AERAdot.に週刊朝日が面白い記事を掲載し、Twitter上で笑い者になっている。記事の概要は次のような感じだ。
- 今回の衆議院議員選挙で民進党が解体し、希望の党も自滅した。
- この結果、小池百合子と前原誠司が失脚したのだがアメリカ政府が介入している(に違いない)。
- その証拠として、在日アメリカ大使館の内部文書が見つかった。
- この結果自民党が大勝し日本を戦争ができる国にする素地が整った。
面白いと思うのはこの内部文書というものが「大使館が具体的な工作を行った」と書いているのではないという点だ。もともとどこの誰が書いたかわからない上に、単に「米国政府がやったとみて良いだろう」としている。フェイクである可能性も高いし、大使館側がわざと漏らしたものである可能性もある。
確かに、小池百合子と前原誠司がアメリカの工作員だった可能性はあるのかもしれない。しかしそうだとすれば、アメリカのシナリオは野党サイドから反安保法制派(潜在的な反米勢力だ)が駆逐して親米二大政党制を構築するというものでなければならない。しかし、野党側の親米勢力がほぼ自滅してしまった上に、野党第一党として安保法制反対派ができてしまったのだから、この作戦が成功だったと見るのには相当の無理がある。
仮にアメリカ側が工作をしていたと仮定しよう。この工作はかなり稚拙なものだ。つまりは民進党を親米政党にできなかったということだし、希望の党にすら反米の議員がいて憲法第9上の問題では、対米政策の立ち位置(集団的自衛権と憲法)が党首選挙の争点になっている。アメリカ側はいろいろなチャネルを使って何人かの政治家(小池、前原、長島、細野など)を抱き込んだが、彼らは軒並み人望がなく、かといって他の議員を抱き込むほどの資金や支援者もいないということである。
そう考えるとこの文書にはそもそも信憑性がないか、あるいはアメリカ側が失策を隠蔽するためににリークさせた可能性が高いのではないだろうか。
いずににせよ、いわゆるリベラル勢力がしっかりしていればつけこまれることはなかっただろう。しかし、結果的にはリベラルはかなり悲惨な負け方をしているので「アメリカが邪魔したからこのようなことになった」という方が都合が良いのだろう。
しかしながら、安倍政権は「戦争ができる国」を作りたがっているというのは間違いがなさそうである。
アメリカはこの地域に影響力を残しつつ関与を減らしたがっているのではないだろうか。韓国には資源がないのだから守っても特にうまみはない。となれば、アメリカの武器の消費者になってくれて勝手に戦ってくれた方がいい。かといって中国の影響下に入ってもらうのは困るという感覚だ。
今回のトランプ大統領の訪問でもわかるように、韓国が訴えたかったのは北朝鮮の抑止ではないようである。北朝鮮は同胞の国なので「話せばなんとかなる」と思っているようである。彼らが問題にしているのは実は日本が地域に介入するようになることである。そのために、慰安婦を食事会に招待したり、日本海で取れたエビを恭しくお皿に乗せたりした。つまり「日本は嫌いだからアメリカに直接関与してほしい」というメッセージなのだが、言い換えれば「日本に肩代わりしてもらおうと思っている」という発信があったということになる。
アメリカとしては自分たちの勢力圏は守りつつコストを削減し、なおかつどこかに武器が売れれば良い。日本がインドに新幹線を売るようなものである。アフリカに売りたい重火器と違ってシステム武器だからインフラや情報網も売れるわけである。
そのためアメリカは日本にいろいろな要求をした。情報ネットワークに入るためには情報が漏れては困るから政府が情報公開をしなくてよいように特定機密保護法を制定させ、集団で行動できるように集団的自衛権を認めさせた。まずは地域で使えるようにして(このラインだと従来の解釈でなんとか対応できる)さらに地域外にも拡大したいのだろう。
と同時にこれを中国への恫喝にも使っている。日本が(というより安倍政権だが)が意欲的なことは間違いがないので「このままだと日本が再軍備するよ」とほのめかしつつ中国に北朝鮮を圧迫させればよい。
実は北朝鮮が現状のまま開発をストップしてくれた方が、アメリカにとっては都合が良い。アメリカには弾道ミサイルは飛んでこないし、緊張感は残るから日本と韓国に武器を売りつけることができる。さらに中国を恫喝する道具としても使える。もしかしたら北朝鮮がキレて戦争を始めるかもしれないが、今の段階ではアメリカにはミサイルは飛んでこないので、中国から日本にかけてが攻撃されるくらいで済むだろう。韓国は壊滅するかもしれないが、そんなことはアメリカの知ったことではない。
となるとアメリカがこの段階で北朝鮮を刺激し続けている理由がわかる。彼らは今戦争してほしいのだ。3年後にはアメリカに届くミサイルが開発されるかもしれないが、今なら「同盟国が攻撃された」ということで北朝鮮を叩けるからである。
アメリカが犯すであろう失敗も明白である。議会の承認が得られないので戦力投入が遅れた挙句に地域の状態が泥沼化してしまうのである。
アメリカとしては「すべての選択肢がテーブルの上にある」のだが、安倍首相がその選択肢をすべて知っている必要はない。安倍首相には「日本が再び地域の軍事大国化できるようにしてくれれば北朝鮮を叩くから」と仄めかせばいい(やるかどうかはわからないから確約はしない)し、中国には「日本がいきり立っているからこのまま北朝鮮を放置しているとどうなっても知らないよ」と言ってもかまわない。これを官僚がいる席でやってはいけない。彼らは確約を求めるだろう。だから誰もいないゴルフ場は好都合な「ビジネスの場」なのである。
かといって安倍首相にだけ頼る必要もない「安倍首相は落ち目だから今度は小池さんにお願いしたい」とか「小池さんは思いつきばかりだから長島さんの出番だ」などと言ってもかまわない。政治家達の自尊心を満たしてやりつつ競わせれば良いのである。多分国内での「工作」はそのようなもので、これを国際的にも展開しているのではないだろうか。
トランプ大統領から学べるとしたら次の3点だろう。
- 顧客を一人に絞ってはいけない。複数人に声をかけてお互いに競わせろ。やがて彼らは自分たちから「欲しい」と行ってくる。
- 決して契約書を作ってはいけない。プライベートな場で仄めかせばよい。
- 相手のほしいものを知ることが大切だ。期待を煽って相手をその気にさせろ。
どうやら安倍首相はこの提案を気に入ったようだ。中国はいうことを聞かず、韓国もあんな調子だ。俺の友達はシンゾーだけだといえば良いのである。そのためにダサい帽子をもらったようだが、あんなものは黙ってかぶってやればいいのだ。安倍首相のはしゃぎようは尋常ではなく、嬉しさのあまり気が動転してバンカーから転げおちたそうである。