国会で党首討論が行われた。「らしい」と書いたのは、実際に見なかったからだ。一応内容を確認してみたが「おそらく何も根本的な議論をするつもりはないらしい」ということが確認できただけだった。国民も現状に概ね満足しており国の形を大きく変えるつもりはなさそうだ。
ただ「概ね満足している」と書くと「いや自分はそうではない」と考える人がいるかもしれない。だが自発的に変化を起こしたいとは考えていないのだから、やはり満足していると結論づけざるをえないだろう。
国会で党首討論が行われたらしい。野田佳彦代表は党内に消費税減税問題を抱えており結論が出ていない。だから党首討論では国民生活の問題に切り込めなかった。
おそらく野田代表は党内多数派の意見をどうにかして無視したいと考えているのではないかと思う。財源の裏打ちのない消費税減税には反対の意思を明確にしている。となるとなんらかの形で逃げる必要がある。そこで持ち出したのが赤沢大臣のMAGAキャップ問題だった。朝貢外交だと批判したそうだ。
自民党の中にも「強気で交渉すべきだ」という声があるそうなのだが、日米同盟から手を引くぞと言われても対抗策がない。つまり日本人と日本の政治家に現状を変える意思がなければ平伏外交を展開するしかないのが現状だ。
ただ、そもそも最初から野田代表にまとまった国家論を期待しても無駄なのではないかという気がする。さらに立憲民主党支持者に「給付付き税額控除」について説明するように呼びかけてみたが応じるものはいなかった。支持者などいないか、あるいは制度を理解していない人がほとんどなのではないかと結論づけざるを得ないが、そもそも政策を立てる機関がないためこれも驚くには当たらない。
前原代表は集団的自衛権を強化すべきと訴えている。だがそのために憲法改正をという提案。日本人に現状を変える意思などなく憲法改正など夢のまた夢。さらにそもそもアメリカ合衆国が世界の警察として民主主義陣営を守る意欲を失いつつある。ただこれも「前原さんだしな」という感想しかない。
ここまで「日本人には現状を変える意思などない」と断定的に書いた。Quoraで「日本がアメリカと中国のどちらを選ぶべきか突きつけられたらどうしますか?」と聞いてみた。圧倒的に多いのが「どちらかを選ぶべきではない」「決めるべきではない」という答えだった。
背景にあるメカニズムは人それぞれかもしれないが、日本人に「変化を選べ」と突きつけると、まずは「選ばない理由」を一生懸命に説明し始める。本質的に変化への恐れを持っておりそこから逃げようとする。今回の党首討論もあまりにも明確な変化に耐えかねて「何もみなかったことにしたい」という日本人の本質を感じる。
そんな中最もうまく立ち回っているのが国民民主党の玉木雄一郎代表だ。
産経新聞の世論調査によると自公連立政権も嫌だが政権交代も不安だという人が多い。自公連立が不安定化すると選挙のたびにバーゲンセールが始まると学習した人も多いようで「自公+もう一つの政党」を選びたい人が増えているそうだ。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は19、20両日、合同世論調査を実施した。今後の望ましい政権の枠組みについて尋ねたところ、「自民・公明両党に野党の一部が加わった政権」が48・3%で最も多く、「現在の野党中心の政権に交代」が30・2%で続いた。「自公両党による政権の継続」は13・9%に留まった。
今後の政権「自公」わずか14% 「自公+野党」48% 石破対米交渉「期待せず」59%(産経新聞)
現状にも不満だが大きな変化も怖いという変化を拒む日本人的な選択肢と言えるだろう。変化に乏しい閉鎖空間での歴史が長い日本では大陸的なリーダーシップも海洋主義的な開拓精神も根付かなかった。代わりに変化に乏しく資源が限られた状況に対応する忍耐力だけが強く備わっている。
今回の党首討論で玉木氏は「石破総理には国民生活に対する危機感が足りない」と訴えているという。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、首相がガソリン税の暫定税率の廃止時期を明言しなかったことに関し「極めて不誠実だ」と反発。首相の答弁に対しては「危機感を感じなかった。国民は物価高に困っている。庶民感覚からかけ離れている」と非難した。
野党、首相答弁批判「期待外れ」 自民からは評価する声(共同通信)
国際情勢の大きな変化には目をつぶり「国民目線の」政権を望む日本人に対する正解が玉木雄一郎氏ということになる。
公明党の斉藤代表と亀井静香氏が高校の先輩・後輩の間柄であることもあり、公明党は玉木首班論に傾いているそうだ。
「玉木氏に目をかけてきた亀井静香元政調会長が、ウチの斉藤鉄夫代表に“総理の椅子をチラつかせれば玉木は必ず食いつく”と吹き込んでいるようです。二人は広島・修道高校の先輩後輩で、親交が深いんです」
「公明党が支えてくれるなら首班指名は受ける」と本人は前向き 国民×公明タッグで「玉木雄一郎首相」誕生の可能性(デイリー新潮)
本来ならば「国益を考えれば日米同盟を根本から見直す勇気を持つべきであり、ポピュリズム的な安易な減税論に逃げ込むべきではない」などと書きたいところ。だが、そもそも日本人が変化を望んでいないうえにアメリカ合衆国は自滅傾向にある。中国に対する態度を軟化させつつあり、関税戦争は中途半端なままでダラダラと交渉が続くのではないかと感じる。
なお共産党は要件の一部を欠き党首討論に参加できなかったそうだ。共産党はこれがわかっていたのだが「我が党だけは例外であるべきだ」と主張したが受け入れられなかった。共産党に関しては「お話にならない」と論評するしかない。