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自衛隊の南スーダン派遣をめぐる三つのストーリー

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ここに3つのストーリーがある。多分どれもいくばくかの本当と本当ではないことを含んでいるのだろうが、受け取る人はお好みのストーリーを見つけて、違う主張を繰り返す人たちを罵倒すればいいのではないだろうか。

ストーリー1 永田町・官邸

中国は野蛮でバカな国だ。でも、国際社会では中国の存在感は増すばかりである。これも日本が敗戦国であり国連の常任理事国になれないからだ。アフリカに貢献するところを見せれば常任理事国入りのキャンペーンに有利かもしれない。とはいえ、自分で国会を説得する力量はない。幸いなことに民主党政権時代に決まった南スーダンへのPKO派遣があるのでこれを利用してやろう。そのためには憲法の縛りが邪魔だ。頭のいいやつに理屈を考えさせて、憲法を無視して駆けつけ警護ができるようにした。こうなるとPKO参加国と同等な活動ができるので、みんなから尊敬してもらえるかもしれない。

だが、南スーダンの事情は悪化するばかりだ。政府軍と反政府軍がお互いに略奪を繰り返すなど、わけがわからない。でもここで逃げ出してしまえば国際社会から非難されるだろう。今検討している駆けつけ警護も否定されかねない。(安全保障関連法は、衆院で2016年7月16日、参院では同9月19日にそれぞれ本会議採決された。

 安全保障関連法は、衆院で昨年七月十六日、参院では同九月十九日にそれぞれ本会議採決された。

当時の党派名で採決時の対応をみると、衆院では、民主の大半と維新、共産、社民の野党四党が、違憲の疑いがある法案の採決そのものに抗議して退席。生活は欠席した。野党では次世代だけが賛成した。(東京新聞

民進党の蓮舫や社民党の福島みたいなバカな女どもがキーキーと反対している。だから女は嫌なんだ。感情的にキーキー叫ぶ。俺は世界から尊敬してもらいたい。これまで力強いリーダーという印象を時間をかけて作ってきたのだ。そのために金も惜しまなかった。これは俺のロマンの問題だ。

いずれにせよ、南スーダンは安全ということにしておかねばならない。国民はバカだから南スーダン事情なんかに興味を持たないだろう。だが、現場の隊員からは悲鳴のような日報が届く。自分の頭で考えられない稲田は「どうしましょう」と泣きついてくるばかりだ。俺は知らない。現場でうまくやればいいんだ。俺は忙しいんだ。だから、この件については報告をされていないことにすることにした。知らないふりをしよう。南スーダンはうまくいっているのだ。

法案は通った。あとは俺のやりたい放題だ。実績は作ったし、南スーダンで何かあったら大変なことになる。成果があったことにして逃げ出してしまおう。国民にはこう報告しよう。

「南スーダンの国造りが新たな段階を迎える中、自衛隊が担当している首都ジュバでの施設整備は一定の区切りを付けることができると判断した」(時事通信

でも逃げ出したことは確かだ。そもそも偉大な日本のリーダーになるという俺のロマンに協力しない野党が悪いのだが、存在感は保たなければならない。ここは金で解決しよう。

アメリカ6カ国の飢饉(ききん)対策として、総額2600万ドル(約29億9000万円)の緊急無償資金協力を決定した。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)からの撤収を決めたことで、今後は日本が本格関与するPKOはなくなる。安倍政権の「積極的平和主義」をどう具体化するか、腐心している。(毎日新聞

ストーリー2 市ヶ谷

私は有能な防衛大臣だ。統合幕僚本部は協力的だが、現場の陸上自衛隊は筋肉バカの集まりである。そのバカが「現場では戦闘が起こっている」と泣きついてくる。わかってんのバカ?戦闘行為に関わったなんてことになったら、私のメンツが丸つぶれじゃないか。憲法違反なのよ。そんなことはあってはいけないの。

そうだ、なかったことにしよう。何か目の前で言っているは。「ああ、私には意味はわからない」。耳を塞いでしまおう。こんな時は何を考えればいいのかしら。心の中で歌でも歌えばいいのかな。ああ、通り過ぎた。

 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の部隊が作成した日報が、「廃棄した」とされた後に陸自内で見つかった問題で、2月中旬にこの問題の対応を協議した防衛省内の幹部会議の数日前にも、陸自側から稲田朋美防衛相に陸自内の電子データの存在が報告されていた可能性があることが分かった。(ハフィントンポスト)

