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森友問題と安全保障 – 安倍こそが国難の本当の意味

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多くの人が森友問題について考えている。様々な分析ツールが提供されておりそれを眺めるだけでも楽しい。ある人は官僚主義の類型について語り、またある人はゲーム理論として捉えているという具合だ。このブログでは主に隠された文化様式について考えている。例えば文脈とか小利権集団としての村などの構造である。

日本人は文脈と事実を分離して考えることができないので、後から分析することができないという結論が得られた。事実そのものが解釈なしには成り立たないので。後から検証しようとすると観察者の主観が入り事実そのものが変化してしまうのである。だから事実解明のための証人喚問は役に立たない。証人喚問は人民裁判としての意味合いしか持たないのだ。

実際、太田理財局長は自民党から公開懲罰を受けている。西田昌司議員は明らかに「理財局が自民党を騙した」というストーリーで太田さんを攻め立てており、空気を読んだ太田さんもまた西田さんのストーリーにあった供述をしていた。

例えば安倍昭恵さんが証人喚問されたとしても彼女がどう考えていたかという解釈が中心になる。ある時点では政治に介入する意図を持って口出しをしていたのかもしれないのだが、正確にはそれを政治課題だとは思っていなかった可能性もある。しかし、当初の意図が明確でなかった分、のちに証人喚問されれば、与党のストーリーに従って「何も知らなかった」と答え、野党のストーリーに従い「私が悪かった」などと言い出すかもしれない。

同じことが佐川元理財局長にも言える。もともと佐川理財局長は安倍首相の不規則発言(首相も議員も辞めますよ)をカバーしようとして泥沼にはまってゆくのだが、そもそも「関与の定義」もわからない上に、今では立場も変わってしまっている。だから、事実を調査したいなら本来はアンダーテーブルで行うべきなのである。

これまで森友問題を理財局と官邸の問題として扱ってきた。だから証人喚問をやっても意味がないが、ショーとして楽しみたいならそれでも構わないと思っていた。しかし、ちょっと状況が変わってきている。

森友問題の本質の一つに「官僚機構という意味の積み重ね」が突発的で曖昧な圧力に極めて弱いという問題がある。籠池夫妻は半ば戦略的に日本会議や首相夫人との関係をほのめかしつつ理財局に圧力をかけたのだが、全体として自分が何をやっているかよくわかっていなかった様子がうかがえる。安倍昭恵さんも自分の立場をわきまえずにふらふらと行動し、公務員を自分の私設秘書のように使っていたようだ。つまり、この3人は官僚機構にとって異物でありそれが毒として作用したのだ。毒のせいで意味が伝わらなくなり、結果として嘘が蔓延し、少なくとも一人以上の死者が出た。

ここで重要なのは籠池理事長夫妻は理不尽なディールメーカーでありお金のない自分たちが土地を手に入れるためにありとあらゆる手段を使ってきたという点だ。

さて、これと似たような環境が現在できつつある。それがトランプ政権である。トランプ大統領は典型的なディールメーカーである。ディールメーカーとは自分が有利な条件で取引するためにありとあらゆる手段を使って相手を揺さぶる人だ。最近では北朝鮮情勢と韓国のFTAを混ぜて話をしている。さらに、ティラーソン国務長官をTwitterで解任した。

トランプ政権はコミュニケーションパスや一貫性を気にしない。それどころか曖昧さを利用してディールを仕掛けてくる。専門家は次のように見立てている。

引用されている記事には要約が書いてある。

  • President Donald Trump appeared to threaten to pull U.S. troops out of South Korea if he didn’t get his way on trade with Seoul, The Washington Post reported Wednesday.
  • “We lose money on trade, and we lose money on the military. We have right now 32,000 soldiers between North and South Korea. Let’s see what happens,” Trump said, according to audio obtained by the Post.

これまでも、韓国が同意しなければ自由貿易協定から離脱するということは言い続けてきたようだが、今度は在韓米軍を退却させるという脅しをかけたようである。32000人が引き上げたらどうなるか見てみようと発言したというのである。

これは日本の安全保障にも大きな影響がある。不安になった韓国が文化的により親密度が高い中国に接近することは明らかだからだ。韓国が共産化することはないだろうが、これは東アジアにアメリカの同盟国としての日本が取り残されるということを意味しているばかりか、アメリカは日本にも同じような働きかけをしかねない。実際に「安倍首相と北朝鮮問題について話し合うついでに日本市場の解放について話した」とTweetした。

こうした恫喝に対抗するためには、まず国益を明確にした上で、官邸が本気になって部門調整をして、トランプ政権に対処してゆくしかない。しかしながら、そもそもそのようなディールメーカーに弱い上に、安倍政権は「政権浮揚のためにはトランプ大統領の気持ちをつなぎとめておかなければならない」という心理的な依存も強そうである。さらに日本政府と日本の官僚組織との関係も悪化している。財務省を「トカゲの尻尾」扱いしてしまったわけだから、他の省庁も同じような目に遭いかねないと警戒されても不思議ではない。

担当者が何人か亡くなっているし8億円の値引きが絡んでいるので「この程度のこと」などと言ってはいけないのだろうが、それでもまだ日本の安全保障問題と比べると「この程度のこと」である。なぜならば土地が不正に払い下げられたとしてもそのこと自体で命が失われることはないからだ。

しかし、これが国の安全保障の問題になるとどうだろうか。国のトップの意思決定の誤りがそのまま多くの人命に関わる。たとえば自衛官がなくなるということもあり得るだろうし、ことによってはそれではすまされないかもしれない。いったんなんらかの問題が起これば「情報を隠蔽した」とか「官僚の面子が」などという問題では済まされない。

ということで、本来ならば保守を自称する人たちの方が深刻にこの問題を捉える必要がある。ブログの片隅でやや反政府的な傾向のある人が心配しても本気にはしてもらえないだろうが、日本の存続にとって大きな危機が訪れようとしている。北朝鮮の問題は外務省と防衛省がうまくやってくれているだろうと考えている人が多いのだろうが、実際には官僚組織は不規則な揺さぶりに弱い。

これまでの問題は、安倍政権がリスクを扱えるかという問題だったわけだが、この程度の問題すらマネージできない人たちが北朝鮮情勢などコントロールできるはずはない。その意味では「安倍こそが国難」という指摘にはきちんとした根拠がある。

森友学園の問題について深刻に捉えるならば選挙のための儀式として財務官僚を叩くのはやめたほうが良い。それよりも実際に何が起きていたのか、安倍官邸に関係がない人が真剣に調査すべきである。野党の協力も得て、次の政権を担う自民党のリーダーを早く決めたほうが良い。

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