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金正恩がミサイルを撃ち込んで破壊する物は何か

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南スーダンの日報問題についての閉会中審査を見た。テレビでは中継されずネットでの中継だったが単に目立ちたいだけの質問者(例えば青山さんみたいな)がいなかったので、却って落ち着いた議論だったかもしれない。当初から予想されていた通り「実は稲田さんや安倍さんも関わっていました。ごめんなさい」となることはなかった。野党もそれほどの戦略はないようで、単に小野寺さんの誠意に期待し、それが裏切られたといって怒っているだけであった。

「誰の言っていることを正しい真実として認定するか」という議論なので数が多い方が勝つに決まっている。さらに南スーダンへの自衛隊派遣やその管理が妥当なものだったのかという議論もなかったので、議論としては全く無駄な1日だったと言って良い。

政府側は特別監察は行ったからその内容が全てであって、その詳細は国会では説明できないと言っている。つまり、大臣がコントロールできる特別監察を行ってしまえば国会での説明は必要ないことになる。すでに政府・自民党による国会の形骸化が起きているのだ。

だが、この国会の形骸化は思わぬ帰結を生むことになるだろうと思われる。何かが起きて国民がパニックを起こすとそれを説得したり説明する手段がなくなってしまうのである。

折しも北朝鮮がグアムを攻撃するぞとアメリカと日本を恫喝し始めた。島根・広島・高知の上空を飛ばしてグアムを攻撃するというのである。北朝鮮は核爆弾の小型化に成功しているという話も伝わっているので、有事の際には日本が無傷で済むということはありえないだろう。

沖縄には米軍の基地もあるので、全く被害がないということは考えにくい。加えて、トランプ大統領は日本と韓国で大勢の死者がでても北朝鮮を攻撃をするかもしれないという観測もある。「トランプは日韓で多数が死ぬと知りつつ北朝鮮に「予防攻撃」を考える」というのは確かにセンセーショナルなタイトルだがないとは言い切れない。トランプ大統領はアメリカファーストな上に「Twitter外交」の稚拙さはすでに随所に現れている。

戦争とは話し合いなどの合理的な手段によって問題が解決できない状態なのだが、同時に状況がどうなるかの予測が極めて難しくなることを意味している。このような予測がつきにくい状態をカオスと呼んだりもする。こうした状態ではコミュニケーションが普段以上に重要になる。北朝鮮有事の際には日本とアメリカの連携が極めて重要になるだろう。だが、このコミュニケーションはかなり障害されているようである。

南スーダンの事例は、南スーダンで起こりうる想定外の事象に国会がどう対応するかという意味ではパイロットケースになっていた。結局、政府はうまくこの状況に対応できず、野党は政局のためにこのケースを利用しようとした。南スーダンの状況が国家的なパニックにならなかったのは、遠く離れていて日本に直接の危害が及ぶ可能性が極めて低かったからである。

だが、日本とアメリカの関係はかなりギクシャクしている。オーストラリアでオスプレイが墜落した。日本政府は事故の状況がわかるまでは日本でオスプレイを飛ばさないで欲しいと要請したのだが無視されてしまった。そればかりではなく、沖縄で起きた事例についてもまだレポートがないそうだ。つまり、米軍は日本政府の要請をまるで無視しているのだが、安倍政権は「日本とアメリカの同盟関係は揺るがないものだ」という嘘をついているのだ。

こうした、日本とアメリカの関係は北朝鮮情勢についての分析にも影を落としている。しかし、少なくとも昨日の時点で小野寺防衛大臣は「差し迫った状況はないので仮定の事例については話せない」というような意味のことを言っていた。想定がないのか、想定はしているが国民には話せないのかがよくわからない。ただ言えることは北朝鮮は名指しで日本の領空を侵犯すると言っているのにこれを「仮定のこと」としていることだ。

一方で「グアムに攻撃があったら日本が集団的自衛権が行使できる」というような意味のことも言っており、こちらは朝日新聞に噛みつかれている。中途半端な情報が一人歩きし、集団的自衛権というNGワードのみが叩かれるという不健全な状況が生まれている。明らかに納得していない国民がおり、そうした人たちに支持されているメディアがある。

こうした状況が生まれるのは、日本の制約は時の政権が勝手に解釈を変えられる憲法ではなく、アメリカの顔色なのではないかと思われる。アメリカの顔色を伺って日本の領土領海への攻撃を許したとすれば、多分これまで以上の隠蔽工作が行われるはずだが、これを有権者が許すとは到底思えない。一方で安倍首相は当時の中谷防衛大臣と一緒にこの地域に危機があれば日本が対応すると約束してしまっている。

日本はいま、安保法制の充実に取り組んでいます。実現のあかつき、日本は、危機の程度に応じ、切れ目のない対応が、はるかによくできるようになります。この法整備によって、自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟は、より一層堅固になります。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらすでしょう。

なんとなく、アメリカ人は日本人を蔑視しているので、沖縄の基地を我が物顔で使っているのだというように思えてしまうのだが、もしかしたら別の事情があるのかもしれない。

グアムと沖縄は地理的に近く競合関係にあるように見える。グアムはアメリカの領土なので問題解決がしやすいが、沖縄は日本に遠慮してしまうとグアムのような活動はできない。「だったら統治しやすいグアムのほうがよいではないか」という話になりかねない。このように見ると、ある程度在沖米軍の強硬な姿勢が説明できる。こちらも生き残りの為の闘争であり、合理的な説得は難しくなってしまうだろう。

すべてのことは予想にすぎないのだが、金正恩がミサイルを一発打ち込めばわかってしまうことである。安倍首相がいうように日米同盟は盤石かもしれないのだが、実は日本を無視して頭越しに状況がエスカレートして行く可能性の方が高いのではないだろうか。

いずれにせよ日本の政治が政局に夢中になっている後ろで、かなり厄介な状況が進行していると見て間違いがないだろう。南スーダン処理を見ているとこのことがよくわかるのだ。

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