ざっくり解説 時々深掘り

新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)をめぐる人々のまだらな対応

連日安倍政権批判と絡めて新型コロナウイルス肺炎のことを書いている。今回は批判はお休みにして人々のまだらな対応について書いておきたい。この何が問題なのかと考えていたのだが、おそらく差別・被差別構造が根元にあるからだろう。そして誰もが差別される側になる可能性がある。

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テレビでは新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)のニュースを連日流している。Twitterを見ながら日曜討論を見ると、加藤厚生労働大臣はこれといった打ち手は持っていないようだ。封じ込めができているという印象を与えながら時間稼ぎをしようとしているというのが伝わってくる。「高齢者は外に出るな」「自宅で静養しろ」というようなことを盛んに言っていた。

政府としても広げたくないという気持ちとスポーツイベントは自粛したくないという気持ちがあるようだ。総理大臣は人混みは避けてと言っているがマラソンなどの大会は引き続き実施されてきた。そこで菅官房長官は「国は中止の要請はしない」と発言した。これは霞が関語では「お前らが責任を取れよ」という意味だ。そのまま続けてもいいですよという意味ではない。

霞が関語は東京都には間違いなく伝わった。一般参加は中止しお金は返さないという。おそらく東京都は政府言ったから仕方なく中止したと発表したかったのかもしれない。自己判断で中止したなら「金は返せ」という流れになるからだ。東京マラソンは東京が持ち出しをすることなしに寄付金で回す仕組みになっていたのだろう。

ここまでいろいろニュースを見て「街中は大変なことになっているのでは?」などと思ったのだが、そんなことはなかった。雨の日のスーパーは特売ということもあって人で溢れていたし、近くのパン屋もそのまま「むき出し」でパンが売られていた。すると今度は「あれ、あまり気にしている人などいないのでは?」と思えてくる。区役所にも聞いてみたが「緊急対策用の電話番号の問い合わせなんかありませんよ」とのことである。みな、自分たちが新型ウイルスに感染するとは思っていない。

しかし、テレビで連日新型コロナ関連のニュースをやっているのも事実だし、時事通信と共同通信では内閣支持率が急落しているというのも確かなようだ。さらに総理大臣のTwitterには多くのコメントが付いている。ある意味炎上していると言っても良い。多くの声が中国との縁切りを求めており中国人の入国拒否と二階幹事長の更迭を嘆願している。

この嘆願がどの程度切実なのかは分からないのだが、中国からの渡航を制限しないと大変なことになるという医者のコメントも見つけた。お医者さんといえば科学的知見に基づいて判断ができそうなものだがそれよりも感情的なリアクションが勝ってしまうということがよくわかる。中には「どんな禁じ手を使っても中国入国を阻止せよ」などと言っている人もいる。

自民党の有志が「武漢熱」という相手が嫌がりそうな名前を使って習近平国家主席の国賓待遇での来日に反対している。嫌がらせ気質がいじましいと思ってしまう。だが、彼らはおそらく「このコロナウイルス騒ぎは大したことにならないから政治利用できるだろう」と考えたのだろう。これは与野党ともに同じだ。野党は桜問題で首相に王手をかけたといって大はしゃぎである。

ここからわかるのは日本人が中国は不潔で遅れた国であるという印象を持っていて「それさえ封鎖すれば災厄は去る」という間違った「マスク思考」を持っているということである。

確かに安倍首相のTwitterについた、シナとかチャイナなどという差別的な用語の使い方の数々を見ると「この際中国を貶めてやろう」という意識も感じさせる。だが、中国は怖いところだ汚いところだという意識も入り混じっていて、正常な判断ができなくなっているのだろう。

「実際には国内で感染が始まっているので封じ込めには意味がないんですよ」などと言ってみても無駄なのだと思う。このブログは普段から「議論と対話」などと言っているのだが、このフェイズになると議論と対話は何の役に立たない。ただただ感情と蔑視感情に入り混じったリアクションがあるだけだからである。

ただ、そんな彼らも(いや我々全部が)ウイルスに感染した途端に差別する側から差別される側に回ってしまう。そして我々はそのことを全く忘れてしまっている。おそらくはこの非科学的思考の一番恐ろしいのはその点ではないかと思う。

そしてこの恐怖の感情はおそらく個人的なパニックを引き起こす。政府はまず電話をしてから病院に行くように勧めているのだが、おそらく電話はつながりにくくなることが予想される。電話がつながらないと感じた人はそのまま病院に殺到することになるんだろうなあと思う。これはウイルスを撒き散らす訳ではないが、おそらくは医療事務に相当の負担を書けるはずだ。

さらに、実際の保菌者には無症状の人が多い。彼らは捕捉されないままタクシーや公共交通機関を使ってウイルスをばら撒き、病院が感染すると今度は「即病院封鎖」ということになるだろう。病院が小さな武漢と見なされるからだ。これは様々な病気を持った人たちが医療にアクセスできなくなるということを意味している。

おそらく、こうした差別意識は少ない人数で持ちこたえてきた医療現場にとってかなりダメージになるはずである。差別意識に基づく感情は医療崩壊をもたらしかねないのである。

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