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前原民進党に投票するというのはどういうことなのか

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今回は前原誠司衆議院議員が新しい民進党の代表なったと仮定して、前原民進党に投票するというのはどういうことなのかということを書く。もちろん私見が入っているし未確認の情報も多いので信頼する必要はない。が、一応過去の発言などを読んで構成した。いろいろと忘れていることが多いのだ。

前原さんのポリシーは一貫している

前原さんの過去の発言には一貫性がある。前原さんはアメリカのジャパンハンドラーと呼ばれる人と仲が良く、アメリカで講演活動もされている。アメリカとのパイプが太いことは、北朝鮮情勢が緊迫化するなか、肯定的に捉えることができるかもしれない。

例えば、前原さんは過去に「日本の軍事産業を武器市場に積極的にアクセスさせるべきだ」と主張している。つまり、ジャパンハンドラーの人たちの主張を日本で実現するためのリエゾンになっているのだ。大げさに「CIAの工作員である」というようなことをいう人がいるのはそのためである。同じように見られている人には長島昭久衆議院議員がいる。この人も憲法改正論者だ。

ジャパンハンドラーと呼ばれる人たちは、軍事産業を儲けさせるためにアメリカを戦争ができる体制にしておきたい人たちだと言え、必ずしもアメリカそのものではない。そのためには同盟国にシンパとなる政治家を抱えておく必要があるのだろう。

前原さんは、憲法第9条についても踏み込んだ発言をしている。これは特に隠された野望というわけでもなくご本人のサイトで堂々と主張している。つまり、首相の権限を強くしてアメリカと軍事的に協力できる体制が作りたいわけである。主な首相は首相公選と一院制であり、首相の権限強化と自衛隊の正規軍化だ。一方で、世界情勢が平和を希求するのは「単なる理想主義で全く受け入れられない」としている。

これが「現実的な歴史観に沿った国家観」なのか「単なるスポンサーを引き付けるためのポーズなのか」というのがよくわからないというのが正直な感想である。

アメリカの軍事産業が潤うためには常に敵が設定されていなければならない。この地域での敵は中国だ。つまり、ジャパンハンドラーの人たちの主張を正当化するためには、中国がアメリカに対抗して世界の覇権を握ろうとしているというストーリーが必要だし、世界平和に向けてみんなが努力しているという図式はあまり好ましいものではない。

さらに付け加えるならば、アメリカの軍事産業が潤うことが政治的目標なのだから、日本の国力を上げたり、平和外交に力を入れることはポーズとしての意味はあるかもしれないが、あまり意味がない。つまり、子育て支援をして国力を高めたり、競争的な産業を作って日本を経済的に世界で戦える国にするということには力を入れない可能性がある。できればそういうことにお金をかけずに、アメリカに貢献する国を作った方が都合がよいからだ。

安倍政権にとって経済政策とは「増税しないためのいいわけ」程度の意味合いしかない。選挙に有利だからである。だからアベノミクスにはどこかおざなりさがある。一方、前原さんのみならず、民進党右派の人たちの経済政策がどこかおざなりなのは、日本を植民地的に見ているという理由によるものなのかもしれないと邪推してみたくなる。

アメリカとは何か

さて、一番の懸念はジャパンハンドラーと言われる人たちが日本を武器産業の顧客程度にしか見ておらず、いわば植民地の総督のような視点で日本を見ているという点にあると思われる。が、それ以外にも懸念はある。

つまり、ジャパンハンドラーがすなわちアメリカなのかという問題である。オバマ大統領は少なくとも表向きは軍事ではなく外交によって世界の問題を解決したいという理想主義的な政策を推進していた。トランプ大統領は全く反対に利己的な理由からアメリカは世界の警察官をやめるべきだと言っている。

冷戦期にはソ連がアメリカを攻撃するかもしれないという潜在的な脅威があったが、市場が一体化してしまったために、大規模な戦争をして世界経済を混乱させる動機はない。にもかかわらずアメリカの軍事産業が冷戦期のように軍事産業が予算を獲得し続けるためには、ある程度対立をでっち上げる必要がある。つまり、いわゆるジャパンハンドラーはアメリカそのものではないと言える。

