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消費者の生活防衛意識が高まる

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中古市場が伸びているという。この記事によると概算で1.6兆円ほどがリサイクルの売り上げなのだという。このうち9000億円近くをヤフオクが占め、メルカリも1200億円ほどの売り上げがあるそうだ。
ヤフオクとメルカリで1兆円を超えてしまうことになるので、IT技術が中古市場を活性化させているのは間違いがなさそうだ。もともと個人間売買はGDP統計には乗らなかったはずなので、顕在化したとしたら GDP統計も伸びているはずである。
そこで GDPの民間最終消費の推移を調べてみた。物の売買だけでなくサービスを含んでいるそうだ。

2011年は東日本大震災の起きた年なのだが、消費が落ち込んでいる。心理的な影響を大いにあるのではないかと思われる。一方で安倍政権が再登場した近辺には大きな伸びがあるもののその後伸び悩んでいる。安倍政権は「もはやデフレではない」と言っているのだが、この民間消費の伸びの停滞を説明できない。また、賃金が伸び悩んでいるから消費が伸びないのか、心理的な要因によって伸びが止まっているのかということも実はよくわからない。
少なくとも、リサイクル事業が伸びて今まで経済統計に乗らなかった個人間のやりとりが可視化されたという状態にはなさそうだ。ということは、個人消費の一部が中古市場に置き換わっているのだということが推測できる。
デパートで高級な服を買うのをやめて中古で済ませているというようなマインドの変化があるのかもしれない。それでも個人消費は300兆円を超えているので、1.6兆円というのはそれほど多い額ではない。が、業界によっては大きな影響を受けるものもあるだろう。
面白いことに、中古市場は均等に伸びているわけではない。実は「できるだけ安く買えて高く売れる」ところへのシフトが進んでいるのだ。
ある日、中古のMacをハードオフで8000円で見つけた。ところがこれをヤフオクで買うと3000円くらいで手に入る。これにプラスして送料が1000円程度かかる。つまり送料を加えてもヤフオクの方が安く手に入る。
しかしヤフオクに欲しいものがなくては書いたくても買うことはできないだろう。
使わなくなった(がまだ使える)地デジ用のアンテナをハードオフで500円で売ったところ後日3000円で売られていた。だいたい売値の1/3で買い取りますよということなのだが、ものによっては1/6の価格で買い取っていることになる。メリカリの手数料は10%であり、ヤフオクは8%なのだそうだ。総取り扱い量が多く、システムの操作をするのは売り手と買い手なので、手数料が安く抑えられるのだろう。この状態が周知されればヤフオクなどでものを売る人が増えるだろう。
冒頭の記事によるとブックオフなどが苦境に陥っているということなのだが、その理由は明白だ。ものすごい勢いで中古流通業界が整理されてしまっているのである。背景にはIT技術に抵抗がない若い世代が先に中古市場にシフトしているからなのだろう。
日本の小売流通はIT技術への取り組みが遅く効率が悪いことで知られている。こうした流通の不効率さは個人の取引によって解消されるのかもしれないのだが、その先にあるのは急速な価格破壊である。ECの発達も合わせると、業種によっては「店舗そのものが廃墟化する」ということになるのかもしれない。アメリカではショッピングモールの解体が急ピッチで進んでおり、これが数年後には日本に上陸するとも言われている。
いったん「みんなが中古市場を使っている」ということが周知されれば消費者は中古に流れる。新品は収益を確保しようとしてプレミアムに流れる。すると大衆層はそもそも新しい品物を買わなくなるのでさらにダウンスパイラルが加速することになる。が、新品の価格が下がるわけではない(むしろ上がるかもしれない)ので統計上はデフレとはみなされなくなるのだ。
多分、安倍政権下で民間需要の力強い伸びは起きていない。期待値だけで上がったか、民主党政権の成果がで始めた時に国民が見限ってしまったのかもしれない。が、国民はそもそも政治が明るい経済の見通しを示せるとは思っておらず、あまり期待もしていないのかもしれない。小売は投資を控えているので効率化も進まないのだが、一般消費者ベースではものすごい勢いで生活防衛意識が高まっている。
家電やアパレルなどで実感するのだが、消費者として知識を持っていればかなりいい時代だ。新品にこだわらなければ安い価格でいろいろと楽しめる。
例えばパソコンも特に最新である必要はない。一台の新品を買う価格で5台くらいのパソコンを所有することもできる。が、これは情報収集や購入にITが使える人限定だ。多分そうでない人たちは割高の価格で購入を余儀なくされるかそもそも買うのを諦めることになるだろう。
また洋服も「今何が流行しているか」という知識を仕入れれば、特に新品を買う必要はない。多分一番「痛い」のはGUあたりでトレンドを仕入れることだろう。ネットに様々な情報が出回っているし、人気投票を実施すれば自分の知識があっているかも答え合わせできるようになっている。
収入がなくても消費に関する格差を感じることはなくなっているのだが、情報が仕入れられないと損をする時代になりつつあるのかもしれない。