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安倍首相と籠池理事長に学ぶ危機管理

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両陣営に別れた議論はいろいろあると思うので、できるだけニュートラルな立場から、国会での籠池理事長の吊るし上げと安倍首相の危機管理能力について考えたい。この件で、安倍官邸はいくつかの明確な間違いを犯しているからだ。反安倍人たちは安倍政権のグダグダぶりについて再確認できるが、安倍首相を支持される方も、組織の危機管理についての洞察が得られる。
もともとこの話は土地の不正取得の件が問題になっている。しかし、籠池さんとの関係を保ったまま「関係はあるが違法行為はない」といえば終わっていた程度の問題だった。だが、安倍首相のちょっとした行動の間違いから大炎上してしまった。この意味では安倍支持派の言っていることは正しい。忖度は犯罪ではないし、忖度を問題にしている限りは野党は何もできなかったはずだ。ちなみに蓮舫さんの認識はこの程度だった。


第一に、安倍昭恵さんがセキュリティホールになっていたことは明確だ。安倍首相は夫人をコンロールできていない可能性がある。夫人は私人か公人か曖昧な上に政府の情報にアクセスしている。だが、安倍昭恵さんは安倍晋三さんと暮らしているので「黙らせる」ことができる。まずかったのは野党の追及を恐れてつい「私人である」と閣議決定してしまった点だろう。すると私人が国家公務員を私物化して調査させているという議論が成り立ってしまうのだ。正直が一番の策であるという点も忘れられている。これは倫理的な問題ではなく自由度が増すからだ。文脈をコントロールできないのにストーリーを作ると選択肢が限られてゆく。


それでもいったん秘密にしたのだから、なんとしてでも隠し通す必要があった。
そもそも安倍首相は籠池一家を嫌いだったようだ。だから関係そのものを隠そうとしたのだろう。安倍首相が健全な支持者に囲まれていたならこうような胡散臭い危険な人と付き合う必要はなかったといえ、安倍首相と夫人は大変危険なゲームを行っていたといえるだろう。夫妻はどちらも良家の子女であって、こうした人たちと対抗するような喧嘩のスキルはなかったはずである。なぜ、表沙汰になると困るような人たちと付き合っていたのだろう。
安倍首相は朝日新聞の報道を受けて騒ぎが始まってから籠池理事長とのコミュニケーションラインを「こんな人は知らない」と言って一方的に断ち切ってしまった。もともとあまり親密でなかった関係を断ち切ってしまったことで、その後籠池理事長は疑心暗鬼になり、もともとセキュリティーホールであるうかつな安倍昭恵さん経由でつながっているにすぎず、安倍側から籠池理事長がどのような行動に出るかがわからなくなった。
加えて安倍首相は「関係や介入があれば首相をやめる」とまで言い切ってしまった。ここで野党は「籠池さんの関係を証明さえすれば、安倍さんは辞めてくれるんだ」と受け取ってしまった。しかも、部下である議員たちは安倍首相や昭恵夫人から詳細な情報を取れなくなった。詳細に話が聞けたなら、もう少し具体的な反論ができたはずだが「ない」という前提のために詳細な話が聞けなかったのだろう。西田議員は「夫人から直接話を聞いた」と言っているようだが、長い時間をかけても籠池さんの人格否定と「ここで嘘をつくと偽証罪になるんだぞ」という恫喝だけしかできなかった。これは不遜な印象を与えるだけでなく、攻撃材料がない(つまり具体的なことを聴取できていない)ということを露呈してしまっている。
本来なら籠池理事長の人格を貶めてしまえば「あの人の話は信頼できない」となって終わったかもしれないが、もともと怪しい人物にもかかわらず証言の一つひとつが妙に具体的なのでひょっとしたら真実が含まれているのではないかというような印象になっている。なぜこんなことが起こるかというと事前に籠池さんの人格を貶める印象操作をやっていたからだ。印象操作が裏切られてしまうと逆に「あれ、話と違う」という疑念が生まれるのである。
自民党側は「お金がないのになぜ学校を建てられたのか」とか「安倍首相の名前を騙って寄付金詐欺をしているのでは」などと攻撃しているのだが、それは公知であり特に驚きはない。「であればどうしてそんな人たちに学校の認可を与えたのか」という反論になる。これはそもそも籠池さんに聞くべき問題ではない。これが最後の問題だ。つまり、自民党の議員にはそもそも質問を組み立てる能力がないのだ。維新の党も質問ができずに籠池さんを恫喝していた。
なぜこんなことが起こったのだろうか。普段は無茶苦茶な官邸のリクエストを官僚が寄ってたかってサポートしているのだろう。しかし今回は官僚が疑われているので籠池さんの追求に加われなかったのではないか。もし追求に加わろうとすれば当事者に話を聞く必要がある。しかし忖度はなかったことになっているので当事者から話が聞けなかったのだ。
今回質問に加わったディフェンダーの国会議員は民主主義の基礎さえ理解していない。これは偶然ではなく関係者(西田、葉梨、下地)は日本会議国会議員懇談会の所属なのだ。つまり、国会議員は官僚のサポートなしにはまともな質問さえできず、民主主義や人権を軽視しているということが露見してしまった。つまり日本会議から脱会した人を日本会議の人が公開で恫喝するという宗教裁判のがあの数時間の正体なのである。
安倍政権には安倍首相のコミュニケーション下手という大きな欠点があるのだが、つまり安倍首相が部下や周辺に規範を示すことができなくなっているということがわかる。私人である夫人が国有地の売却に関与し、官僚は首相の顔色を伺って国有地を不公平に払い下げている。さらに日本会議は国会を使って背教者を晒し者にしている。これらはすべて私物化である。国民は政治には関心がなく、この脆弱性は放置されるだろうから、安倍政権そのものが日本の危機管理上の弱点であるという結論が得られる。
 


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