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日本の外交的無策について散漫に考える

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ティラーソン国務長官が北朝鮮との対話を模索しているという話がある。これについて日本政府が不快感を表明したと産経新聞が勇ましく伝えている北朝鮮の封じ込めに水を差すというのである。

ここからいくつかのことがわかる。

第一に日本政府はトランプ政権と必ずしも盤石なコミュニケーションのラインを持っていないようだ。トランプ大統領が本当に北朝鮮を追い詰めてくれるのかという疑心暗鬼があり、対話の動きに対して過剰に反応してしまうのだろう。産経新聞は「ティラーソンが罷免されるかもしれないからここで彼の提唱した会議に乗ると梯子をはずされるかもしれない」などと書いているわけだが、ティラーソン国務長官が大統領とは全く無関係に動くことなどありえない。もっとも大統領は事前の根回しとは関係なく言いたいことを放言するかもしれない。つまり、どちらかというと無関係に言いたいことを言うのがトランプ大統領である。

次に日本には当事者意識がないことがわかる。仮に戦争に突入するとしても、国際的には「対話を模索したが北朝鮮が応じてくれなかった」という説明が必要である。多くの国は実際に兵隊を派遣しているので国内向けに「和平を模索したが仕方がなかった」と説明する必要があるからだ。つまり、実際には戦争が念頭にあるからこそ和平を模索している可能性も高い。安倍政権は国民などどうでも良いと考えているので一人で勇ましいことが言えるのだ。

さらにここから実は日本が北朝鮮問題について貢献するつもりがないということがわかってしまう。日本は国内に説明する必要がないからこそ(たとえ建前であっても)和平を模索する必要がないと考えている。これが成り立つためには自衛隊からは犠牲者がでないという前提が必要だ。他の国からは死者が出る可能性があるが、日本政府は高みの見物を決め込んでいると思われるのは必至である。

最後にわかるのは安倍首相が「プランB」を持っていないということである。つまり、北朝鮮が周囲からの圧力に屈して核兵器を放棄するだろうというシナリオがあり、それ以外のことを想定していない。つまり大規模の戦争も起きないし、北朝鮮がアメリカと交渉するということがあってはならない。だからそのシナリオが外れそうになると駄々っ子のようにごねるのである。こうした姿勢を繰り返すとどうなるだろうか。有権者はこの5年間内政でこのような手法をうんざりするほど見せられているので、安倍首相の言うことを聞いて自分の行動を変えたりはしない。

安倍政権の外交無策は特に驚くことではないのだが、最近ではアメリカも同じような状況になりつつある。アメリカは表向きは公正な裁判官か警察官として振舞っており、裏でどちらかを応援するというような手法を使って世界情勢に関与してきた。これが崩れつつあり、単なるプレイヤーの一人になってしまっている。

トランプ大統領はイスラエルの首都はエルサレムだと認めて大騒ぎになった。パレスチナもエルサレムを首都だと考えており、アラブ圏が大騒ぎしだした。しかし、実際に反発しているのはアラブ諸国だけではなかった。欧州は世界の秩序の維持に積極的に関与しており自分たちが騒ぎを作り出す側に回りたくないという事情があるのだろう。マクロン大統領は「認められない」とツイートし、メイ首相もトランプ大統領と直接話すと議会で発言したようだ。

北朝鮮情勢も仮に戦争になれば韓国の甚大な被害は避けられそうもないし、場合によっては東京などにも核攻撃がありそうだ。中東も紛争が起こればどのように展開するかはわからない。どちらもアメリカが作り出しているとなれば国際的な非難は避けられないだろうし、場合によっては国際的な治安維持にどの国も参加しないかもしれない。

さらに、戦争が始まるとアメリカの軽率な行動が同盟国に被害を与えたということになり、アメリカの外交力はかなり深刻なダメージを受けるはずだ。一方で北朝鮮に核兵器の開発を辞めさせられなかったときもアメリカは当事国を説得できなかったということになりアメリカの外交力は大きく低下する。アメリカにとっては都合の悪い状況で、だからこそ当事者として各国と対話しているティラーソン国務長官はトランプ大統領の<積極路線>に反対しているのだろう。

にもかかわらず日本は単にアメリカに追随すると主張するばかりである。つまり、軍事的圧力に北朝鮮が屈するという他人任せのシナリオがあるだけで、それが失敗した時のプランBなど全く考えられていない。国民に説明するつもりもなく、仮定の質問には答えられないという。それでも日本がことさら非難されないのはもともと当事者意識も意欲もないということが見限られているからだろう。

エルサレムの件については「何か言わなきゃ」とは思ったのだろう。河野外部大臣が「心配している」というのを聞いた。意見がないなら言わなきゃいいと思うのだが「何か言うべきだ」という空気だけは察したようだ。しかし、どっちに参加したら褒めてもらえるかが明確ではないので、どっちつかずのことしか言えなかった。

日本の外交戦略は先進国が言うことに「そうだそうだ」といってあたかも先進国の一部のように振る舞うことだったのだろう。一芸のないガヤが大物政治家に気に入られて番組に取り立てられるみたいなものである。地元の商店街にある居酒屋で「俺も芸能人なのだ」と威張ることはできる。しかし、一芸がなければやがて忘れ去られることになる。

そもそも外交は安倍首相がいばりちらすために存在するわけではない。北朝鮮の問題では核兵器開発をやめさせることができないだけでなく、拉致被害者は帰ってこないし、北朝鮮から船が流れ着いても何もできない。病原菌防護ができる服をきて「何かやっていますよ」というパフォーマンスをすることくらいしか対策がない。それでも国民が怒り出さないということは、何も期待していないということだ。政府はそろそろ国民の無関心を真剣に心配した方が良い。

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