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現代でも国家権力が適当な理由をつければ社会的に市民を抹殺できます

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共謀罪の審議が始まった。多くの人たちが「言いたいことを言えなくなるのではないか」と怯えているのだが、実際でもかなりめちゃくちゃなことが行われているようだ。危険性は2つあると思う。

  1. 国家が怪しいと思う人が逮捕される。これは法が平等に執行されるべきだという憲法に違反する。共謀罪はこれを加速させるだろう。
  2. 本当に凶暴な行為を働くテロリストが見逃されることになる。

Twitterで流れてきたのは「レンタカーを割り勘にしたら白タク容疑で逮捕された」というものだ。意味がわからなかったので調べてみたら「白タク容疑で逮捕されたが起訴できなかった」記事を見つけた。担当弁護士の書いた記事のようだ。それでも20日も拘留されたのだそうだ。
レンターカーを使って福島に原発を見に行ったが、レンタカーを割り勘にしたのでこれは白タクだろうということになったようだ。だがさすがに無理があるので起訴猶予となった。(記事は産経新聞)「起訴猶予」とは怪しいけど裁判にはならないので見逃してあげるというものである。
この人たちはほとんどが公務員なので地位は比較的安定しているのだろうが、一般の会社だったら容疑がかかった時点で「お前やったんだろう」ということになりマスコミから吊るし上げられて仕事を失っていたかもしれない。つまり、裁判が維持できなくても逮捕さえできれば社会的に抹殺することが可能なのである。
ただ、産経新聞の記事だけを見てもよくわからないことがある。弁護士の記事には新聞の切り抜きが添えられている。小さな字なのでよく見えないのだが、中日新聞のようだ。東京新聞も探してみたが該当する記事は見つけられなかった。地方欄で扱われたのみということのようである。
東京新聞には別の記事がある。加須市の職員は「中核派」だったというのだ。中核派も高齢化したなあと思えるのだが、中核派といえば暴力集団なのだから「普通の市民じゃないじゃん」とも思える。反原発派などというと今でもプロ市民扱いされるので「普通ではない左巻きの人たちがやっているんだろう」という印象もある。じゃあ、普通の市民が逮捕されることはないのだと思える。
だが、問題点はいくつかある。一つ目の問題はこの人たちが中核派だというのは国家が勝手にそう言っているだけであって、必ずしもそうとは言い切れないという点だ。裁判もないのだから「怪しい」だけで社会的に抹殺されることになる。弁護士は「新聞は警察発表を何の検証もしないで掲載している」と批判している。安倍首相に批判的なはずの東京新聞でさえ「あの人たちは中核派だったんだ。熱心にお仕事してたのに……」みたいな伝え方になっているほどだ。
次に、どの集団に属するかによって何が犯罪行為かが決まってしまうということになると(党派性にこだわる日本人にとっては自然なことなのかもしれないが)憲法が規定している「法の元にはすべての人は平等」であるという原則が崩れてしまうことになる。もし「計画段階」にまで拡大されると歯止めがかからなくなりそうである。
しかし、この話の一番恐ろしいのは、実はこれが国家体制の維持のために組織的になされた行為でもなさそうだという点だ。添付された記事の切り抜きを見てみると「警察・検察当局はテロを未然に防げなかった」と指摘されるのを恐れて、管内でテロ行為や準備行為が起こるのを過度に警戒しているという指摘がなされている。しかし警察・検察には大したインテリジェンス能力はない。すると「かつてのお客さん」を監視して、何かあったら騒ぎ立てることによって「お仕事してました」というポーズを取ろうとしていることになる。
テロを起こすような危険思想というのは、中核派のように高齢化しており警戒監視されている組織を選ばないだろう。つまり、無駄に市民や元活動家が逮捕される一方で、実際に何かしでかすような人たちが野放しになる可能性があるということである。
ここで「準備行為でも罰することができるようにしてやったのに、テロが防げなかったではないか」と言われかねないというプレッシャーが加わるわけで、現場の暴走は避けられないのではないか。
この一例だけでも共謀罪が危険なのは明白なのだが、民進党がこれを取り上げたという話はきかない。まあ、当事者たちからはアテにされなかったのだろうが、加須にも民進党の支部はあるのではないか。あの人たちはいったい何をしているのだろうか。


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