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関税交渉どころではない アメリカ連邦政府の統治機構の混乱と加速するアメリカ売り

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国内状況を描写するエントリーでは「問題に対処する意欲も能力もない日本人は何も知らないのが一番だ」と書いた。この例外が投資をしている人たちだ。

アメリカ売りが加速しているためNISA組は資金を逃避させるか塩漬けにするかの二者択一状態になっている。長期的にみれば保有資産がなくなることはないだろうが手元資金がすぐに必要な人はここが考えどころである。

また日本に流入した資金の受け入れ投資先が不足している。不動産など一部で資産バブル的な状況が起きるのではないかと思う。

これがいつまで続くのかを知るためには原因を冷静に把握し、どんなニュースに注目するべきかを確認する必要があるだろう。

Quoraなどで話をしていると現状把握を阻害する要因もあるようなので最後にそれも確認したい。

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ざっくり知りたい人はこの解説がおすすめだ。全体は30分で聞くことができる。政権内部がゴタゴタしているためアメリカ売りが加速しているが「パウエル・トランプ対決」はプロレス的な側面もあるなどとまとまっている。

移民追放問題についてQuoraで扱っていると「Photoshopされた画像を根拠に追放した移民をギャング団と決めつけている」というコメントがあった。トランプ政権は事実をあまり重要視せずSNS映えする「真実の代替物」が証拠として採用されることが多い。このため「ボーリング球テスト」のような虚偽情報も「都合さえ良ければ」事実として証拠採用されてしまう。

最高裁判所は当初「ヨーロッパ系・キリスト教系」が指導する国家体制が守られるのであればトランプ大統領を容認する考えだった。しかしトランプ政権がDue Processと呼ばれる法的手続きを無視し始めたため慌てて「戦時法を使うのは良いがDue Processを守るように」と警告している。しかしながら特に強硬な保守系判事2名が異例の同僚批判を展開した。バイデン政権時代に2020年の選挙は盗まれたと考える人々に共感し逆さ星条旗を掲げていたとされる判事が入っている。

このように最高裁判所も内紛状態にあり結果的に政権のやりたい放題という状況が続いている。

これをビジネス利用しているのがエルサルバドルのブケレ大統領だ。マルガリータを仕込んだ写真を撮影させてSNS投稿していたが、今度は隣国のベネズエラに「政治犯と自国民を交換しないか」と持ちかけている。

アメリカ合衆国は良心回路を破壊したまま順調に内紛状態に突き進んでいるのだが仮にトランプ大統領が「誰かを騙そうという明確な意識を持っている」ならば、まだマシな状況といえる。少なくとも統治のための嘘だからだ。だがそもそもこの統治が怪しい状況に陥っている。

外交交渉を担当する国務省では今真偽不明の情報が出回っている。近々「かなり大胆なリストラ」が行われるというのだ。ある外交関係者はその出鱈目ぶりを「無限匹の猿と無数のタイプライター」と表現した。猿の喩えは完全なランダムを意味する表現だが「ランダムの方が出鱈目よりマシだ」という意味になる。こうなると外交交渉にプロが介入する機会は減り各国との外交交渉はますます混乱するだろう。

ただそれでも安全保障がしっかりしていればまだなんとかなるかも知れない。

軍事を担当する国防総省では別の問題も起きている。ヘグセス国防長官は機密情報を妻や弟にも流していたとされる。アメリカの機密情報がかなり粗末に扱われているようだ。ところがこの「第二シグナル事件」報道が流れるとトランプ大統領は「ヘグセス国防長官は不満を持つ職員から攻撃されている」と反論した。

国防総省がどのような状況になっているのかはよくわからないのだが、辞めさせられた人たちは「完全な崩壊状態だ」と表現する。

米国防総省の報道官を最近辞任したジョン・ウリオット氏は先に、同省が第2次トランプ政権発足後の数カ月に職員を巡るトラブルや相次ぐ人事異動に見舞われ、「完全な崩壊状態」に陥っており、ヘグセス長官は更迭される可能性があると述べていた。

ヘグセス国防長官は不満持つ職員から攻撃受けている-トランプ氏(Bloomberg)

