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ドイツ軍の兵士が暗殺計画を企てた容疑で逮捕された

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昨日はいろいろなショッキングなニュースが飛び込んできた。まずFBIのコミー長官がトランプ大統領に解雇された。詳しいことはわからないがトランプ大統領とロシアとの関係について調査していたものと言われている。大統領が捜査機関に手を突っ込んだわけで、あるいは米国史上稀に見る暴挙かもしれない。もう一つのニュースはドイツで兵士が逮捕されたというものなのだが、日本ではあまり報道されていないようだ。

その後NewsWeekがあらましを伝えた。ワッツアップというドイツのLINEのようなメディアで右翼的なグループを作っていたようだ。こういうニュースをみると、共謀罪を推進する人の中にはやはりオンラインチャットなども監視すべきではないかと考える人がでるかもしれないなあと思う。

日本語で報道されたのは、ドイツで「極右の男」3名が前大統領などを暗殺しようとして逮捕されたという短いニュースだけだ。普段のニュースにはメルケル首相しか出てこないので「あれ、ドイツにも大統領がいたのか」と思った人もいたかもしれない。一人はシリア難民に偽装しており「シリア難民が難民受け入れを推進する政治家を殺した」というショッキングな印象を与えようとしたものと考えられているそうだ。
BBCは少しだけ詳しく伝えている。逮捕されたのは兵士2名と学生1名だ。学生は自宅に武器を隠し持っていたのだという。
ドイツ語のテレビニュースショー(ターゲスシャウ)のウェブサイトを読むともう少し細かなことがわかる。機械翻訳なので不確かな点もあるがあらましは次のようなものらしい。
逮捕されたうち、学生の名前はマティアスFという。20代の兵士2名はフランスとドイツの国境付近に駐留していたようである。階級は中尉で名前をマクシミリアンTとフランコAという。フランコAはすでに4月に逮捕されており、2014年に人種差別的な修士論文を書いて落とされていたことがわかっている。詳しくはわからないものの、軍は人種差別的な思想を把握していなかったものと思われる。フランコAはシリア難民「デビッド・ベンジャミン」を偽装して難民キャンプに入り込んだ。その間軍務につけないのだが、それをマティアスFが偽装していたのだという。
例えば日本で自衛隊が任務についている間に犯罪集団に加わっていたとしたらすぐにバレると思うのだが、ドイツでは兵士が不在にしていても偽装ができたということになる。管理がかなりずさんなようだ。フランコAはアラビア語が話せなかったがこれは架空のストーリを作ってごまかしていたようである。つまり移民の管理もずさんだったのだ。
兵士二人は、単に移民排斥を目的としていただけではなく、ナチスドイツのメモラビリア(日本語では記念品と訳されるようだが)を持っていて「極右思想」に影響されていたようだ。だが、特定の極右組織に所属していいたという情報はない。日本語で情報を取ると「極右の男」と書いてあるので過激派の人なのかなと思ってしまうのだが、その辺りがよくわかっていないのである。決めつけるような書き方は却って危険かもしれない。
ドイツでこの件がセンセーショナルに取り上げられているのは、これだけナチスに対して厳しい教育を行っているにもかかわらず、軍に影響を受けた人がおり、それを軍隊が見つけられなかったという点にあるものと思われる。さらに難民審査もずさんで自国民ですら難民として登録できるということがわかってしまった。
ドイツが兵士の管理をゆるくしているのはナチスドイツ時代の反省によるものだとされている。ドイツの兵士は命令にそむく権利を保障されているのだそうだ。だが、それは過度な性善説に基づいており、軍部に過激思想に染まるような人たちが出てきたとしても排除できないということを意味する。ドイツの国防政策を根本から揺るがすことになりかねない。
中道右派に属するメルケル首相は2017年9月に行われる選挙に勝利して4期目の首相を務めることが期待されている。フランスのような目立った極右勢力の対抗勢力はなく(それでも地方選挙ではある程度躍進したようだが)、平等や格差是正を訴える左派と政権を争うものと考えられているとのことである。経済が比較的好調なドイツだがそれでも格差は問題になっているのだ。
ガウク前大統領は東ドイツ出身の元牧師で、東ドイツ崩壊時にシュタージの持っていた情報を管理する責任者を務めたそうだ。現職の大統領が汚職問題で退任した後を受けて大統領に就任したが高齢を理由に一期しか大統領を努めなかったそうである。
日本とは状況が違いすぎるのであまり我々に関係のある情報はないのだが、内心を把握することの難しさが挙げられる。ナチスの思想にかぶれる人たちが軍隊に入り込むべきではないということは明白だし、ある程度厳しい思想チェックが行われているはずだ。が、結果的に軍隊は過激思想を見逃していたのである。「テロ等準備罪」は政府に反抗する人たちが対象になっているのだが、実際には政府内部にテロ集団が育つ可能性があり、それを事前に掴むことは極めて難しいのだ。さらに今回の事件は自衛隊員が「テロを起こしそうだ」と世間から見られている人に偽装して犯罪を計画していたわけで、それをどう事前に察知して防ぐのかというのはかなり難しいことなのではないかと思う。