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北朝鮮はなぜアメリカにミサイルを打ち込むと息巻いているのか

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本日は北朝鮮はなぜグアムにミサイルを打ち込むと息巻いているのかを考えたい。この問いの直接の答えは簡単だ。北朝鮮はアメリカと休戦状態にあり、いつでもそれを破棄して攻撃をしかけることができる。アメリカもまた北朝鮮に対して戦争をしかけてもいい状態になっている。

ではなぜ朝鮮戦争は終戦しなかったのだろう。それは、戦争というものが「勝ったほうが条件を提示する」からだろう。ベトナム戦争は米中の合意で停戦したが米軍が撤退した。つまり実質的にはアメリカが負けた戦争だった。だが、朝鮮戦争ではアメリカが韓国の利権をあきらめなかったために、停戦が実現しなかった。

なぜアメリカが韓国をあきらめなかったのかはよくわからないが、太平洋全域を自分たちの覇権地域にしたかったからではないかと思える。今でも太平洋にはコンパクトによって結びついた半独立の主権国家がいくつかある。グアムには基地があり、沖縄にも基地を抱えている。これらの軍はハワイが管理していて、太平洋を自分たちの支配領域だと考えている様子がうかがえる。ベトナムと韓国はその淵に当たる。

だが、アメリカはこの地域の管理に軒並み失敗している。もっとも顕著な例は沖縄で、持て余した末に、基地の利権だけを残して日本に押し付けた。ついでに維持費を日本に払わせることにも成功した。もしアメリカの軍政下に置かれ続けていれば、今頃アメリカの州になっていたかもしれない。ハワイ州の現在の人口は140万人ちょっとで実は沖縄とそれほど違わないのだ。

ハワイは白人が大勢植民して「住民が望む」という形でアメリカに併合された。テキサスも同じ手法でメキシコから独立してアメリカの一部になった。しかし、沖縄はもともと人口が多かったためにこの様な工作がうまく進まなかったのではないかと考えられる。つまり、アメリカ人は植民地の管理経験がなく、その手法も稚拙なものだったのだと考えられる。

同じ様にアメリカは朝鮮半島の統治にも失敗した。その結果内戦状態になり最終的には中国の介入まで起こり戦争状態になった。大混乱の末に戦線は膠着し、結局南北2つの国ができた。

戦線が膠着したのは、同じ様な規模の軍事力が対峙したからだと考えられる。戦争技術は西側勢力のほうが優れていたが、地の利という意味では中国のほうが有利だった。

では同じ様に分断国家であったベトナムはどうだったのだろうか。ベトナムと朝鮮半島には幾つかの違いがあった。朝鮮半島では民衆は政府を組織せず、ソ連の傀儡とアメリカの傀儡が政府を作った。だが、ベトナムの北部ではある程度自主的に社会主義の政府が作られた。のちに南部にフランスが入り込み植民地を再獲得しようとしたり、アメリカが傀儡政府を作った。この南ベトナムをめぐる戦争がベトナム戦争だった。

ではなぜ北朝鮮には自主政府が作られなかったのだろうか。これについてはなかなか答えがないらしいのだが、識字率の違いがある。1945年の朝鮮半島の識字率はとても低かった。だが、北ベトナムでは識字率向上の運動が起こる。

ベトナムはもともと中国の支配下だったので知識階級は漢文を使っていた。フランス人がアルファベットを持ち込むのだが、知識階層にはなかなか受け入れられなかった。日本の知識層がひらがなだけで文章を書く人を下に見た様に、ベトナムの知識層もアルファベットだけで文字を書く人を軽蔑したのだろう。

日本は19世紀に独立を保った数少ないアジアの国だ。ベトナム人は日本とベトナムの違いについて考えたようで、実際に人を派遣して日本の制度を学んだ。そこで学校の制度や識字率に注目したようである。つまり、知識階層だけが文字が読めてもダメで、国力を向上させるためには大衆が文字を読むことができるようにすべきなのだということを学んだ。そこで徐々に識字率向上運動がおこり1945年の独立時には識字率を100%に上げようという運動が起こったというわけである。

南側の識字率がどういう状態だったのかはわからないが、反共の砦となることだけを目的に1955年に成立した。国民の教育はあまり重要視されなかったのかもしれない。結果的にアメリカは南ベトナムを影響下に置き続けることはできなかった。

朝鮮半島の識字率はもともと低かったのは、エリート階層が学問を独占していたという歴史があるのだろうが、日本人も朝鮮人の識字率についてはあまり意識しなかったのだろう。第二次世界大戦後、アメリカとソ連は朝鮮人は自治ができないだろうと考えた。識字率が低すぎたことも原因になっている。その結果、半島を全体を巻き込んだ大混乱の末に南北に分断されることになった。大韓民国が経済的に成長するのは、識字率が上がり軍政がなくなって以降なので、庶民階層が文字を読めるということが経済発展に対してどれほど重要なのかがよくわかる。

北朝鮮は社会主義国であり、国の原理をすべての国民が理解しなければならない。だから、識字率自体は高いものと思われる。公式には100%近い人が文字を読めるそうだ。しかし、日本時代には識字率が低く、知識階層が解体された国なので、自分で考えることができる教育というものが行われていない可能性はあるだろう。あれほどの苛烈な独裁体制にありながら、デモや社会運動が起こらないのは、もしかしたら文字は読めても独自で考えるという文化が全くないからなのかもしれない。

普通の国なら国力を増強するために国民の教育に熱心に取り組むところなのだろうが、外からの情報を入れると北朝鮮の体制が崩壊してしまう可能性がある。結局、国力が増強しないのでミサイルに頼るしかなくなってしまったと考えられる。一方で国民に考える力を与えなければ体制自体は維持できる。一方、ベトナムは自主的に社会主義を受け入れたために、ドイモイという革新運動が起こり市場主義経済を取り入れた。もともとは分配経済をいやがった農家の人たちが始めた運動なのだそうだ。ある程度国力が付くと、軍事力だけには頼らなくても済むようにになる。

皮肉なことに、アメリカに植民地運営のノウハウがなかったことと、日本が識字率を高める努力をしなかったことが、北朝鮮が暴走する理由になっていると考えることができる。日本は決して単なる被害者ではないのだ。

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