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各政党の政策集を読み直す

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入れたい候補がいないので選挙が面白くない。だが、愚痴っていても仕方がないので、各政党の政策集を見直してみたい。2009年の選挙では事務所にでかけていってマニフェストをもらわなければならなかったのだが、最近ではインターネットでダウンロードできる。便利な時代になったものである。ただし印刷して配布すると公職選挙法に触れるそうである。

今回見たのは、自由民主党公明党希望の党立憲民主党日本維新の会共産党社民党の各政策集だ。

どこの政党も政策そのものは似通っている

テレビでは三極化などといって違いを際立たせているが、実はどの政党もアイディアはだいたい似通っているということに気がつく。子供を大切にすべきだと主張し、お年寄りには心配しなくてもよいといい、北朝鮮の核実験はいけないことだと非難している。これを見て「みんな似たり寄ったりなんだから、仲良く政策について話し合えばいいのに」などと思ってしまう。が、実際には問題は解決しておらず国民は不安なままだ。そこで敵を設定して有権者の目をそらそうとしている。野党は安倍政権がいけないと言っており、唯一安倍政権だけが北朝鮮が国難だと主張する。

「日本は再配分がうまくいっていない」などと言われるが、各政党の政策集は再配分の話ばかりをしている。だから、再配分過剰選挙と言える。実際の問題は実は再配分が行われていないということである。いずれにせよ、問題になるのはその再配分の原資をどこから持ってくるかということだろう。これは各政党によって異なる。

一番の違いはどう稼ぐかという提案

わかりやすいのが共産党と社民党だ。儲けすぎている会社からとってくればよいと言っている。リアリズムを標榜する立憲民主党だが実は「稼ぎを増やす」ということについて言及がない。時間がなかったのか、それともアイディアがないのかがわからない。ということで、野党共闘で政権ができると、法人への課税強化がほぼ唯一の経済政策ということになる。これは法人が海外に流出する原因となるだろうがすでに海外法人は日本を避けて香港などを拠点にしているので、実際には影響はないかもしれない。

一方、自民党、希望の党、日本維新の会などは特区を活用したり規制緩和をしたりして稼ぐ力を増やそうという政策を持っている。自民党は生産性を劇的に向上させることによって生産性を向上させようと言っている。日本維新の会は特区ではなく地方分権で経済の活性化を目指そうと言っている。

希望の党は多分自民党のアイディアをコピペした上で「フィンテック」のような目新しい用語をかぶせているのが特徴だ。さらに左派リベラルのコピペもしていて内部留保課税などを公約に加えている。

地方分権に対する考え方

同じように見える自民党と日本維新の会だが、地方分権に対する考え方が異なる。自民党は地方分権については唄っていない。地方は創生されるべきものなのだが、中央からの再配分によって活性化されることになっている。生産性の向上は多分中央集権的に推し進められるべきだと考えているのだろう。希望の党は特区と地方分権を同時に唄っている。地方に権限が渡れば特区は必要ないはずなので、これが寄せ集めの政策であるということがわかる。日本維新の会の地方分権は大前研一のアイディアの引用なので(大前さんは手を引いているのではないかと思うのだが)地方分権と言いつつ、実際には大阪に首都機能を持ってこようという我田引水さが目立つ。なぜ地方分権が活力をもたらすかという理解がないのだろうと思われる。

ということで、自民・維新・希望の連立政権ができるとこの辺りはコンフリクトを起こすはずである。

世界の中の日本という項目が完全に消えている

実は今回の選挙から消えてしまった項目がある。それがTPPと自由貿易圏に対する考え方だ。日本にとって世界とはアメリカのことなので、アメリカが手を引いてしまったら世界から切り離されてしまうのである。だから、今回の選挙では世界とどうつながって稼いで行くかという視点が全くない。唯一自民党が「世界で尊敬される安倍首相」というページを設けている程度だ。

前回までは「どのように自由貿易を正当化すべきか」という項目と「なぜ自由貿易がいけないのか」という視点があった。だが、アメリカのプレッシャーが消えてしまったために、自由貿易を推進して日本の外貨獲得力を高めようとか、消費者が安い食料を手に入れられるようにしようというような項目が丸ごと消えてしまった。しかしながら、アジアとどう連携して行こうという記述があるわけでもない。なんとなく中国に苦手意識と蔑視感情があるからなのかもしれない。

同じことは国防にも言える。憲法第9条について考えるならば「アメリカ一極集中ではない世界でどう国防力を形成するか」とか「日本がどう平和維持に貢献すべきなのか」という視点があってもよさそうなのだが、それも消えている。立憲民主党は「専守防衛だけできればいいんだ」と言っているし、自民党も「北朝鮮が攻めてくるから大変だ」と言っているだけである。希望の党も緊急時の対応をなどと唄っているが、どこか概念的である。

実は世界に対する視座がないことが、経済停滞の原因の一つになっているのではないかと感じた。経済成長のための現状分析をするならば2つの視点を考える必要がある。一つは労働者や経営者がどうしたらやる気を出すかということなのだが、もう一つは世界の中で日本がどう稼いで行くかという視点である。確かに貿易依存率はそれほど大きくないのだが、海外貿易で得た収益を国内で回してゆくというのが日本の基本的立ち位置なので、世界に対する視座が欠けてしまうとすべてが破綻してしまうのである。

政策集の組み立て方がわからない日本人

それでは経済対策というのはどうやって組み立てるものなのだろうか。改めて考えてみたい。

例えば日本はものづくり大国としてやって行きたいとする。そのためにはまず軽工業(繊維など)でお金をためた上でインフラ投資をし重工業化することになる。そのためには資本の蓄積が必要なので、外資が参入しやすいようにするか、中央集権で資本を一括管理している。だから工業化のためには中央集権化した国の方が都合が良いのである。

一方で変化の激しいサービス産業型の国家の場合、都市間競争があった方が良く、規制は少ない方が良い。また、移民は開放すべきである。なぜならば移民の流入は知識の流入だからである。ゆえに地方分権的な国の方が向いているということになるし、金融に特化したいのなら都市国家化を目指した方が良いということになるだろう。

いずれに場合にも海外の動向を見つつ、その市場をライバルにするのか強調してやってゆくのかを検討しなければならない。しかしながら、日本の政治は再配分中心で来てしまったために国外の動向を分析しつつそれを政策に生かすということができないでいるのではないかと思われる。

このような視点で各政党の政策集の見直してみると、内向きに国内の勢力争いにばかり夢中になり、同じようなアイディアを違ったように見せようと腐心している様子が伺える。

だからどの政党が政権をとってもそれほど代わり映えのあるアイディアは出てこないだろう。一方で政権交代が進まないと腐敗のみが進行することになる。

いずれにせよ、政策集を読むときには、過去のものと照らしあわせるのが面白いと思うのだが、それはなかなか大変なので、少なくとも各政党のものを比較して読んでみるのが面白いと思う。

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