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関税に関するアメリカの身勝手な申し入れ

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それはあまりにも一方的な物言いだと思う。アメリカ合衆国通商代表のライトハイザー氏は「日本は一方的に譲歩すべきだ」と発言した。安倍首相がまた妥協してしまうのではないかと考えて、調べてみた。結論からいうと、妥協の余地は少ないように思われる。が、アメリカにとってはあまり賢い選択とは言えないと思う。

ライトハイザー代表の発言は、日本がアメリカ産の牛肉に対して38.5%の関税をかけたことを念頭に置いていると見られている。オーストラリアとの間にはEPAがあり、関税が次第に引き下げられることになっている。つまり、アメリカはこの点でオーストラリアとの競争に負けているのである。オーストラリアとの関税協定にはセーフガードもあり、日本の畜産業者が急激に圧迫されるようなことがあれば関税が元に戻る仕組みが確保されている。日経新聞の記事によると、オーストラリアからは牛肉よりもワインの輸入が伸びているそうである。

本来関税は国内消費者には不利に働くので、なくすのが望ましいと考えられている。しかし、国内政治的には妥協だと見られるため、政府は見返りを求めるのが常だ。オーストラリアには顕著な自動車産業がなく自動車や家電などの関税をなくして行くことを決めた。お互いに得意分野を分けることでいわゆる「win-win」の関係が築けたというお手本のような貿易協定なのだろう。また同時に知的財産や投資のルールも定めた。

一方、アメリカは「一時的でもいいから一方的に譲歩しろ」と迫っている。ライトハイザー代表は弁護士で「何も失うものがないのになぜ関税を撤廃しないのかわからない」と主張している。議会や国民が「聞きたい歌を歌っている」のだ。

このニュースに注目したのは、安倍首相が元来持っている「弱腰さ」を懸念しているからだ。加計学園問題や北方領土交渉でもわかる通り、安倍首相は自分より強い相手に対して一方的に妥協してしまうところがある。強い人や憧れている人には何かをしてやらないとならないという強迫的な気持ちがあるのではないだろうか。加計学園の件では多分政治生命を危うくするような働きかけまでして「頭が上がらない」加計氏の希望を叶えてやっている。

一連の安保法制もアメリカからの強力なリクエストに耐えかねたからだという観測がある。報道特集で田原総一郎氏がこう言っている。

安倍首相から「実は憲法改正する必要がなくなったのです」と聞いた。「集団的自衛権の行使を決めたらアメリカは何も言わなくなった」「多分満足しているんだと思う」

確かに安倍首相の気持ちは穏やかになっただろうが、このために支払った代償は憲法の無効化と国内の深刻な政治的分断だった。だが、安倍首相にとってはアメリカはどうしても妥協しなければならない相手であって、国内の有権者の優先順位はその下でしかないのだろう。だが、冷静に考えると憲法改正という自らの政治的主張すら危うくしてしまったのだと考えられる。安倍首相には正常な判断力はないので直ちに退陣すべきだ。

だが、皮肉なことに日米貿易協定は麻生副首相マターだ。安倍首相に近い世耕経済産業相が暴走すると心配なことが起こりそうだが、安倍・麻生は緊張関係にあり、なくなったはずの派閥だけが安全装置になっていることがわかる。

これに加えてアメリカでも「日本は一方的に妥協すべきだ」という意見はニュースにはなっていない。検索するとわかるのだが、日経新聞とジャパンタイムスの記事が見つかるだけである。

実はトランプ政権は、メキシコやカナダとの貿易協定の見直しを計画している。従来、包括的に交渉していたのだが、今回は別々に行うのだそうだ。これだけでも大仕事になるだろう。ただし、トランプ政権の政策はほとんどが失敗しており、この一方的でわがままな貿易協定が通る見込みはそれほど高くなさそうである。あれほど熱心に「メキシコとの間に壁を作る」などと言っていたのだが、ソーラーパネルを設置してメキシコが負担する費用を軽減してやるなどと言い出している。費用の捻出ができず、もちろんメキシコがそれを払うはずなはい。トランプ大統領の交渉力は実は大したことはないらしい。ニューヨークで他人から不動産を掠めとるように国際交渉はできないのである。

畜産が盛んなカリフォルニアのロスアンジェルスタイムスは日本市場単独についての記事を出していないようだ。日本は農産品の市場としてはそれほど期待されていないのかもしれない。ただし、TPPから一方的に離脱したことを言及した記事はあるので「一方的にわがままな交渉をしても通用しないのではないか」という懸念は共有されているように思える。

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