このことは、日本の防衛政策を考える上では実はとても重要な視点ではないだろうか。アメリカは太平洋の覇権から解放されたがっているかもしれない。すると中国が覇権を握ることになり、韓国、沖縄、グアムなどに基地を置いておく理由はなくなってしまう。日本はある程度アメリカの軍事政策にフリーライドしているために(核兵器は持っていないが、アメリカの核の影響下にある)日米同盟への過剰な期待は視界を曇らせる可能性が高い。

例えば、安倍政権はアメリカから高価なミサイル防衛システムを買おうとしているが、これは却って日本の軍需産業の空洞化を招くかもしれない。日本は技術開発には関与せず、単なるアメリカのお客さんになってしまうからである。アメリカのセールスマンであるトランプ大統領は喜ぶかもしれないが、これが国益に叶うのかという議論は必要だろう。だが、前原民進党がこれをチェックすることはないだろう。

前原さんの従米の度合いは安倍首相よりも強い。が、どちらもアメリカと中国が直接結ぶ可能性を全く失念している。実は日本には憲法上制約からどのくらい協力してくれるかわからない。そんな国と結ぶより、一党独裁で決断が早い中国と結んだ方が手っ取り早い。米中が直接手を結ぶというのは日本にとっては悪夢以外の何物でもないのだが、少なくとも打ち手を考えておく必要はある。

政権を取った時、共産党は邪魔になる

前原さんは共産党との共闘には否定的である。これについて深く考える人はおらず、単に「共産党が嫌いなんだろう」と考えがちである。しかし、過去の発言をみると、実は軍事的な拡張と繋がっていることがわかる。特に政権をとった時には、中国を敵視して軍事的に拡張しなければならないので、軍拡路線に反対する共産党は邪魔な存在だ。

仮に前原さんの思惑通りに民進党が政権を奪還した時に、共産党や社会党のせいで、前原さんの従米的な政策を邪魔する可能性が高い。前原さんは菅政権時代に「日本の武器輸出を解禁したい」という方針を主張していた。これが政権に取り入れられなかったのは社会党の反対によるところが大きいのだそうだ。つまり、アメリカの利益に沿って行動するためには政権に共産党がいては邪魔なのだ。

親米・従米路線が悪いわけではない

このように書いてくると「従米は戦争への道である」という理由でこの人はこんな文章を書いているのだなと思われるかもしれない。が、政治家が特定の産業のために働くというのは必ずしも悪いことではない。特定の国の利益のために結ぶのは問題だが、アメリカの場合は仕方がないかもしれない。日本には親米の政治家が大勢おり、これを否定することは、残念ながらできない。

問題なのは、そういう意図を隠している点にあるだろう。日本の左翼運動というのは、多くの場合反米運動になっている。原子力発電所はアメリカの思惑によって日本に設置されているのだし、反戦運動も反ベトナム戦争運動が源流の一つになっているのだろう。これは反米というよりも、アメリカによって日本の意思決定の幅が狭まっていることに対する反発だと言える。

つまり、従米路線を取ること自体は、有権者の支持さえ得られれば必ずしも悪いことではないのだが、支持者は自分たちで集めなければならない。

阿部知子議員などは「共産党との共闘しないというのはデマだ」などと言っているようだが、実は前原さんとコミュニケーションが取れていないか、知っていて党員を騙していることになり、罪が重い。

これまでも「あれ、民進党(民主党)がおかしいな」ということはいくつもあったが「安倍政権を崩壊させるためには戦略的に必要」などといって我慢してきた人は多いのではないだろうか。前原民進党の民進党支持者は引き続きこうした認知的不協和に苦しむことになるだろう。

まとめ

これまで書いたことは、もちろんこれは個人が、過去の発言などから想像しているだけなので、信頼していただく必要はない。だが、過去の発言から見る限り、支持者の期待とは全く違った方向に政策転換が図られるか、やはり党内左派をまとめきれずに迷走する可能性が高い。

さらに、軍事・外交以外の政策はおざなりになる可能性が高いだろう。八ッ場ダム問題を迷走させ、普天間の基地移転問題を途中で放り出したという「前科」があり、プロジェクト管理能力や現状把握力は必ずしも高くない。逆に党内反発を抑え込むために「思い切った措置」をとり、これが暴走する可能性が高いのではないだろうか。

前原民進党を応援するならこうしたことを踏まえた上で「それでも自民党政治を暴走させないためには抑止力として必要だ」という割り切りが必要である。

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