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なぜ中国は日本に攻めてこないのか

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Twitterで面白いつぶやきを見つけた。ネトウヨが「中国が攻めてくる」と言っているので、それを否定するのが大変だったというのだ。

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面白いことに、日本人は戦争が無料でできると考えているらしい。ネトウヨの人たちは中国は血に飢えた獣なので当たり前のように攻めてくると考えており、否定する側もそれについて考えてみようとはしない。サヨクの人たちは戦争は愛と理念で防止すべきだと考えるので、そもそも戦争にいくらお金がかかるかを考えない。そこで「外国が攻めてきたら酒を酌み交わして話し合いをするので、自衛隊はいらない」といえてしまうのである。

こうしたことが起こるのは、この世代の人が戦争をウルトラマンや仮面ライダーの類型で考えているからかもしれない。ショッカーは悪であって攻めてくるのが当然であり、彼らの団体がどう運営されているのかということには誰も関心を持たない。

ということで、この話は左右どちらからもあまり理解されない。にも関わらずこれを書くのは、これが意外に重要な視点を含んでいると思うからだ。中国や北朝鮮は日本に攻め込むよりも安く目的を達成することができ、それは日本にとっては必ずしも好ましいことではないだろう。

中国が日本に攻め込むことを考えてみよう。理由は領土的野心でも安全保障上の問題でもなんでもいい。すると、戦争にどれくらいの時間とお金がかかるかを計算した上で、それに見合う価値があるかどうかを計算しなければならない。日本には天然資源はないので、占領してもあまりうまみはない。また賠償金の徴収は70数年前になくなった制度なので、これもあてにできない。この二つが世界から大規模な戦争が消えた理由だろう。

太平洋の出口を塞いでいるという話があるのだが、塞いでいるのはアメリカであって日本は関係ないし、尖閣諸島や小笠原諸島の例でもわかるように日本は手出しができないから放置しておいてもかまわない。せいぜいできるのは、尖閣にいる船に護衛をつけることくらいである。これはやればいいと思うのだが、なぜか日本の政治家は口ばかりで護衛をつけたりはしない。

アメリカが日本を守っているという話があるが、アメリカが守っているのは日本の米軍基地であって、日本ではない。だが、いずれにせよ日本を叩くとほぼ自動的にアメリカが参戦するので、たちまち世界大戦になる。すると世界経済はガタガタになり世界の工場である中国は大損害を被るだろう。

中国は第二次世界大戦前夜の日本ほど追い込まれおらず、世界経済にも組み込まれてしまっているので戦争をする動機はゼロではないがあまり高くはなさそうだ。

にもかかわらず「中国が攻めてくる」と言い立てる人が後を絶たないのは、敵がいないと軍拡の理由付けができないからだろう。安倍首相などの自民党の右派の人たちもそうだが、民進党の前原議員や長島昭久衆議院議員もその系統の人たちである。いわゆる「ジャパンハンドラー」と言われる人たちは、アメリカでは軍事産業の代弁者になっているのだろう。冷戦期に発展した軍事産業を守るためには引き続き敵が必要なのである。

愛国的な政治家たちは「中国が攻めてきそうで危ないから軍備を確かにすべし」などと言っているが、冷静に考えれば日本海にいる漁船を守るための護衛体制を整えるべきだとは言っていない。漁船を守ってもアメリカから買ってくる武器を使えないからではないだろうか。彼らにとってはイージス艦などのお金がかかるがいつ使うかわからないような武器調達することの方が優先度が高いのである。南スーダンには交戦権のない自衛隊を平気で送り込んだのだから「中国漁船警備艇が発砲してきたらどうする」などという議論は起こらないはずなのだが、漁船警護の方が現実的な衝突の度合いが高いので、議論もしないのだろう。

中国が太平洋への出口を求めているのは確かなようだが、これはアメリカが南シナ海を我が物顔で航行することに対する対抗措置なのではないかと思える。相手国側の視点に経つと、アメリカはかなり「悪の帝国」的な側面がある。最近でもトランプ大統領が「ベネズエラは混乱しているから軍隊を送るかも」などと発言し、ベネズエラや周辺国の態度をかなり硬化させた。攻め込むと言われて喜ぶ国はないのだが、そういうことを平気で言ってくる国なのである。

さて、中国は世界経済に組み込まれており、第三次世界大戦を引き起こす動機はあまりないということはわかった。もしそれでも攻めてくるという人がいるならば、その人に理由を説明させればよい。最近では櫻井よしこ氏のように、日本には所有者がわからない土地が九州ほどの大きさもあり、それが中国に根こそぎ買われてしまうなどと言っている人もいるが、よく考えれば所有者が分からない土地は誰も買えないのだから、言っていることがでたらめではないにしても大げさだということがわかる。

ここまで考えると中国ができるだけ安価に太平洋への入り口を確保するためには、アメリカと直接手を結んでしまうのがよいということがわかる。むしろここで問題なのは、アメリカがわざわざ東太平洋を権益化しようとしているのはどうしてなのかという問題だろう。フロンティアがなくなりハワイまで版図を拡大したという事情はあるにせよ、太平洋を抱えている意味は実はあまりなさそうだ。韓国もお金がかかるばかりで特に特殊な利権があるわけではない。

アメリカにはもはやわざわざ高いお金を払って日本や韓国を防衛してやる必要はない。つまり、アメリカが中国と直接交渉して東太平洋の管轄権(本来そんなものはないのだが)を与えたとしても、取り立てて違和感はないだろう。だが、中国とアメリカが手を結び、日本の防衛から手を引けば日本は自力で国を守らなければならなくなる。少なくともイニシャルではかなりの資金が必要になるだろう。この「ディール」で一番困るのは実は日本なのだ。

一方、北朝鮮は気が狂った金正恩によって支配されており、追い込まれたあげく原爆をぶち込むのではないかという懸念はある。だが、日曜討論で専門家の話を聞くと、どうやら金正恩はそこまで気が狂っている訳ではないらしい。アメリカとの全面的対決を巧みにさけつつ、自分たちの軍事技術をアピールしている。

北朝鮮ですらミサイルを開発したり軍隊を稼働するためにはお金が必要なので、闇雲には攻めてこない。またアメリカも石油のようなうまみがないので北朝鮮に軍隊を送るようなことはしないはずである。

今専門家が恐れていることは2つあるらしい。1つは日本に向けて発射ができる程度の核爆弾を残したままでアメリカが交渉に応じてしまうという「デカップリング」だ。これが起こる可能性は低くはないようである。もう1つは北朝鮮が持っている核爆弾の技術をテロ集団などに売って技術のマネタイズをするというものである。

こうした現実の懸念をしっかり見つめるには、戦争には金がかかるということを理解した上で、冷静に議論する必要がある。

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