トランプ政権が戦っている最も大きな敵は「アメリカ合衆国政府の中にいる良心」であると考えることができる。自分達の主張を押し通すために逆らう相手を次々と連邦政府から追放している。これが統治状の混乱をもたらしている。このほかに厚生福祉や教育も混乱状況にある。

ここまでが長い前振りだった。トランプ大統領の関税政策の影響でアメリカ合衆国はインフレに見舞われることが確実視されている。これを是正するために必要なのが大胆な減税と利下げである。

予算をめぐる議会交渉は難航しており、パウエル議長も利下げに応じる気配がない。あまりにも乱暴な変化が起きているため現状把握に時間がかかると考えているようである。

こうなるとトランプ大統領はパウエル議長を解任するかも知れないと仄めかしパウエル議長に利下げを強要することになる。

ベッセント財務長官もトランプ大統領に逆らうわけにはいかないため「数ヶ月かけて検討します」と時間稼ぎを図っている。結果的に市場は「アメリカは売りだ」と解釈し米国資産からの資金流出につながっている。

為替仲介大手ペッパーストーンの上級調査ストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は「パウエル氏が解任されれば、金融市場ではまず巨大なボラティリティーが生じ、想像し得る限りで最も劇的な米国資産からの資金流出が起こるだろう」と指摘。

米国資産売り加速、FRB独立性に疑問符-トランプ氏再び利下げ要求(Bloomberg)

アメリカ合衆国は最後の資金逃避先と理解されていたがもはや「売りの対象」になっている。その背景にあるのがトランプ大統領の気まぐれと行政・司法崩壊と言っても良いような混乱ぶりだ。つまりこの現象はかなり長く続く可能性があるということになる。

これがいつ頃に正常化するかを知るためには経済ニュースのアメリカ合衆国の政治についてモニターしておくのが良いだろう。特に主要なキャスト(登場人物)たちがどのような関係にあるかを把握するのが重要である。

現在NISA投資をしている人は自分の資金計画に合わせて処分するかホールドするかの判断を行う必要がある。現在のアメリカ合衆国は基本的に経済が強い状態になっているため完全悲観視する必要はない。ただおそらく今は新規参入の時期ではないだろうということがわかる。

アメリカ売り資金の行き先は金(最高値がついている)と日本円だ。トランプ大統領が為替について言及したことも要因の一つなのだが「ドル売り」の側面もある。

中国が貿易戦争を激化させる姿勢を見せており各国に「アメリカか中国かどちらかを選べ」と最後通牒を突きつけかねない事態になっており日本の商社・建設会社・自動車メーカーなどには苦しい展開。となると当然日本株に流れる資金は抑制的になる可能性がある。

最終的に投資先として残るのは何なのだろうか?と考えたところ「おそらく不動産なんだろうな」と考えた。東京圏や都市部の不動産が選択的に値上がりしているがこの状況はしばらく続くかも知れない。ただし本質的には投資先不足からくるバブルなので(日本の人口は縮小傾向にある)やがては崩れることが容易に想定される。

この辺りは、日経平均などがどのように推移するかを見極めたいところだ。

Quoraで話をしているとこの概況を受け入れられない人にはいくつかの類型があることがわかる。

  • 第一に「日本経済に対する批判」が「日本を屈辱する動きである」と反発する人がいるようだ。デジタル赤字是正を訴えるエコノミストに対して「なんの恨みがあって日本を屈辱するのか」「こんな人を徴用するメディアは許せない」と言っている人がいた。そもそもこういう人は経済情報を取るべきではないだろうと感じた。
  • 次にアメリカ合衆国で起きている動きについて「アメリカのようなきちんとした国でそんなことが起きるはずはない」と考える人がいる。情報を見ても不安になりたくないために「トランプ大統領の個人の資質の問題でありアメリカ合衆国には問題がないのだろう」と言ってくる。「アメリカ合衆国は日本と価値観を同じくする国」であり「これを貶める人は中国を不当に宣伝しているのだろう」などと類推するようだ。

不安耐性が極めて低いために「自分の気持ちが不安になった。どうしてくれるんだ」と文句を言う。そしてそういう人たちは出鱈目を言っているのだから言うことを聞く必要はない考えてお気に入りの真実に逃げ込んでしまうのである。

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