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小泉農林部会長の孤軍奮闘

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幼児教育の無償化を…「こども保険」創設を提言へという記事を見つけた。最小に見た時に「ああ、うまいこと考えたな」と思った。

安倍首相は政権が吹き飛ぶ可能性が高い消費税増税に消極的で収入増に行き詰っている。社会保障の負担は膨らんでゆくばかりなのでこども向けの財源は確保できそうにない。社会保険料は天引きされるので0.1%程度増えてもあまり痛みを感じないだろう。別出しにならないと支払っているという感覚がわきにくいからだ。

いずれにせよ、日本の成長は行き詰っていて納税者の負担増以外には道がなさそうだということはよくわかる。これまでは「アベノミクスの果実」などと言っていたのだが、そんなものはなかったのだ。

いろいろな選択肢の中から精一杯「若手」が考えた策なので応援してあげたいが、なかなかそういう気分になれない。まず、周囲は勝手なことばかり言っているようだ。毎日新聞から引用する。

ただ、いずれの案も決め手を欠く。教育国債は「借金に過ぎない」(財務省)、消費増税は「政治的に難しい」(党中堅)との批判があり、こども保険にも「リスクに備えるという保険の趣旨に合わない」(厚生労働省関係者)との懸念が漏れる。党は、政府が6月にも決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に財源論の明記を目指すが、とりまとめは難航が必至の情勢だ。
ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170330/k00/00m/010/161000c#csidx9a1cb8cfc4139c99084c0157899af3e
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さらに安倍首相は一切間違いを認めない人なので、いつも「俺たちの政策はうまくいっているが、もし恩恵を感じていないのだとしたら、お前らが悪いんだ」というような言い方をする。

それだけでも怪しいのに、同じ時期に日本会議の人たちが集まって「憲法改正するぞ」と怪気炎をあげたそうだ。これまでの言動を見ていると、日本会議の目的は国家の私物化だ。国会議員が国民を指導する彼らの取っての理想国家の樹立を夢想しており、負担だけを国民に押し付けるような政策が理解されるはずもない。

税金や社会保険料による国民の負担増は難しい。それはなぜだろうか。

日本の税制は企業、国民、政府の間の経済循環で成り立っていた。ここから企業を除いた結果起きているのが今の不況だと考えられる。企業は国内投資(生産性の向上、賃金、生産施設の建設)などを行わなくなり、蓄積しはじめた。ここから循環に回る資金が枯渇し、消費に回る金がなくなり、ますます市場が干上がるという悪循環が生まれている。子育ての費用も正社員への手厚い賃金という形で企業が担ってきたのだが、最近では「保育園をいくらつくっても足りない」という状態になっている。保育園ができれば、それにあわせてパート従業員を増やすというような循環があるのではないかと考えられる。つまり消費税増税や社会保険料による徴収は企業を巻き込まない限り、間違った政策となってしまう可能性が高い。

しかし、これに対して日本の有権者は直接政府に抗議をしたりしないで、政治と独特の距離の取り方をする。一度取られた税金や社会保険料はなかったものとみなすようだ。政府を監視して税金の使い方を精査しようなどという気持ちはない。

しかし、新奇性のものに対しては極めて敏感に反応する。例えば消費税増税の可能性をほのめかしたり実行した政権はことごとく潰れている。最近では野田政権の没落が記憶に新しいのだが、それまで人気のあった細川内閣も国民福祉税構想を言い出した途端に崩壊した。当時の状況は日経新聞に詳しい。

どうも日本人は「負担」を言い出すとそれに見合うような見返りを求めるようだ。ある種の契約意識が働くのだろう。増税は「損」なのでそれに見合う「オトシマエ」を欲しがるという意味ではヤクザ的な気質があると言えるのだが、もしかしたらヤクザの方が日本の伝統的な契約観を持っているのかもしれない。感覚的には、お上を告発したら死罪相当という感じなのかもしれない。千葉には佐倉宗吾という人がいるのだが、お上に直訴したということで子供もろとも処刑されてしまった。佐倉藩を飛び越えて将軍家とやりとしたというのがいけなかったのだと思うのだが、そうでもしないと付近の農民は飢えて死んでいただろう。

つまり何かを言い出す時には命を差し出さなければならず、それ以外は契約としては認めないよということだ。日本人は書かれたものを信頼せず、何かを言い出したら過大な犠牲をコミットメントの証明として使うのだ。

いずれにせよ、安倍政権がどんなに情報を隠蔽しようが、土地を不当な価格で払い下げようが、大臣が記憶に頼る曖昧でめちゃくちゃな答弁を繰り返そうが、私人をリンチまがいに告発しようが、国民は特に怒らない。それは安倍政権が「アベノミクスの果実でなんとかするから国民の負担は一切増えませんよ」と言っているからである。

多分、この提案がどのような報じ方をされるかはわからないし、どういう受け止め方をされるのかはわからないのだが、有権者がこれを「やっぱりアベノミクスの果実だけではダメだったんで負担してください」と受け取ってしまった時に何が起きるのか、ちょっと楽しみである。