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ポピュリズムに傾く立憲民主党 消費税の時限減免を検討

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このエントリーは立憲民主党支持者からの反論を募集している。できればQuora宛に情報をいただきたい。

立憲民主党が「時限的な食料消費税0%案を軸に検討を始めた」と共同通信が伝えている。この報道が正確ならば枝野幸男氏のいう「ポピュリズム」に傾いているように思う。ただ、そもそも立憲民主党案の全貌はメディアに正しく報道されておらず判断材料に乏しいところがある。そのため、批判の前に「立憲民主党の支持者」からの反論が必要な状態だ。

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立憲民主党内では代表選挙の余波として消費税時限減税案で党内に意見の隔たりがあった。野田佳彦代表は大型連休の前に党の方針を決めたいとしているのだが、大型連休は土曜日から始まってしまう。

そんななか共同通信が立憲民主党は食料消費税0%案を軸にした検討が始まったと伝えている。仮にこれが正しければ枝野幸男氏がいうポピュリズムに傾きつつあることになる。枝野幸男氏は具体的な反論はしておらず産経新聞(投稿内ではS紙となっているが)の報道はフェイクニュースであるとの主張が見られるのみ。

自民党・石破政権が支持を落とす中で、立憲民主党の支持率もアップしていない。参議院改選組はさぞかし焦っていることだろう。ポピュリズムに傾くのもやむを得ないのではないかという気がした。

ただし報道を読むと「消費税の時限減税は」給付付き税額控除の導入が前提になっているようだ。そしてこの給付付き税額控除が一体何を意味しているのかについてほどんど情報がない。

給付付き税額控除自体はかなり古いアイディアで民主党時代からあったようだ。消費税額を一旦報告した後で所得や金融資産に応じて所得税の減免や払い戻し(給付)を行うという制度。

ここでまず疑問なのが「毎日の生活で支払った消費税をどうやって報告するのか」という問題だ。レシートを全て取っておいてそこから計算することになりそうだが申請のために膨大な手間がかかりそうだ。

これを踏まえて立憲民主党の2024年の政策集を読んでみた。給付の方法については将来検討するとなっているが、そもそもどう計算するのかについては全く書かれていない。また「所得」とはなっているが「資産」は入っていない。

消費税の逆進性対策については、軽減税率制度に代えて、中低所得者が負担する消費税の一部を所得税から税額控除し、控除しきれない分は給付する「給付付き税額控除」(消費税還付制度)の導入により行います。併せて、迅速・簡素な給付の方法を検討します。

立憲民主党 政策集2024(財務金融・税制

2023年に法案が提出されたときの立憲民主党のニュースを見てみたが「逆進性対策をすべきだ」とはされているが「具体的な手法」に関する記述はない。

ここまでをみる限り「立憲民主党には「べき論」はあっても具体的に実施できる政策立案能力はない」と判断せざるを得ない。

加えてさらにややこしくなりそうな要素がある。公明党が給付付き税額控除に反対している2016年の記事を見つけた。結果的に採用された軽減税率を正当化するための議論だが実にいやらしい反論になっている。

日本人は「制度の趣旨」よりも「他人との比較を通じた自分の立場」を重要視する。足を引っ張り合う性質が強い日本人の感情を巧みに刺激しており、ある種「さすがだ」と思わせるところがある。創価学会の信者にメッセージを浸透させるためにはこのくらいわかりやすい主張でなければダメなのだろう。

公明党は軽減税率提案を通すために「資産も把握しなければ正確な再分配にはならないだろう」と話をややこしくしようとしている。

「資産の把握はいらない」との主張もありますが、「所得がゼロでも親の資産を食いつぶして悠々自適に暮らす人もいるし、会社員と自営業者では所得の把握率に差が生まれている。所得の多少だけで給付対象を決めてしまうと、不公平を助長する可能性がある」(神野直彦・東京大学名誉教授)のです。

非現実的な給付つき税額控除(公明新聞からの転載)

さらに創価学会の信者に「給付を受ける奴は貧乏人だ」と吹き込みかねないところもある。これを「スティグマ」というカタカナを使って格上げしているところも悪質だ。

また、「国民に手間と負担を強いる」という問題点もあります。減税や給付を受けるには、国民一人一人がわざわざ税務署や役所に申請をしなければならない上、給付申請には「『スティグマ(貧困というらく印)』が伴うことが知られており、申請をためらう人々がいると推測される」(諸富徹・京都大学教授)。実際、消費税率8%への引き上げの際に実施された「簡素な給付措置」では、申請していない人が相次いでいます。

非現実的な給付つき税額控除(公明新聞からの転載)

公明党支持者は毎日こんな新聞を読んでいるのだなあと考え込んでしまった。人間愛を謳っているつもりで差別感情を誘発してどうするの?といったところだ。ただおそらくこうした影の差別意識や「あいつだけがずるい」という感情は日本人の心に強く働きかけるだろう。普段から布教活動をやっているだけあってこの辺りの目の付け所は実に鋭い。

そもそも立憲民主党側の「手続き」の具体的なイメージがさっぱりわかない上に、公明党が議論に参加すればさらに議論が感情的なものになることが予想される。

結果的に抜本的な制度改革をやろうとすると百家争鳴で議論がまとまらないということになりそうなのが日本の政治議論と言える。そのうち差別的な感情が刺激され「俺とお前のどっちが正しいのだ」というお立場論争に堕ちてゆく。

ただし、そもそもほとんど情報がないため「実は立憲民主党ではすでに理路整然とした制度論も整っている」という可能性は残る。おそらく熱心な立憲民主党支持者たちは制度議論をきちんと知った上で支持しているはずなので、是非反論と追加情報が欲しいと感じた次第である。

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