鈴木財務大臣が悪い円安を認める発言をした。三つの理由から見ていて若干の危うさを感じた。目下さらなる円安が進行中で来週は上値を探る動きになるそうだ。平たい言葉で言えば金利差は織り込まれたので、あとは「どこまでいけるか市場関係者が探る」展開になるのだろう。鈴木外務大臣と日銀総裁の現在のメッセージを市場関係者がどう判断したのかは来週にかけて明らかになるということなのだろう。
鈴木財務大臣が悪い円安を認める発言をしたが三つの理由から危うさを感じた。
現在、日本はアメリカから為替操作の要監視国とみなされているため不用意な発言がアメリカを刺激しかねない。これについてはG20会合の席でアメリカの財務当局者と接触する予定のようだがロシアが出席するならアメリカは出ないと言っておりイエレン財務長官と会談できるかは未知数である。
次に財務大臣の発言は「災害が襲って来たか」のような口調に聞こえた。これは当座何もしないことを予感させるため投機的な動きを容認することになってしまう。
最後に悪い性質の円安と円安の悪い影響が区別できていないような印象がある。構造が理解できていないのであれば対策の打ちようがない。
この三番目の点はエコノミストたちも心配しているようだ。NRIが財務大臣をカバーするような解説をしているのを見つけた。構造的な問題を悪い円安と定義し、これと円安によって引き起こされる物価上昇を分けている。これくらいの内容だったならおそらく市場関係者をひとまず安心させることができただろう。かなり基本的な認識をオーソドックスに整理したものなので「レク」の段階では鈴木財務大臣の耳にも入っていたのではないかと思う。
鈴木財務大臣の発言は、「悪い円安」と「悪い物価上昇」とが混在している印象だが、発言の主旨をよりかみ砕いて解釈すれば、「原材料価格は大幅に上昇しているが、多くの企業はそれを価格転嫁できておらず、企業収益は悪化している。また、賃金上昇の伸びは低いため、物価の上昇によって実質賃金は下落し、消費に悪影響を及ぼしている。つまり足もとでの物価上昇は、需給ひっ迫、賃金上昇を伴う持続的な物価上昇ではなく、先行きの経済を悪化させる「悪い物価上昇」だ。その「悪い物価上昇」を促す為替市場での円安進行は、「悪い円安」と言える」ということになるのではないか。
悪い円安を認めた財務大臣
NRIの解説は二ページ目で「現在の黒田総裁のもとでは本格的な金融政策の転換はないだろう」と書いている。参議院選挙の前に財務大臣を交代させたり政策を思い切って転換するということも考えにくいのでしばらくはこのままの体制で進みそうだ。そろそろ日銀の総裁を変えて欲しいという気持ちも滲んでいるように思えるが会社の名前を出して解説するという趣旨からはあまり踏み込んだことはかけないのだろうなとも感じた。
ロイターは岸田総理の注目発言をまとめてピックアップしていた。記事は政策と金融の二本立てとなっておりどちらも従来の路線を継続するというものになっている。結果的に支持率が高いのだから今のまま安全運転を続けたいということなのだろう。