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減価償却はサンクコストです、が……

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減価償却はサンクコストというのは嘘だという書き込みを見つけた。で、これにレスをつけようと思ったのだが、なんかややこしい話になりそうなのでまとめる。


確認したわけではないけれど、多分、池田信夫さんのこの文章が元になっているものと思われる。
まず減価償却は初期投資の変形だ。つまり、過去に支払いが終わった費用を分割して計上しているだけなので、すでに投資は終わっている。ゆえに減価償却はサンクコスト(埋没費用ともいう)だ。このあたりは検索してみるといろいろと出てくる。
ただ、この一連の発言のもとになった小池さんの発言の意味がわからないので、議論自体あまり意味がないんじゃないかと思う。サンクコストを「取り返しがつかない何か」と言っているように思える。実際には「すでに発生した出費」はすべてサンクコストなので人間が恣意的にサンクコストを作ることはできないからだ。

小池さんは「サンクコストにならないためにどうすべきか客観的、現実的に考えていくべきだ」といいましたが、(池田さんの文章から引用しました)

ということで投資の最大化ということを捉えると、池田さんの言っていることが正しいように感じられる。豊洲はこのままで安全なのか(つまり追加投資コストはかからないのか)という議論が出てくるのだが、多分それがわかっているので不自然な位置で「飲み水じゃないから大丈夫」という話が出てくる。これは多分予防線になっているのではないか。
そもそも初期投資が終わっているとはいっても、支払いはすんでいないらしい。出費はあったのだろうが、どこかから借りているのではないだろうか。プロジェクトの提言をみるとその費用をどう議会に説明するかという問題が起きているように見える。文章によると提言は次のようになっているという。以下引用。

それによると、市場の豊洲移転が案として成り立つためには、お金の問題を解決しなければいけないとして、(1)豊洲の赤字を防ぐため、他の10市場も含めて使用料を2倍に上げる、(2)11市場を順次売却して、その収益を市場会計に繰り入れて赤字を補う「たこ足生活」で対応する、(3)減価償却分(大規模修繕・改修などの設備費用)約3050億円と豊洲建設費の不足分、市場の赤字は、すべて税金で賄う―の3点を挙げている。

普通プロジェクトの投資計画を建てる時には、便益と費用を並べて現在価値を出した上で投資の正当化するはずだから、豊洲建設が決まった時点で費用のアプルーバルは出ているはずだ。お金を使ってしまって建物が建っているのに今更「プロジェクト自体が成り立たないかもしれない」などと言い出すのはおかしな話なのだが、それがまかり通っているのが都議会なのかもしれない。
この文章の一番大きな問題は何だろうか。それは政治的な説明責任と経営上の投資の最大化という問題がごっちゃに語られていることなのではないかと思う。
政治責任は過去に起こったことに対して問われるのだから、埋没費用だろうがなんだろうが関係がない。税金を無駄遣いしたのなら正されなければならないし、運営体制がいい加減ならそれも精査されるべきだろう。また、過去にいい加減なお金の使い方をした人は将来にわたってもそういうお金の使い方をする確率が高いからである。さらにモニタリングすらまともにできていなかったわけだから「追加費用がかからない」という言葉の信頼度もわからない。つまり、説明責任に対するクレディビリティの問題だ。これも信用問題で、平田座長は「安心は政治マターだ」みたいなことを言っている。
つまり、政治問題はプロジェクト運営能力と発言の信頼性に分解できそうだ。
一方、商人の世界では持っているお金を最大化しなければならないわけだから、過去にとらわれるのはよくない。サンクコストが問題になるのは長々と投資をしていると成果が上がらなくても「なんとなく後ろ髪引かれる」気分になるからだ。今まで使った金をドブに捨てるのかという気分になる。これが問題になるわけである。このつぶやきの前段には「損きりの言い訳に使われる怪しげな用語」というようなニュアンスがあるのだが、これはある意味では正しい。
さらに、文章の後段は主観やリスクの話をしているので、さらに話がややこしくなっているのだが、この文章は「無理を承知でめちゃくちゃな出費をしたとしても既成事実を作ってしまえば問題はなかったことにできる」と言っているように聞こえる。問題を放置した責任までなかったことにできるんですかと言われれば「それは通らないですよね」としか言いようがない。
同じような論法は原子力発電でも見られると思う。原発事故は起こってしまったので除染に一兆円かかろうが二兆円かかろうがそれはサンクコストだ。ゆえに原発は一番安い電力なのだと言われれば「それは将来同じような災害が起こったらその費用も度外視するつもりなんですよね」としか言えない。だが、実際にはその類の議論がまかり通っている。
豊洲・築地の問題は、利権の絡んだ面倒な政治問題だ。加えて感情的な議論を起こしてページビューを稼ぎたい人たちがたくさんいて、袋叩きすら商売になっている。なので、あまりテクニカルなところには立ち入りたくはない。だが、議論の顛末を見ていると、つくづく党派性のない試算とモニタリング結果が見たいなあと思ってしまう。
長々と1900文字も書いてしまったが、豊洲の問題は「政治的問題(プロジェクト運営能力)」・「政治問題(信頼性)」・「経営(将来の収入と追加投資)」「リスク」の問題がごっちゃになっていることが問題だと思う。中にはわかっててわざとごちゃごちゃに書いている人もいるので、なかなか始末に負えない。
 

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Comments

“減価償却はサンクコストです、が……” への1件のコメント

  1. […] 昨日の減価償却についてのつぶやきを見たあとで、錯綜した議論の原因を探そうとおもいいろいろと調べてみた。簡単におさらいすると、豊洲市場移転問題の議論で「減価償却はサンクコストだから考えなくて良い」という話があり、それに対して築地存続派の人たちが「どんなのデタラメだ」と言っていたというのを見かけたという話だ。 […]