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「やっぱ自衛隊ではムリ」と煽る週刊誌

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やはりというべきか。ウクライナ情勢を受けて週刊誌から「こういう記事がウケるだろう」というような記事が出てきた。日本がウクライナのような状態に陥っても自衛隊では敵を撃退できないし住民避難もできないというのだ。

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第一の記事は週刊新潮によるものだ。もしロシア兵がウクライナを攻めるように日本に攻めてきたら撃退できないという。北方領土でのミサイル演習から具体的な地名が入った防衛省のシナリオに接続していて煽る気満々である。実際にロシアが攻めてくるかどうかは別にして「こうなると殲滅覚悟で持ちこたえられるところまで持ちこたえるしかない」という結論になっている。

新潮は記事だけ売れればよく政治的議論をまとめる立場にはない。だが「日米安保があるから大丈夫」だし「想定外のご質問にはお答えしません」という血の通わない回答しかしない日本政府にはない生々しさはある。いずれにせよ単独では大敗ということがあらかじめわかっているそうだ。憲法や法律の縛りがきつく規模としてはウクライナより大きいにも関わらず国土防衛力が弱いのだという。予算制約なのかその他の制約なのか、とにかく「弾薬が足りない」という。

次の文春の記事もかなり煽っている。こちらはロシアに加えて中国や北朝鮮も念頭に置かれているようだ。兵員が足りないのでいざ防衛ということになれば「緊急募集」という形で追加徴集があるだろうという。現在は憲法の縛りで徴兵されることはないわけだが憲法改正議論との合わせ技で「緊急徴兵制度」ということにもなりかねない。高齢者が多い今の状態だと、高齢者は自分が徴兵されることないのだから「徴兵も結構ではないか」という話になってしまうのかもしれない。

いずれにせよ「今の状態では住民避難誘導もできませんよ」ということだからこれを読んで不安になる人はいるだろうと思う。

この二つの記事はどちらも状況を煽るだけ煽って議論に落とし所を作らないという点で共通しているのだが、「じゃあそんなことは起こらない」とは言えないというところがある。不安が漠然としているので対策も立てようがない。

特に危険点が二つある。第一は日本人が漠然とは持っているが決して口にはしない「本当にアメリカは日本を守ってくれるのか?」という日米安保懐疑論である。単独防衛という国際的には認められそうにない議論に直結する可能性がある。アメリカの参戦=核兵器保有国との直接対峙=第三次世界大戦である。米国議会の議論がスムーズにゆくとはとても思えないが、とにかくに自衛隊は玉砕覚悟で単独防衛するしかない。

二つの記事に共通するもう一つの点は「予算が足りない」という渇望である。この文春の記事についてQuoraで聞いたところ「さもありなんと思う」という回答がついた。トイレットペーパーの長さまで制限されているのだから兵隊が足りないというのも頷けるというのだ。

日本の防衛は専守防衛ということになっている。つまり国土防衛が主要任務のはずである。だがなぜか「国土防衛ということになるとおそらくお金が足りない」などということになっているようだ。

日本の軍事力は資料によって異なるが第6位とか第9位といったところだそうだ。つまりウクライナよりも予算規模ははるかに大きい。にも関わらず「お金が足りない」ということで「いざ日本が攻められたら殲滅覚悟だし市民誘導もできませんよ」というような話がでてくる。だからもっと予算をよこせというわけだ。普段から一体何にお金を使っているのかという気持ちになる。

いずれにせよ、こうした議論が落ち着いた憲法改正議論を妨げることは明らかだろう。週刊誌で不安だけが拡散すると「憲法を改正してもっと強い権限を総理大臣に与え核兵器のようなインパクトが強い武器を持つべきだ」という短絡的な議論に結びつきかねない危険があると感じる。

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