポーランド憲法の方が上位にあると主張しており緊張関係にある。こうした主張をする国にフランスが加わればいよいよEUの結束も危ういものとなるだろう。利益は享受したいが色々上からは言われたくないという国が増えればEUは成り立たなくなる。

これまで新興諸国はアメリカが主導するグローバリズムに反発を覚えているというような記事は読んでいたのだが実は先進国の中にもグローバリズムや国際協調主義に疲れた人が大勢いることがわかる。

だがNATOやEUに関するルペン氏の主張を読んでも「本当にこんな都合のいいことができるのか」と思ってしまう。既存の政治に慣れた人は危うさを感じるのだろうが、現在の政治に救われないと感じている人たちはこれを希望だとみなすのかもしれない。いずれにせよ結果は24日に判明する。

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