理屈にならない理屈で国民を騙しおおせると考える自民党の傲慢
菅官房長官が民進党へのブーメランを投げた。「獣医学部新設は民主党政権時代から始まっていた」から「安倍政権の意向ではない」というのだ。
だが、獣医学部新設が民主党時代に着想されたからといって加計学園が正当化されるわけではないということはちょっと考えればすぐに分かることで、これを理解するのに大した知性は必要としない。もし知性が必要なら、政治に専門的な知識のない僕は以下書くようなことは書けないだろう。
つまり、安倍政権はすぐにバレるような嘘をついているということになるのだが、それは「この程度で国民は騙されるだろう」と言っているのと同じことになる。国民が侮辱されているのである。
確かにNHKの報道によると、獣医学部の新設は民主党時代から始まっており、加計学園はリストに含まれていたそうである。つまり、獣医学部の規制にはどこかおかしいところがあった可能性があると。その<改革路線>を安倍政権が引き継いだ。それはそれで「いいこと」だったのかもしれない。
政権交代で利権構造が変化して均衡が破られた
しかしながらこれまでの議論でいくつかのことがわかっている。一つは安倍政権が特定の条件を後出しでつけることによって他の学校(京産大だそうだ)が参入できないように規制をかけたという点である。つまり、岩盤規制をなくすといいながら、新しい利権を作っていたことは明白だ。
もう一つは文部科学省の証言である。前川証言によると「農林水産省は獣医師の需給がどのようになるか」という見通しを立てないままだということがわかっている。京都では獣医師が不足しており、愛媛ではそうでないということもわかっている。つまり、そのまま議論をしていれば今治市よりも関西都市圏に学校ができていた可能性が高かったということになる。市場経済を歪めて利権を優先しているのである。
もともとの自民党の成り立ちを考えると、集団的な利益集団が均衡状態を作っており、新しい規制緩和はできなかったのだいうことが予想できる。民主党政権でこの利権構造が変化した。そこでそれを利用すれば、自分たちのところにより大きな利権を引き込むことができるということに気がついたのだろう。
もちろん民主党が「自民党が作っていた利権構造に食い込む」ことで新しい利権の獲得を目指していた可能性は否定できない。ゆえに民主党対自民党という構造が持ち込まれると「どちらが正しいかはよくわからない」ということになる。また、文部科学省が「抵抗勢力だった」ということも考えられる。つまり前川さんもそれなりの利権構造に乗っていてそれほど「イイヒト」ではないのかもしれない。
日本の政治には改革の継続性を担保する仕組みがない
だが、実際にここから学ぶべきなのは、実は日本の政治には改革の継続性についての重大な欠陥があるということだ。このままの利権構造を保持していても財政の均衡化は図れないことがわかっているので、これはかなり深刻度が高い。
長期政権が続くと集団間の利害が均衡して全く変化ができなくなる。かといって、政権交代が起こると今度は動いた均衡が別の政権によって悪意に利用される可能性があるということになる。本来なら政権交代は政治の私物化を防ぐために機能すべきなのだが、実際には私物化を促進するように機能しているのだ。これは政権と独立した機関による監査が適切に行われていないことで起こるのかもしれない。
継続性を監視できず、政局報道に終始するマスコミは責任を放棄している
もちろん独立した機関が公平性を担保すべきなのかもしれないが、実はマスコミには監視機能があるはずで、日本のマスコミが対立の中に入って「自民党が正しい」とか「自民党は間違っている」という争いに夢中になるということは、マスコミの責任放棄だ。Twitterのくだらない議論はそうしたマスコミの延長線上にあり、短文だから議論が深まらないというような話ではないのだ。