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小池晃参議院議員の敗北が意味するもの

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小池晃参議院議員の質問が空転しているのを聞きながらこれを書いている。空回りの理由は明らかだ。多分、議論自体が時間の無駄だからだ。
普通、行為には何らかの目的必要だ。つまり、その目的が間違っているからそれが非難できるのだ。つまり安倍首相にはやりたいことがない。やりたいことがないがゆえに、それを責めることはできない。ということで、批判のしようがないわけである。
現在の改憲勢力は、自民党・公明党・日本維新の会なので、公明党と日本維新の会の言い分を聞いてやれば自動的に憲法改正の発議ができると考えているようだ。そのために自民党の党内論議を無視したようだ。また憲法審査会そのものが政局の材料となっているようで、蓮舫議員の説明によれば参議院では開かれてすらないそうである。とはいえ安倍首相の頭の中では「機は熟した」ことになっている。主観なのでこれを否定することは難しい。
ではなぜ安倍首相は憲法改正がしたいのだろうか。それはおじいさんが憲法改正したかったからだとしか考えられない。おじいさんの岸首相はもともと戦時経済を主導した官僚で戦後A級戦犯になった。GHQに反発心を持っていたのだろう。今回インタビューが載った読売新聞の正力氏もA級戦犯になった歴史がある。岸氏に引き上げられて貴族議員になったという経緯があるのだそうである。
彼らが憲法改正にこだわるのは戦争に負けて仕方なくアメリカのいうことを聞いたけれども本当は反抗心を持っているといういささか複雑なルサンチマンによるものだろう。国民はこれにお付き合いさせられているだけなのである。
だが、このルサンチマンはかなり危険なものになりそうである。片山虎之助参議院議員は首相に「教育無償化というと財源が必要なのですが、維新は官僚の無駄を省き財源を捻出する立場であります」が「すぐにすべてを実行せずともよいのではないでしょうか」と囁いた。
この発言どこかで聞いたことはないだろうか。民主党が理想論的な改革を訴えた時、いわゆる現実派の人たちが言っていたのと同じ言い方なのだ。官僚機構の無駄を省けば財源は出てくるという主張の裏で藤井元財務大臣は次のように語った。

「財源にはそこまで触れなくていい。どうにかなるし、どうにもならなかったら、ごめんなさいと言えばいいじゃないか」

そして実際には財源が捻出できなくなり野田政権下での消費税増税に踏み切った。国民は選挙で政権を交代させることができるのだが、憲法改正にはそれ以上の労力と時間がかかる。吉村大阪市長はTwitterで「政権交代が起きても教育無償化がなくならないように憲法に書くのです」と主張しているのだが、これは財源がないことがわかっても決めたことは実現すると主張していることになる。
懸念するところは北朝鮮化なのだが、これを議論しても理解は得られないのではないかと思われる。あくまでも可能性でしかないからである。北朝鮮化とは憲法でさまざまな約束をするが、実は政党が憲法の上に置かれているので何も実現しないのだ。立憲主義には憲法が権力を縛るという側面があるわけだが、北朝鮮の憲法は宗教の経典のような役割を果たしている。つまり祈れば近づけるかもしれないが決して実現しないというものである。
 
「決まらない」ということに飽き飽きして、とにかく何でもいいから憲法を改正したいという気持ちはわかるのだが、考えなしに憲法を変えてしまうと、憲法そのものが空文化することになるだろう。自衛隊は軍隊だけど交戦権がないということになり、教育無償化は約束したけれど財源が見つからないというのが考えられる憲法改正の帰結だ。
日本人は民主党政権下で実現した二大政党制による政権交代に嫌気がさして政治から引きこもってしまったように見える。多分、憲法を改正しても同じようなことが起こるのではないだろうか。共産党は「議論そのものが崩壊している」ということがよく理解できていないのだろう。そこで憲法改正の意図を仮置きすることになるのだが、それが却って議論を空転させて「負けている」ように見えてしまうのだろう。