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マレーシアから考える「モリカケ問題くらいでガタガタ騒ぐな」に一定の説得力がある理由

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森友加計学園問題で大騒ぎが起きているのだが「そんなことよりもっと大切な問題があるだろう」という人がいる。これは、たいていは民主主義が何なのかよく理解できてきない人たちの戯言である。民主主義の公平性を担保するためには「透明性の高い説明」が欠かないのだが、安倍政権はこれを理解していない。このために世論の反発を受けて「政治の信頼性が低下」しているのだ。

だが、アジアの他の国と比べると「モリカケ問題」はそれほど大した問題ではないとも言える。加計学園の問題はたかだが獣医学部を一校作るためだけにビクビクと怯えながら法的な整合性を持たせようとしたという事例に過ぎない。最初は岩盤規制を打破すると大見得を切っていたようだが途中で横槍が入り「じゃあ、一校だけなら勘弁してもらえるかも」と軌道修正を図った経緯がある。このため却って「加計学園だけが優遇されたのでは」と問題になっている。やるなら堂々とやれば良かったとも言える。

実はアジアにはもっとおおっぴらな汚職が起きている国がある。例えば最近マレーシアで政権交代が起きた。背後には数年にわたって解明されなかったナジブ首相の汚職疑惑であるという。早速ナジブ首相夫妻の出国が禁止された。

マレーシアは複数のスルタン国からなる立憲君主制の国だが選挙制王政であり王様には実質的な権限がない。ナジブ首相は父親も首相という二世であり、7億ドルを口座に振り込ませた収賄容疑がかけられているとのことである。日本とは大胆さが違う。

しかし長い間マレーシアはこの問題を民主的に解決することはできなかった。野党がまとまらず与党には自浄作用がなかったという分析もある。最終的には与党から出た90歳を越えるリーダーが登場せざるをえなくなった。民主的に選ばれたリーダーとしては最高齢だという話もある。

それでも、ナジブ首相は政権交代を阻止するためにありとあらゆることをやったようだ。選挙区の区割りを変えてみたり野党を活動停止にするなどというようなやり方には「なりふり構わない」という表現がぴったりだ。

マレーシアは権力者が権力者として振る舞うことが社会的に許容されている社会である。韓国も上下関係が厳しそうだが、数値を見る限りでは韓国のパワーディスタンスがかわいく見える。リーダーシップへの挑戦はないということなので、汚職に対する自浄作用も働きにくいのではないだろうか。さらにその権勢の誇り方もおおっぴらで、おくさんはかなり嫌われていたとの情報もある。

いったん権力が不正に手を染めると取り返しがつかなくなる。こうしたことは韓国でも見られた。優遇措置を求める人たちが大統領を頼ってくると断りきれなくなってしまうのだろう。最終的には法の制限を超えてしまい、政権交代が起きて断罪されるということが繰り返されている。

日本でここまでおおっぴらな汚職や身贔屓が起こらないのはなぜだろうか。それは「民主主義が徹底されているからだ」と言いたいのだがそうではなさそうだ。

Twitterなどの批判を見ても民主主義の契約理念に基づいた批判は少ない。代わりに「ずるい」とか「汚い」という感情の方が強いことがわかる、このように日本人は誰か一人が優遇されるのを極端に嫌う社会である。縁故は好きなのだが「身分保障」という意味合いが強い。昔から知っている人は滅多なことはしないだろうし、何かあっても身内の目があるから自粛するだろうと期待するのだろう。この縁故を使って「おいしい思い」をしようとすると途端に断罪されてしまう。

もう一つの特徴が集団による牽制である。今回は通産省が内閣府を独占したことが問題の発端になっているのだが、首相が落ち目になるといろいろな省庁や地方から政権にとって不都合な情報が出てきた。彼らはこうした情報を普段から蓄積しており「出しどころ」を見計らっていたものと思われる。つまり倫理観から闘争しているのではなく集団の競い合いの一環なのだろう。その裏には既得権をめぐる経済的な理由もあるのだろうが、それよりも大きいのが「通産省ばかりが優遇されていてずるい」という心理的な反発だろう。

このことから、日本社会が実は民主主義ではなくまた別の原理でその健全さを保っているということがわかる。

安倍首相が間違えた点は民主主義を理解しなかったことではなく、お互いのことは干渉せず仲良くやって行こうやという日本的な村意識を毀損したことである。これをあまりにもおおっぴらにやってしまったので、揺り戻しが起きているわけだ。そしてそれが結果的に大胆な不正を防いでいるということになる。つまり日本は個人間の契約や倫理観ではなく、集団による均衡が権力の増長を防止する社会であり、それは「あの人たちばかりがトクをしてずるい」という生理的な嫌悪感に裏打ちされている。

みんなで仲良くお互いを干渉しないでうまくやっていこうやという気質はどうやって生まれたのだろうか。

ここで一つ着目したいのが人種や地域差別の少なさである。マレーシアは多民族国家なのだがマレー人優遇が徹底されているようである。しかし経済的な実験を持っているのは中華系であり、今回の汚職にも中華系のジョー・ローという富豪の関与が囁かれている。人工的にバランスをとっているので歪みが強制できないのだろう。

前回、韓国の保革対立の裏には南東部の差別があるということを学んだ。身内の票を固めるためにもともとあった差別感情を利用しており、それが解消されずに大きく育ってしまったということになる。

つまり国内が一枚岩になれないからこそ身内への優遇が起こりそれが取り返しのつかないことになるということになる。日本は単一性が強いので集団による均衡が保たれており表立った対立が起きにくいものと思われる。

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