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国会の機能が合法的に停止された日

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よく、サヨクの人たちが「国会軽視だ!」と騒いでいる。「んな大げさな」と思うわけだが、昨日は本当にそう思った。思ったのだがあまり大騒ぎしたい気分ではないので、このブログを見ている方だけとしみじみと振り返りたい。大騒ぎしたくない理由は「それがなぜいけないのか」がよくわからないからだ。

行政のチェックをするのが国会の機能だ。このチェック機能があるからこそ国会は少し無茶なことができるわけである。つまり何もやらないと決めてしまえば国会はいらない。安倍首相は意味を解体することで法律違反なしで国会を解散してしまった。
さらに自分の主張が知りたければ読売新聞を読めという。つまり読売の読者とやってゆくのであとは知りませんよということである。例えば朝日新聞を読む人は国民ではないのだ。
安倍首相は「関係者」を通じて北朝鮮を威嚇するために自衛隊と米軍が協調行動していることを報道させた。と同時に「法律による義務はないので国会ではどんな作戦をとったのかを報告しない」と述べた。長妻昭議員はわざわざ「過去の議事録には何かあったらできるだけ報告すると言っていますよね」と聞いているのだが「何か言えることがあったらいうが今回は言えない」と開き直った。つまり、法案審議中から国会に報告するつもりなどなかったのだろう。安倍首相にとっては行動を賛美してくれる人だけが関係者なのだ。
次に自民党総裁として「2020年までに憲法を変えたい」と主張した。が、国会で民進党に質問されると「自分は総理大臣なので答えられない」と言い放った。ただそういったわけではなく「総裁として読売新聞に応えているのでそれを読んでほしい」と宣言し周囲を呆れさせた。さらに法制局長官は「憲法案については国会で審議されることなので」と言いのがれた。ただ、協力的な日本維新の会に質問されると「教育は大切なので」と自身の憲法観の一端をのぞかせた。
デタラメなのだが、このデタラメを目の前で堂々と見せられると「ああ、こういうのもありかな」と思えてくる。森友問題では政府の資料が「なかったこと」にすることで説明を避けているので、安倍政権というのは徹底的に国会での議論を嫌がる政権だということになる。
が、これが「なぜいけないことなのか」と考えると、途端に行き詰まってしまうのである。「国会審議が空洞化したら権力が暴走して戦争になる」と騒ぎたくなってしまうわけだが、実際には国は動いており、社会も崩壊していない。米軍との関係も順調で北朝鮮は結果的にミサイルを日本に向けて発射していない。

すると、機能しているのだから「細かいことはこの際どうでもいいんじゃないか」などと思えてくる。政治が漂流しないのは、役割分担が曖昧でも日本人が組織を機能させられるからだ。個人主義のアメリカやフランスでは起こりえないことだと思うのだが、日本人は集団性が高く「忖度」が働くために全体像が失われにくいのではないかと思う。多分予期しないエラーには弱いはずなので、ことが起こればパニックが起きるだろうし、競争もできなくなるだろうが、即座に破綻することがない。

ということで別の側面から見てみたい。ヒントになるのは新聞のあり方である。

新聞ができた経緯を見ると、人々がジャーナリズムを欲しがったのは特定政治団体とは切り離された情報を人々が欲しがっていたからだ。「コーヒー・ハウス」を読むとこのあたりの事情がよくわかる。新聞ができた背景には資本主義がある。つまり海外物資と投資の情報を欲しがった人たちが新聞の最初の読者なのだ。

人々が新聞を読みたがっていたのは「操作されていない情報」を持つことで自分の経済活動の役に立てるためだった。人々が「政府の考えを知るためには読売新聞を読めばいいんだな」と思うということは、とりあえず政府のいうことに従っていればよいと考えていることになる。これは国民が「自分たちの成功は自分たちで切り開いて行こう」と考えていないということを意味する。
安倍首相が読売新聞とやって行くことに決めた背景にはトランプ大統領がFOXニュースとべったりで批判的な新聞をフェイク扱いしていることが原因にあるのではないかと思う。つまり、この事は意外と世界とつながっていそうである。
読売新聞を支えているのは高齢者なので、まあ納得できる結果ではある。彼らには自分たちで世界を切り開く気力もないのだし、その必要も時間もない。とはいえそれに代わるメディアも出てこない。多くの現役世代はスマホでほしい情報だけを無料でつまみ食いしている。お金を払って情報を得たとしてもそれをお金儲けには使えない。彼らは単に生き残りたいだけである。
このことから類推されるのは、日本人が社会について自分で考えるのをやめているということである。社会と関わらないので、国会で何が行われても(あるいは何が行われなくても)特に気にしない。
「安倍が国会を軽視しているから日本が戦争に突入する」などということは起こらない可能性が高そうなのだが、問題になるのは「国民が社会に参加する意欲を失っている」ということであるように思える。