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岸田総理はウクライナ情勢が国民生活に与えるダメージを今すぐ説明すべきだ

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蓮舫議員が「NSCをやらなくて大丈夫なんですか?」と聞いたのがつい昨日のことのような気がする。あれよあれよという間にロシアを国際金融から切り離すという話になっている。

SWIFT制裁が現実のものになりそうだ。日曜日のニュースを見ているのだが「日本人はどれくらい深刻な状況を覚悟しているのか?」と思った。新型コロナ前夜のダイヤモンドプリンセス号時代によく似ているのだ。

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SWIFT制裁が始まる

おそらく対岸の火事だと思っている人が多いと思うのだがついに日本人にとっても痛みを伴う経済制裁の時代がやってくる。早ければ来週中ということになるだろう。ロシアとの貿易が一切止まる。具体的にはドル建て決済が止まるのだがいま日露貿易を円建てでやっている人はあまりいないのではないかと思う。さらに取引全面禁止ということになれば人民元などの迂回ルートを使ったビジネスも全て制裁違反になることだろう。

モノを買っても代金が払えないからロシア側は何も売らなくなる。さらにモノを売っても代金は回収できなくなる。銀行が止まっているのだから当然である。それが「今週中にも」起こる可能性があるのだ。

ところが実際に何が起こるのかはわからない。NHKもこのニュースを伝えているのだがプーチン大統領が戦争をしているし欧米が制裁すると言っているから仕方がないが何が起こるかわからないというような解説しか出していない。

もちろんドル建ての決済ができなくなるだけなので中国の人民元などを使った裏ルートを持っている人は影響を受けないかもしれない。新興富豪に支えられているプーチン大統領はそれなりの対策をしているので影響を受けないかもしれない。つまり制裁をしてもすぐにプーチン大統領が降参するとは思えない。するとじわじわと日露貿易に携わる人たちに影響が出る一方で戦争そのものは止まらないかもしれないということになる。

今人々はこのニュースにどういう評価を与えていいかわからない。そこで岸田総理の顔色を見てインパクトを決めようとする。この時リーダーはどう振る舞うべきなのだろうかというのが問題になる。

最初にきついことを言っておくと後が楽なのだが

つまり、ここから先は政治の見せ方の問題だ。岸田政権はおそらくここで判断ミスをした。

最初にきついことを予想させておけば、結果的になんでもなければ「岸田総理がちゃんとやってくれたからだ」ということになる。一方で最初に「大したことはない」と言ってしまうと結果的に起きた悪いことが全て岸田総理のせいになる。

岸田さんは大したことにはならないと言ってしまった。おそらく間違ったと思う。

背景には政局になりかけているガソリン価格問題がある。野党の攻撃に対して火消しするため岸田政権はこの問題を矮小化して扱ってきた。小麦に対しても「ガソリンと同じような政治問題にしてほしい」と言っている人がいるがこれも小さく扱ってきた。今回これに金融制裁(SWIFT制裁)が入るとさらに経済が悪化することになる。

するとなぜかこれが岸田ショックと呼ばれるようになるのだ。人々は当初軽い見込みを立ててそれが裏切られたと感じる。すると事後的に誰のせいだったのかと考え始めるのだ。プーチン大統領が悪かったと思ってくれる人は多くないだろう。おそらく矛先は岸田さんに向く。

とにかくのんびりしているのだがこれが無策に見える

蓮舫議員がNSCをやってくれと要請した後、岸田総理は形式ばかりのNSCを開き「コレから情報収集します」と言い放った。実際には「決めるのはG7で日本は従うだけだから」と言いたかったのだろう。のんびり屋さんなのはいいことなのだが、おそらく今後はこれに苛立つ人が増え「岸田は何もやっていない」という風評につながるはずだ。

国際社会に対しても間違ったメッセージを送り続けている。ロシアとの経済交渉を継続させているのは有名な話だが、記者会見では外国人記者がサハリン2について「サハリンで日本の商社が露政府企業と共同でガス田開発をしている。結果として日本の金が露軍の資金源になっている。共同事業を止めるつもりがあるか」聞いているのにゼロ解答だった。

岸田さんの回答になっていない回答はこんな感じだったそうだ。「今回の制裁については、先ほど来、申し上げているように、米国、あるいは、EU(欧州連合)をはじめとする関係国としっかり調整を行い、連携をした上で内容を確定をしています。米国をはじめ関係国においても、このエネルギー分野は、制裁対象から外れているということであります。こうした状況も踏まえて、わが国としても対応を決定したということであります。」

何を言っているかよくわからないと思うのだが「国際社会がまだダメと言ってきていないので別にやってもいいですよね」と言っている。

記者が言いたかったことはおそらく二つだ。

  • 日本は積極的に自由主義と民主主義を守るつもりがあるのか?
  • 日本は結果的にウクライナ人を追い詰めたことにどういう責任を感じているのか?

つまり、岸田さんはこれに対して

  • 特に私たちには関係ないんじゃないですかね?

と言っていることになる。記者は唖然としただろう。これがすでに国際的に配信されてしまった。

枝野官房長官の「福島第一原発の事故は直ちに影響がない」という発言はある種の隠蔽と受け取られ民主党が野党に転落する原因となった。おそらく今回の「直ちに大きな支障はない」という発言も影響が長引けば政権を揺るがす大問題に発展するだろう。ことの重大さがわからずに問題を大きくしたと言われてしまうのだ。

おそらくこの戦争はすぐには終わらない可能性が高い

まず西側はSWIFT制裁とプーチン大統領の制裁という最後のカードを今切ろうとしている。譲れない一線を超えてしまったのだ。

ロシアは軍事力を展開していたものの「演習だ」と説明されていた兵隊が多く士気が低いそうだ。練習だと言われてきたらなぜか騙されてしまい実戦に駆り出され言葉が通じる(関西弁と関東弁くらいの違いしかない)人たちを撃ち殺さなければならなくなっている。つまりロシアの軍事力が圧倒的ということも実はないらしい。

これまで散々ロシアに蹂躙されてきたウクライナ側の士気は高いが制空権がなく命令系統もおそらくサイバーで撹乱されている。兵力は1/10で武器も旧式なのだそうだ。ただ、地形は熟知している。やる気のない大軍とやる気はあるが能力に劣る抵抗軍といった典型的な膠着構図だ。これに持っているカードを全部使ってあとは静観するしかない西側先進国という構図になる。

もちろん戦争がすぐに終わる可能性もある。だが、じわじわと衝突が長引けばおそらく日本人は「こんなはずではなかった」と誰かを恨み始めるだろう。ダイヤモンドプリンセス号の時に「いやこれは数年かかりますよ」と言われて信じた人はいなかった。だが実際にはそうなっている。

コロナは自然災害・疫病だが戦争はそうではない。政治がどうにかできる問題だと思われている。岸田総理は今の問題を矮小化して見せることで「本当のことを言ってくれなかった」し「何もしてくれなかった」として恨まれる標的になるかもしれない。

本来ならこうした話は最初は大げさにいって「大したことはなかった」と思わせたほうがいい。逆に矮小化してしまうと「嘘をついていた」とか「隠していた」などと思われる。つまり人々は当初の予想に対して勝手に期待値を作り物事を事後的に評価するのである。

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