これで、問題はなかったことになる。あとで、陸上自衛隊が何か言ってきたら、彼らが隠したことにして、陸上自衛隊の幹部に責任を押し付けて詰め腹を切らせよう。そうすればうまく行くわ。私の活躍で陸上自衛隊が隠蔽したのを暴いたの。いろいろ入ってくる人は批判するけど状況を知らないのよ。

 稲田朋美防衛相は25日午前の参院予算委員会閉会中審査で、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題について「様々ご批判はあるが、(防衛省・自衛隊の)シビリアンコントロールは効いている。統制は効いている」と述べた。(朝日新聞

私がいなかったら文民統制は果たされなかったんだわ。私は偉大な仕事を全うして、後任に防衛大臣の仕事を譲ってあげるの。今後は党の立場から国民に貢献するの。記者が何か騒いでいるわ。私には意味がわからない。だって、私は素晴らしい防衛大臣なんだもん。これからも日本のために活躍するんだもん。「あんな人たち」に邪魔されるわけにはいかない。だって私は素晴らしい政治家なんだから。

稲田大臣は結局「事務次官までで情報が止まっていた」と記者会見したが、自身の隠蔽への関与は認めなかった。管理ができていなかったことだけを理由に内閣改造の前に辞任した。

ストーリー3 南スーダン

2016年7月にジュバで中国人が2名殺された。難民キャンプの警護に当たっていた装甲車に砲弾が当たったのだ。南スーダンでは売るに売れない石油が豊富にある。この石油と武器が交換されているらしい。

このままではやられるのだが、多国籍軍のために指揮命令系統がはっきりしない。その上、内戦になってしまうと国連のPKO活動自体が成り立たなくなってしまうために、下手に政府軍や反政府軍に手出しができない。

そんな中で生命の危機を感じた現場の隊員はすがるような気持ちであえて日報に戦闘状態という文字を書き、撤退も示唆した。

防衛省は七日、当初は廃棄したと説明していた陸上自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報を一部黒塗りで開示した。日報は、陸自が活動する首都ジュバ市内で昨年七月に大統領派と反政府勢力の「戦闘が生起した」と明記し、「市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意が必要」と報告。現地部隊は戦闘の激化を深刻に受け止め、PKO停止の可能性にも言及していた。(東京新聞

戦闘状態になればPKOを派遣する根拠が崩れるので、政治家が大騒ぎすることはわかっている。でも目の前で起きている惨状を目の当たりにすれば、もうそんなことは言っていられない。

12月になっても状況は変わらない。アメリカの主導で武器の流入を少しでも食い止めようという話があったが、日本は採決を棄権した。いったい何を考えているんだ。本当に南スーダンの状況がわかっているのか?

国連安全保障理事会は23日午前、南スーダンへの武器禁輸決議案を否決した。米欧は民族間の対立が虐殺や戦闘激化につながる可能性があるとして、武器の流入を食い止める武器禁輸を実施したい構えだったが、日本など8カ国が棄権に回り、必要な得票数に届かなかった。日本は国連平和維持活動(PKO)で現地に展開する自衛隊への影響回避を優先した。

安保理では全15カ国のうち9カ国以上が賛成し、中ロを含む常任理事国5カ国が拒否権を行使しなかった場合に決議が採択される。今回は反対票はなかったものの、中ロのほか、非常任理事国でも日本やマレーシア、セネガルなどが棄権した。米国のサマンサ・パワー国連大使は採決後、棄権した理事国を「歴史が厳しい判断を下すだろう」と非難した。(日経新聞)

陸上自衛隊の幹部は状況をわかっていたが、統合幕僚監部と大臣に対して戦ってはくれなかった。それどころか、陸上自衛隊だけが情報を隠蔽したことになり、陸上自衛隊の幹部だけが更迭されそうになっている。命を張った上にメンツを潰されて、詰め腹を切らされたのだ。仲間の名誉は踏みにじられた。我々の名誉は踏みにじられてしまったのである。これを許すわけにはいかない。仲間の名誉はなんとしてでも俺たちが守らねばならない。危険を冒したのは俺たちなのだから。

南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報を陸上自衛隊が廃棄したと説明しながら保管していた問題で、防衛省は特別防衛監察の結果を28日に公表する方向で調整に入った。(時事通信

日報の問題を巡っては、組織的な隠蔽があったかなどを調べる特別防衛監察の結果が28日にも公表されます。防衛省の事務方トップである黒江次官と陸上自衛隊トップの岡部陸上幕僚長はこの問題の責任を取って、ともに辞任する意向を固めました。(テレビ朝日

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