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シリアに対する攻撃のこれまでのまとめ

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アメリカがシリアに向けてトマホークミサイルを打ち込んだ。(リンク先はロイター)当初、最低50発以上と言われていたが70発にまで増えた結果、最終的に59発で落ち着いたらしい。60発打って、1発が海に落ちたそうだ。シリア政府は6名が亡くなったと伝えた。トランプ大統領は直後に記者会見し、この措置を人道的な配慮によるものと説明した。シリアでは化学兵器が使われて(シリア政府は関与を否定)国際問題化していたからだ。このニュースは従来「孤立的な政策」を維持してきたトランプ政権の大きな政策変換として驚きをもって迎えられた。
ロシアには事前通告していると報道されているが、NHKの報道では「今後ロシアとの関係がどうなるか」ということが懸念されているようだ。ロシアはのちに非難する声明を出しており、国連でもアメリカの事前通告のない攻撃を非難する演説を行ったそうだが、先進諸国を中心にアメリカへの支持があった。今後の成り行きが注目される。シリアはロシアの利権なので(シリア内にロシアの基地があり、アメリカと沖縄の関係に似ている)ここに踏み込んだという意味は大きい。これまでアメリカは敵対勢力を通じてアサド政権を攻撃しており、米軍がアサド政権を直接攻撃することはなかったとのことである。
また、習近平主席がアメリカを訪問中であり、こちらもなんらかのコミュニケーションがあったものと予想される。国連への通告が行われていたかどうかは不明だが、通告はなかったのではないか(つまりアメリカの単独行動ではないか)と考えられる。議会への通告もしなかった模様。今後、中国や北朝鮮との関係が変わる可能性があり、中国や北朝鮮が今回のニュースで刺激された可能性がある。このニュースが日本で大きく取り上げられたのは、アメリカの北朝鮮政策が日本の外交・安全保障政策に直接影響を与えるからだ。中国や北朝鮮がどのように受け取ったのかというニュースはない。
日本ではロシアとの関係が心配されているが、アメリカではトランプ大統領がこれまでの孤立主義的な姿勢を捨てて「人道的介入」に舵を切ったことに戸惑いがあるようだ。保守強硬派はシリア攻撃に賛成を表明しているが、人道的な立場から積極的な介入をすべきと考えていた人たちは態度を表明できずにいるようである。またオルトライトの中にもトランプ大統領がアメリカの外の出来事に「首を突っ込んだ」ことに失望する意見があるそうだ。国内政治が行き詰っているから外交政策を転換させ人気回復を図ったという見方もあり「サプライズだけがトランプの持ち味だ」というような感想もある。事前に何の相談もなかったことで議員の一部は反発している。いずれにせよ「何が起きるか読めないし、意図もわからない」というのが正直なところだろう。
識者たちは、バノン氏がNSCを離れたことで戦略的なオプションが増えたと捉えているが、トランプ大統領が戦略的に判断したと考える人は少なく、単に周りのインプットに従ってリアクションしているだけだという観測も出ている。かつて湾岸戦争ではイラクを悪者にするために様々な映像が使われたのだが(石油まみれの水鳥とかナイラ証言などが有名)、トランプ大統領が同じような手法を使って国民に印象を与えているのか、トランプ大統領も一般の国民のようにある印象を与えられて操作されているのかを評価しかねているようである。つまり、トランプ大統領は場当たり的に行動しており、何をやるか、やったあとどうするかが全く読めないというのだ。
案の定、安倍首相はトランプ支持をいち早く表明したが、事前には教えてもらえなかったようである。岸田外務大臣は事前通告がなかったことを認めはしなかったが否定もしなかった。安倍政権は「緊密な連携」などと言っているが、その内容は空虚なものだと言える。ヨーロッパのリアクションは今の所不明だが、化学兵器の使用に関してはシリアを避難していたようだ。ただし、外交による説得を試みていた勢力もありそうで、アメリカが大規模な軍事作戦を衝動的に行ったとすれば、そうした動きが却って潰されてしまった可能性もある。
中国が北朝鮮を抑えなければ、北朝鮮にも同じことをやるぞというメッセージになっていることは考えられるのだが、過度に反応した北朝鮮が予測不能な対応に出ることも十分に考えられる。不確実性が著しく増していることは確かなようだ。このため日経平均は続落した。また、アジアの株も下落しているそうだ。北朝鮮が刺激された結果日本への攻撃などという暴挙に出れば、トランプを支持した安倍首相への非難が集まる可能性があるが、日本国民のリアクションはまだわからない。
 


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