やぶ蛇になってしまった立憲民主党の緊急事態条項抑止論

ロシアのウクライナ侵攻で次々と予想外のことが起きている。こうなるとこれまでの予定調和的な議論が成り立ちにくくなる。もちろん憲法改正の議論もそのうちの一つである。立憲民主党・奥野総一郎氏の議論が破綻してしまった。これまでの前提がガラッと崩れてしまったからである。






もちろん議論が破綻したのは奥野さんが原因ではない。それくらい想像を超えるようなことが起きてしまったのである。記事には日付が入っていないのだが(あとで検証が必要な場合もあるので日付入れておいたほうがいいと思う)URLから判断すると2019年のブログ記事だ。

最後に、緊急事態条項に触れておきたい。ドイツもウクライナも憲法にいわゆる国会緊急権が規定されている。ドイツでは、東西冷戦下の1968年、大連立政権により、設けられたが、法律によらず命令で国民の権利を制限できるような規定はなく、また自由権を制限するような規定もない。メラーズ教授も、「民主主義をおかすような形にはなっていない」と述べておられた。ウクライナ憲法は、非常事態が布告されると広範な人権を制限できる。憲法上は通信の秘密や思想及び表現の自由も制限できる作りとなっている。ウクライナでは、現在東部で戦闘が行われているにもかかわらず、現在非常事態は宣言されていない。議員任期が自動的に延長されるため選挙ができなくなるのが主な理由と聞いたが、国家にあまりに広範な権限を与えるため実際の布告には慎重であると理解した。これらの例をみても、我が国の現行法制で十分であり、いわゆる緊急事態条項についてただちに日本国憲法の改正が必要だとは言えないのではないか。

憲法審査会での発言

議論としては緊急事態条項はあるのだがインパクトが大きすぎて発動できない状態だ。よほどのことがない限りこんな条項は必要がない。だから、日本では議論しなくていいという論になっている。

だが、2022年2月24日にその「よほどのこと」が起きた。ロシアからの宣戦布告なき侵攻を受けたゼレンスキー大統領はためらうことなく緊急事態宣言を発令した。そのあとで全土に戒厳令を布告し兵役に適した年齢の出国を禁止した。集会の制限なども行えるようになった。

ただしこの非常事態宣言は30日という限定付きである。その期限が明ける前に「親露派の政党活動を禁止する」という新しい命令を出した。根拠になっているのは戒厳令であり戒厳令の根拠は非常事態宣言である。さらにその非常事態宣言は30日で効果がなくなる。おそらくその前に先手を打って議会の反対勢力を封じたのではないかと思われる。

非常事態宣言中は選挙はない。つまりゼレンスキー大統領にもう付き合いたくないという人が出て来たとしてもそれを止める手立てはないということになる。

日本ではロシアが悪でウクライナが善ということになっている。橋下徹さんのような一部の指揮者を除いてこれに疑問を投げかける人はあまり多くない。

だが一応体裁としては「ゼレンスキー独裁体制」が整ったことになる。奥野さんのブログの記述を参考にすると議会選挙は停止されているのだから野党が封じられてしまうと議会は大統領の行動を追認する人だけになってしまう。祖国を守るためのいい独裁なのかもしれないが形式的にはまぎれもない「独裁」である。

つまり、民主主義を守る戦いを擁護するという建前の日本では今「独裁体制が支持される」という状況になっている。ゼレンスキー大統領は国会でビデオ演説をすることになっている。おそらく拍手喝采で迎えられることだろう。

非常に難しい状況だ。ウクライナの行動や心情はわかる。いずれにせよこうなるとイデオロギーでは善悪が判断できない。

現在の日本ではこれほど強い独裁が行える政治権力者はいない。天皇は政治的発言ができず、緊急事態条項はない。さらに憲法は出国の自由を保障しているため国民の足止めもできない。逃げ出す国民を非国民だと叫んでもそれを止める手段はないのである。

別のエントリーでも触れるのだが週刊誌が「日本がウクライナのように侵略されたら防衛はできない」などという記事を立て続けに出して状況を煽っている。おそらく政治的プロパガンダではなく危機感を煽って週刊誌を売りたいなどという程度の話ではあると思うのだが、不安に思った国民が「日本も思い切った措置が必要なのではないか」などと考えても不思議ではない。

それとは逆に読売新聞が戸惑う国民の声を伝えている。全く兵器など触ったことがない男性の元に召集令状が来たというのである。非常事態で2週間の戦闘訓練をしていざ実践ということになるそうだ。不安に思う国民の中には東部から逃れて来た男性を通報する人もいるそうだ。つまり今戦わないのは「非国民だ」という気持ちが彼らの中に芽生えているのである。

こうした「市民による非国民の摘発」は第二次世界大戦中の日本でも見られた光景でテレビや映画などではおなじみの光景である。危機が高まると集団圧力が強まりこうした光景が日常化してゆく。

確かに2019年の段階では奥野さんがいうように「まさか緊急事態条項が必要なことになるとはないだろう」と考えている人が多数だったのだろうが、それも変わってしまったということになる。

岸田総理は憲法改正に前のめりのようだ。新聞や週刊誌が危機を煽りテレビCMがガンガン流される中でこれまでまともな憲法議論をしたことがない国民が冷静な判断を下せるとはとても思わないが、それでも我々は選択を突きつけられるのかもしれない。状況がわからないままで「とりあえずどっちかに票を入れる」ということになりかねないのである。

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