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新聞が軒並み誤報を出したイバンカトランプ騒動

イバンカ・トランプ大統領補佐官が日本にやってきた。料亭でご飯を食べて女性向けのフォーラムで演説をして帰って行った。その席で安倍首相がイバンカ補佐官が立ち上げに関わった基金に57億円を支出すると表明したと報道された。

テレビではイバンカさんによくしておくとトランプ大統領の印象がよくなるのだとか、イバンカさんが何を着ているのかということをしきりに話題にしていた。一方で、Twitterの反安倍系の人たちは「そんな金があるなら他に使い道があるだろう」と騒ぎ出した。

しかし、徐々にこの資金が実はイバンカ資金などではなく世界銀行とIMFが関連するプロジェクトであるということがわかってきた。さらにすでに10月には政府からアナウンスメントも出ていた。イバンカ補佐官が運用に関わるわけでもない。

第96回世銀・IMF合同開発委員会 日本国ステートメント(平成29年10月14日)

これを正しく伝えたのは既存マスコミではなくバズフィードだった。バズフィードによると、日経新聞以外はすべて誤報だったということである。

なぜ、このようなことが起きたのか、そしてそれはどのような影響を与えているのかについて考えたい。

第一に安倍首相が信頼されていないということが改めてわかった。

安倍首相は行政府の長であり、国民は「税金を我々の役に立つことに使ってもらう」ために安倍さんにお金を預けているに過ぎない。つまり行政の代理人である。だから安倍首相は勝手に予算を使うことは許されず、すべてを国会で審議してもらう必要がある。これが周知されていればTwitterでこのような騒ぎが起きることはなかったはずである。しかしながら、Twitter上では「国会で審議されるだろう(あるいは審議するだろう)」という冷静な声は聞かれない。これは安倍首相が勝手にお金を使って国会はそれを追認するだけだという認識があるからだろう。

次に新聞は記者クラブからお膳立てしてもらわないとまともな記事が書けないということがわかった。常に記者クラブをコピペしているだけなので、安倍首相の発言を聞いたらどのように質問するのかがわからなくなっているのだろう。さらに他の新聞社に負けてはいけないという気持ちがあるので、発言をよく確かめもせず「イバンカ資金」として報道してしまったのだ。

こうした批判的な目がないことで、日本と英語の報道ではかなりトーンが違ってきている。日本の報道は背が高いイバンカ補佐官がミウミウのブランド物の服をきており、日本のおもてなしが気に入ったようだという報道をしている間に、ガーディアンはイバンカ補佐官の講演がガラガラだったことを紹介しつつ、ドイツでは大ブーイングを受けているということを伝えている。イバンカ補佐官はは女性の味方を標榜しているが、これが国際的には偽善的であるとして嫌われているのである。さらに、イバンカ大統領補佐官に「ウーマノミクス」と持ち上げられた安倍首相も女性活躍を推進するなどと言っているのは単に選挙目当ての偽善であるということが見抜かれている。実は日本では男女格差が広がっており、先進国では最低の環境にあるからである。

さらにニューズウィークはイバンカ夫妻の公私混同ぶりを伝える。財務当局とのやりとりに私用のメールアドレスを使っている。さらに、イバンカ夫妻は公的な地位にあるにもかかわらず、自身のビジネスから手を引いていないので、潜在的には権力を使って利益誘導をしているという疑いが払拭できないでいる。極めてダークな大統領補佐官であり、距離を置くのが当然の対応だろう。

いつも「アベが気に入らない」というTweetをしている識者たちはいつものように安倍非難のコメントを流していた。何人かに指摘してみたがブロックこそされないが当然のようにスルーされた。中でも最も痛々しかったのがこの人である。民進党系の人たちでTwitterをやっている人たちはさすがに反応しなかったようだが、もはや時代について行けていないということが露見されてしまっている。このTweetは「実はあれば以前に表明された資金だった」というTweetがちらほら見られるようになってからのコメントである。

マスコミは身長報道などと言って、加計学園ヤモリとも学園問題についてはあまり報道しない。しかしそれは政権からのプレッシャーを恐れているだけのことであって、実際には安倍首相の発言を確かめもせずに流してしまうほど、ジャーナリズムの正確さには興味がない。政府の恫喝に乗るということは、政府から恫喝されない範囲であればどんなにいい加減な報道をしても良いということなのだということがわかる。

実際には威張んか大統領補佐官は世界の笑い者になっており、日本も(単に首相だけではなく)空気が読めない国と見なされているのではないかと思う。

すでにトランプ大統領側近が「日本が行動すればアメリカも追随する」などと言っており、トランプ大統領自らも「アメリカは自生するかもしれないが、日本が黙っていないかもしれない」などと中国に吹聴しているようである。自衛隊とか専守防衛という言葉を理解していないから出てくる発言ではあるのだが、安倍首相も専守防衛とか憲法第急条について理解しているかがわからない状態になっている。

さらにマスコミは単に権力者の言葉を垂れ流すだけの脳死状態にあるようなので、もしかしたら本当に日本がきっかけになって朝鮮戦争が再燃するようなことが起こるのかもしれない。その場合国際社会から非難されるのは日本であり、それはトランプ大統領や安倍首相個人ではないということを覚悟しておく必要があるのかもしれない。

こうしたかなり危険な空気に「反安倍」の人たちは実は加担している。冷静であれば信頼されるのだろうが、常に攻撃材料を探しているだけという状態なので、普通のリテラシーを持っている人たちが離れていってしまうのだ。それでも憂さ晴らしの方が重要だというのなら非難はできないが、自分たちのルサンチマンを晴らすことで実は戦争に協力しているということを知っておく必要がある。

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