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「アベは戦争をやりたがっている」のかもしれない

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よく「アベは戦争をやりたがっている」という話を聞く。こうしたサヨクめいた言い方は冷静さに欠け、とにかく安倍首相が嫌いということしか伝わってこない。こうした人たちは新興宗教に頼るようにして反政府的な思想に頼っているだけのように思える。例えば共産党を支持するというおじいさんたちに「正社員はもはや既得権益ですよね」などといっても「マルクスを勉強していないからそういうことを言うのだ」などと話をそらされるし、市民団体系の勉強会に集まる主婦も憲法第9条の話をしているはずなのにいつのまにかご主人のグチを話し合う場になったりする。

第一、経済連携が進んだ世界で簡単に戦争など起こるはずもない。

だが、ちょっと風向きが変わってきたと思える。日本人が戦争をするとすれば、アメリカに巻き込まれるのではなく、自らが仕掛けて行くのではないかとすら思った。

源氏あ、安倍首相が一生懸命に北朝鮮を追い詰めようとしている。世界の国々は「なんとか話し合いで解決してくれ」と言っている。直接の脅威を感じているはずの韓国ですら北朝鮮を軍事的に刺激することには消極的だ。だが、アメリカと日本だけが北朝鮮に軍事攻撃をしようと前のめりである。

トランプ大統領は国際問題にあまり関心を持っていないので、アメリカ軍の「戦争をしたらアメリカ軍が優位だ」という言葉を信じており、また数度の首脳会談を経て「安倍晋三だけが自分のことをわかってくれる」と信じているようである。そして、その安倍が「北朝鮮を徹底的に追い詰め、軍事行動もオプションに入れるべきだ」と言っているようにすら思える。

最近のニュースでは北朝鮮脅威論が盛んに報道されており、ニュースリテラシーの低い人からこれを信じ始めている。Jアラートで国民を恫喝した挙句、子供を巻き込んで避難訓練などをやる学校までで始めた。政治家たちは「選挙をやるかもしれない」などと言っているので、北朝鮮がミサイルを打ち込んでくるなどとは思っていないのだが、国民の危機感は煽りたいわけである。

安倍首相が前のめりになるのにはいろいろな理由があるのだろうが、面白い記事が出た。トランプ大統領が韓国の大統領を「乞食のようだ」と言ったのだという。だが、この記事を伝えたアメリカの通信社はない。英語ではハンギョレだけがフジテレビの報道として伝えている。実は、日本語のみで伝えられたフジテレビのリークなのだ。日本側が漏らしたのだろうが、日本政府の中に韓国を侮辱して戦争に追い込みたいという人たちがいるのは間違いがないだろう。これが官僚なのか政治家なのかはよくわからない。

冷静に考えればこれは大変危険な行為だ。自国の大統領を侮辱されて喜ぶ国はないので米韓同盟に悪影響が及びかねない。にもかかわらずこういうリーク記事が出てしまうのは、日本政府の関係者が倫理観と冷静さを失っているからだろう。安倍政権は政権発足以来倫理的にはありえない行動を取り続けており、彼らの倫理観はすでに麻痺してしまっているのだ。さらに、本当に乞食呼ばわりしたとすれば、トランプ大統領には外交的資質が全くないこともわかる。このまま有事に突入すれば思わぬ事態に発展する可能性が高い。

そう考えるといくつかのことが思い浮かぶ。第一にフジサンケイケイ系は朝鮮半島に蔑視感情を持っている。つまり、彼らも半島情勢がどうなろうと知ったことではないと考えているのではないだろうか。ジャーナリズムとしての倫理観が吹き飛んでいることがわかる。確かに、韓国との間には慰安婦問題など面白くない問題がある。こうした報道に手を貸すことによって「日本こそがアメリカとの関係では親密なつきあいができているのだ」という仮想的な優越感を満たしたい気持ちもありそうである。そうした感情が戦争を回避するべきだという当たり前の理性に勝っているのではないだろうか。

次に、安倍首相はアメリカの金で戦争ができると考えているのかもしれない。いわゆるネトウヨ系の人たちが第二次世界大戦の失敗から学ぼうという姿勢はみじんも感じられない。彼らは多分、第二次世界大戦に負けたのは日本が間違った枠組みで戦争に参加したからだと考えているようだ。つまり、勝てる枠組みで戦争に参加できれば戦勝国になれるというわけだ。面白いことに、こうした言い方をする人は自民党意外にもいるように思える。日本が悪者になったのはたまたま弱いチームで戦ったからで、今度は強いチームで弱い国を叩くのだから勝てるだろうと考えているとしたら、完全に暴走族の下っ端かいじめっ子の論理である。

よく集団思考という言い方をするが、こういう人たちは戦争のエグジットについては考えない。強い人たちと徒党を組むことばかりに夢中になり、どうやったら戦争を継続し、イグジッドできるかということを考えなくなってしまうからだ。だが、日本人にはこうした思考形態が珍しくない。現在は前原民進党代表が「政策はどうであれ枠組みさえ変えれば勝てる」と信じているようだ。勝利は風と枠組みの問題なので努力をする必要はない。だから「誰かがなんとかしてくれるから、とにかく周囲の国をけしかけて」というように考えてしまうのである。

日本が中国東北部に突入した時国民は「日本軍が強いから戦争に勝てるのだろうな」と信じていた。しかし、どうやったら植民地を維持できるかとか、アメリカと対立したらどうやって出口を探せば良いかなどということは考えなかった。こうした集団思考に陥りやすい性質は今でも健在である。ということは「絶対に勝てそうな」現在のスキームにもプランBの検討は必要であるということを意味している。だが、アメリカは日本の勢いに押されており、なおかつ日本には当事者意識がない。実は極めて危険なスキームなのだ。

最後に歴史的な経験がある。朝鮮半島で戦争が起きたあと日本では特需が起こった。つまり、朝鮮戦争が対岸の火事である限りにおいては日本には経済的な恩恵がある。さらに現在はライバルになっている韓国の経済が打撃を受ければその仕事の一部が日本にやってくるだろう。つまり、戦争が管理可能である限り、戦争にはメリットがある。

ここから見えてくるのは朝鮮戦争は原子力発電所のようなものである。完全に管理されていれば確かに儲けることができるわけだが、事故の可能性が高く、一旦制御不能な状態に陥ればたちまち数カ国を巻き込んだ大惨事になる可能性が高い。さらに原発が使用済みの燃料の処理について何も考えなかったように、戦線の維持、周囲の協力などについては驚くほど関心がない。

さらにトランプ大統領も議会を説得できるかどうかはわからない。つまり、北朝鮮を挑発して暴発させた挙句に、戦争ができないという可能性もある。つまり、中途半端な状態で戦争に突入し、予算のない国と軍隊ができない国が戦線を支えるという可能性があるということだ。

いずれにせよ、日本がアメリカに巻き込まれる形で戦争に参加するというシナリオは考え直した方がよさそうだ。前のめりになった日本がアメリカを戦争に巻き込むという可能性がある。日本人は第二次世界大戦について反省していないので、全く同じ形での惨事を自らが引き起こす可能性があるのである。

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