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安倍政権はどうやって国を危うくしているのか

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山口敬之という人が世間を騒がせている。この<事件>を見ていると、安倍政権がどうやって国をめちゃくちゃにしているのかということが良くわかる。
犯罪行為があったかどうかはともかく、山口さんが詩織さんという駆け出しのジャーナリストを自らの欲望を満たす道具に使ったことは間違いがなさそうだ。もともと「ビザをなんとかしてやるから」といって誘い出したようだ。海外留学してそのまま働きたい人にとって在留資格はかなり深刻な問題だ。スポンサー探しがとても大変なのである。
そもそも、ビザを発給するのは会社であって山口さん個人ではない。つまりもともと山口さんは、何かの権威を使って他人を利用することをなんとも思わない人である可能性が高いわけだし、同じような手口を他でやっている可能性も完全には否定できない。これが最高権力と結びつくことで、極めて深刻な疑念が生まれている。
TBSがどうして山口さんに「辞めて頂いたのか」ということはよくわからないのだが、他にも被害者がいる可能性もあるわけで、調査せずに黙っているというのは会社としての社会的責任を放棄した行為だと言える。最近やっと山口さんの名前を出して報道したが、まるで他人事であり、TBSの名前を使って他人を貶めていた可能性については触れてもいないし、調査するつもりもないようだ。下記はデイリースポーツからの引用。

この事象をどう受け止めているかについて、武田社長は「(詩織氏が)検察審査会に申し立てたというのは承知しております。事実が明らかになっていくことを期待したい」とした。山口氏が同局に在籍していた時期の件であることも認め、「当時、警察からの問い合わせはありました」と振り返った。問い合わせの内容については、捜査に関わることとして明かさなかった。

 これとは別に局として事実関係を把握しようとしたというが、「警察から詳細は知らされませんし、本人に事情も聞きましたが、詳細を語らずに彼が退職していったのが実態でございます。われわれは詳細については承知していない」(武田社長)としている。また同局は、山口氏は自己都合退職したとしている。

だが、この人はTBSを辞めた後も仕事には困らなかった。それは安倍首相を擁護する側に回ったからだ。安倍首相には自分が関わった人や心理的に共感している人に対して「ノー」とは言えないという特性がある。部下を使って逮捕状を差し止めたのではないかという介入疑惑が持たれている。
だが、安倍首相が直接手を下したのではないかもしれない。ここで出てくるのが忖度である。忖度とはもともと相手を思いやることを意味するわけだが、最近では別の意味を持ちつつある。それは曖昧な指示を出して、行為の責任を行為者に負わせるというものである。
加計学園問題でも首相補佐官に「加計学園は俺の大切な友達なのだ」と印象付け「手段は任せるからなんとか優遇しろ」と間接的にほのめかした可能性がある。首相補佐官が「首相のご意向だが直接はおっしゃれないから」と「気を利かせ」最終的には役所に責任を負わせるというわけである。もともと個人的に利便を図るということが不適切だと考えているからこそこういうことを行うわけだし、周囲にいる人も「これはまずいな」と考えている。山口氏の件も「直接の指示はなく」周りが勝手にやったことだという可能性がある。
周りにいる人も、首相の意向を汲んでいるうちに、なんだが自分までが偉くなった気分になるのだろう。詩織さんは二年間匿名で対抗したものの山口さんから恫喝されている。この文書を読むと「俺には権力がついているからな」と読める。権力側も一旦不公正な意思決定に手を染めてしまっているので、情報を隠蔽しようとする。結局、被害者が抑圧されるという現象が起きる。こうしたことは安倍首相のコントロールできないところで行われているわけだが、それを放置しているのは首相本人だ。
誰でも身内には「ちょっと優しくしてあげたい」という気持ちにはなる。これは人間としてはむしろ美しい属性なのかもしれない。しかし、権力者がそれをやってしまうと、周りに「他人を踏みつけにしてでも自分の欲求を満足させたい」という人が群がり、結果的に収拾がつかなくなる。今起きているのはまさにそれなのだが、結果的に毀損されるのは個人ではなく、行政の信頼性とか、法律の安定性といったシステム全体なのだ。長い時間かけて作られたものが破壊されると、それを元に戻すのはとても大変なのではないだろうか。
優しさがシステムを破壊してしまうという言い方もできる。が、詩織さんのケースを見てもわかるように、その優しさによって魂を殺されてしまうほどの傷を負う人まで出てきてしまうのである。