安倍政権が危ないのではないかと思っている。兆候は些細なものばかりだが、これから安倍政権には辛いことが起こるのではないだろうか。もちろん、この予想が当たるかどうかはわからないのだが、どうしてそう思ったのかを記録して起きたい。
これまで安倍政権がどのようにして崩壊するのかということについて考えていた。最初のうちは「政策のまずさから国民が声をあげて内側から崩れるだろう」という望みを持っていたのだが、どうやらこれは起こりそうにない。幾つかの理由が考えられるので整理してみよう。
- 第一に国民の半数程度は政治にまったく関心がない。
- 第二に国民は不安を感じると体制を変えることではなく維持することを選ぶ。
- 第三に野党勢力に自信がなく一致団結して政権を取ろうという気持ちにならなかった。
まとめると、国民は潜在的に無力感を感じており、自分たちで体制を変えて国をよくしたいという気持ちにはならない。外部から民主的に駆除するという選択肢の他に自民党内で安倍おろしが起こるという可能性があるのだが、これも地方選挙の結果などから誘発されるのだから同じシナリオと考えて良いだろう。つまり、このままだと安倍・自民党政権が続くということになる。
逆に言うと「この状態」が崩れてしまえば国民は自民党政権を支持しなくなるか、あるいは安倍政権を支持しなくなるということがわかる。安倍政権に国民が期待しているのは何だったのかということを念頭に起きつつ、次のツイートを見ていただきたい。すでに報道も済んでいる。
Why would Kim Jong-un insult me by calling me “old,” when I would NEVER call him “short and fat?” Oh well, I try so hard to be his friend – and maybe someday that will happen!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2017年11月12日
「俺は金正恩のことをチビでデブと言ったことはないのに、なんで俺のことを老ぼれ」とバカにするのだろう。俺はやつと友達になろうとしているのに……でも、もしかしたらそのうちそうするだろう。
このTweetが出た時の最初の反応はトランプ大統領がまた金正恩を挑発しているというものだった。判断には現状バイアスがあるので「トランプは北朝鮮を挑発して戦争したがっている」という判断が働いたのだろう。これがやや修正されるのは海外報道が日本語訳されてからであり、半日ほどのタイムラグがあったようだ。
日本人の現状維持バイアスはそれほど強いということが実感できる。従ってこのバイアスが破られたときにはそれなりの揺れが観測されるはずだ。
中国を訪問してからトランプ大統領の態度が変わったと考えてよいだろう。つまりこれは対話路線の可能性の表明だ。しかし日本人はコンテクストを強く意識するので、文面だけを読んで意図を読み取るということをしない。
トランプ大統領は主義主張に一貫性がなく、直前にあった誰かに影響を受けやすいようである。これは価値判断を多分に含んだ表現で「コンテクストを決めない」ことで交渉力を増すという戦略なのである。このやり方を取ると、ギリギリまで多方面からバーゲンを引き出すことができる。
このことからわかるのは安倍政権がトランプ大統領との会談に失敗したか、あるいは最初から成功していなかったということである。これもやや理屈っぽくなるが、安倍首相の戦略はコンテクストを強めることで意思決定に対して印象操作を行うというものだからだ。このために日本人が使うのが「接待」であった。
今回の訪問で印象に残ったのは横田基地の演説だったのではないかと思う。つまり、日本はアメリカからみると半占領状態にある従属国家であり武器の市場に過ぎない。しかしながら中国は対等な大国であり、仕事の受注先だった。皇帝の権威と黄金の富を見せびらかしたのはトランプ大統領に深い印象を残しただろう。
安倍政権はトランプ大統領の北朝鮮政策について「完全に一致した」と言っている。これは、北朝鮮を追い詰めるという文脈あってのことである。そこでもしトランプ大統領が対話路線を言い出したら何が起こるだろうか。国内でのメンツが潰れてしまう。
安倍首相の戦略は「完全に米国の追随しつつ、アメリカに働きかけを行ったと日本人に説明する」というものだ。これによって「アメリカとの緊密に働きかけることによって影響力を行使した」という偽装の物語を作り出すことができる。これが崩れるのはどんな時だろうか。それはストーリーがそもそもないということがわかってしまった時なのである。
最初の分析について振り返ってみると、安倍政権が支持されているのは「アメリカとの関係が良好で現状維持ができそうだから」だった。影響力を与えることができることには2つのメリットがある。日本のプレゼンスが増し、さらにアメリカが攻めてこないという保証が得られるのである。
この強いリーダーというイメージが毀損する映像が空撮でリークされた。ゴルフスコアが国家機密にになり、また足腰が弱くトランプ大統領と松山英樹について行けないということが露見したのである。
面白いなと思ったのはスポーツ紙の論評だった。ゴルフが下手であるばかりか、バンカーの坂を駆け上がってバンカーを崩すのはマナー違反なのだそうだ。日本人には大局観はないがこうした細かいことを通じて「その人の人柄」を推察しようとする傾向がある。これが「接待」が重要視される理由だろう。このことから「重要な接待もできない」無能なリーダーとして、サラリーマンから軽蔑されることは間違いがない。
そんなことを考えていたらまったく別の角度からのツイートを見つけた。
かつての自民党政権は、外国首脳来日のさいの首相主催の晩餐会に、野党党首も招待し、超党派でもてなしたものだった。私も招待があったときは必ず参加した。米国のブッシュ大統領と挨拶、ツーショットの写真を撮ったこともある。それが安倍政権になって一切なくなった。これも見直した方がよいと思う。
— 志位和夫 (@shiikazuo) 2017年11月11日
これはこれまでの政権は対米関係を自分だけの利権とはみなしてこなかったということである。安倍政権はこれを独占して「自分だけがアメリカとの関係を結ぶことができる」という印象を与えているのだ。裏を返せばいったん対米関係がギクシャクしだすと、今度はその責任をすべて安倍政権が取ることになるということを意味している。
国民が安倍首相に期待しているのは民主的なリーダーではなく封建王権のようなものだということになる。それは絶対王権ではなく朝貢国の王権に近い。こうした古い雛形が今でも残っているのだという驚きがある。
そして、この時に起こるのは民主的なリーダーの選び直しではなく、王殺しだということになる。