ざっくり解説 時々深掘り

安倍元総理はアメリカからレンタルした核兵器をどこに置くつもりなんだろう?

朝から釣りを楽しんでみた。安倍総理が核について発言したのをネタにして質問を一つ立ててみたのだ。さっそく「ミスリードだ」というコメントがつきあいかわらずのクオリティだなと感じた。

日本の政治議論は原典引用主義を体得していない。だから自分たちは根拠のない話を撒き散らしつつ気に入らない時だけ他人に「エビデンス」を求める人ようなたちが大勢いるのである。

特に安倍元総理の支持者にはそういう人が多い。

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このニュースは知る限り共同とNHKが伝えている。両者を比較することで色々なことがわかるのでまず読んでから論評したほうがいい。確かにNHKの記事を読むと「核共有」としか書かれていない。ミスリードだ、左翼が騒いでいると言いたくなる気持ちはわかる。実際にフジテレビの番組でも具体的な話が出たかどうかはわからない。おそらくそこまでの話はなかったのだろうと思う。なんとなく勢いでいつもの持論を展開したのだろう。

一方、共同通信の書き方はこうなっている。

自民党の安倍晋三元首相は27日のフジテレビ番組で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する「核共有」政策について日本でも議論すべきだとの考えを示した。

安倍氏、米との「核共有」議論を

共有には二つのオプションがある。一つは日本側が核のボタンを持つオプションでもう一つは日本側が基地を提供してアメリカの核兵器を置いてあげるというオプションである。アメリカが日本の総理大臣にボタンを渡すはずはないので、当然残るオプションは「日本が領土内に基地を提供してアメリカの核をおいてあげる」というオプションになる。

実際にこの辺りを意識したことを言っている人がいる。それが維新の松井代表だ。原子力潜水艦を借りたらどうかといっている。右翼の支持を得られる上に確かに潜水艦なら領土内には持ち込まないことになる。おそらくある程度計算した上で議論に参入しているんだなということがわかる。

松井さんの友達のお金持ちが松井さんに車を貸してくれるということはあるだろうが、おそらくアメリカ合衆国の軍隊は「日本が勝手に原子力潜水艦を乗り回してもいいよ」などとは言わないだろう。松井さんは交渉当事者ではないから好きに議論ができる。

一方で当事者になりかねない岸田総理は迷惑顔だ。非核三原則を変更するつもりはないと国会答弁した。煮え切らない岸田総理としては珍しく言い切った形だがこれは当然だろう。変な問題を押し付けられてはかなわないと思っているのではないだろうか。

おそらくこの「米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する」というのは共同通信が加えた説明なのだろうと思う。より具体的な問題提起をしようとしているのだろう。

実際に安倍発言を突き詰めてゆくと「じゃあどこに置くんですか?」という話になる。おそらくそこまでは考えていなかったという話になるはずだ。北海道、東京、新潟、福島、沖縄とか……具体的な地名を言った瞬間に大騒ぎになるだろう。

だがおそらくアメリカ合衆国は日本に核を持ち込んでも日本政府にはあり場所を教えないのではないだろうか。容易にターゲットになるからだ。教えてもらっていないということを言いたくない政府は議会に対して「戦略上の秘密であり教えられない」と答弁するに違いない。だから首都圏に実は核兵器が持ち込まれたとしても日本政府には防ぎようがない。すでに持ち込まれている可能性も否定できない。日本政府は米軍を通関できないからだ。

例えば原子力発電所の場合は電力を供給して仕事も提供するということになっている。さらに100%安全なので事故は起こらないという前提になっている。核のごみ処理については北海道の寒村が受け入れを検討しているそうだ。神恵内村では長らく行われていなかった村長選挙が行われたが現職が再選された。泊村に原発があるがその恩恵が及ばなかった地域だ。もともとニシン漁が盛んだった地域だがニシンが獲れなくなると他に産業もなく生き残りにはもうこれしかないのだ。こういう貧しい地域が戦争のターゲットの役割を引き受けることになる。

松井大阪市長はおそらくその辺りまではなんとなく考えたのかもしれないが、安倍元総理はそこまで考えていないのだとは思う。またフジテレビの番組も具体的なことは認識していないのだろう。パワーバランスを考えたリアリズムの中で抑止力を高めなければならないと考えており、前提にとらわれない俺たちってかっこいいいぜと思っているのだと思うが、実は「誰が配備を説得するんだろうか?」という本当のリアルについては誰も考えが及んでいないことがわかる。

こうした机上の空論は韓国でも横行している。先日お伝えした通りTHAADを巡って言った言わないという議論がある。もう一度該当箇所を書いておくと三重否定伝聞になっている。徴兵制が残っていて休戦状態の国だということを忘れさせるような平和ボケぶりだ。

ブルックス元司令官と直接電話で話して記事を書いた記者の説明を聞いたところによると、「ブルックス元司令官がTHAADの追加配備は必要ないという話をした事実はない」というユン・ソクヨル候補の主張は説得力がないとみられる。

元在韓米軍司令官、「韓国にTHAAD追加配備は必要ない」と言及した

国防議論は大切な問題だが韓国の大統領選挙の一番の関心事は不動産価格なのだそうだ。だからブルックス元司令官が追加配備は必要ないという話をした事実はないという話には説得力がないってよ、という三重否定伝聞みたいなわかりにくい話になっていてももはや誰も気にしない。

一方ヨーロッパでは戦後の防衛方針を転換したという話が相次いで伝わってきている。フィンランドとスウェーデンにはNATO入りという話が出ている。ドイツは国防政策を大きく転換し一部の議員が反対しているそうだ。さらにデンマークも自国民が義勇兵としてウクライナの戦争に参加することを咎めないと発表した。

背景にあるのはプーチン大統領狂人説である。この人はどこかおかしいと多くの人が気が付き始めているのだが表面上はいたって冷静に見える。だが一人頭のおかしな人が出ただけでもヨーロッパの平和は一転覆されかねないという危機感がある。

彼はもう何度も繰り返している。『ロシアがないなら、地球に何の用がある?』と。誰も気にも留めなかった。しかし、これは脅しだ。自分が望むような扱いをロシアが受けないなら、何もかも破壊してやるという脅しだ」

プーチン氏は核のボタンを押すのか BBCモスクワ特派員が考える

米上院情報特別委員会のルビオ上院議員はツイッターで「本当はもっとお話ししたいが、今言えるのは誰もが分かる通り、プーチン氏は何かがおかしいということだ」と指摘した。

プーチン氏の精神状態を疑問視

日本も韓国もまだこの空気を共有していない。おそらく好きなニュースだけを読み、気に入らない相手にのみエビデンスを要求し自分は何も調べないというネットの議論習慣が横行しているからである。その行き着いた先が政治で不可を取ったはずなのになぜか卒業できていたという不思議な経歴を持つ安倍元総理だ。あんな人たちに議論をめちゃくちゃにされてはならない。我々は自分たちの言論空間を自分たちで防衛しなければならないのだと強い危機感を持つ。

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