石破政権の関税政策における無能ぶり常軌を逸していると思っていたのだが意外と国益に適った動きなのかもしれない。
日本国民がアメリカ合衆国の正確に知ればパニックに陥りかねないが正常性バイアスも強く働くため断片的な情報を見ている限りは「きちんと話をすればわかってもらえるのではないか」と考える人が大半だろう。
日本語障壁が日本人の精神を「健全」に保っている。どうせ理解できないなら知らないのが一番なのかも知れない。
トランプ大統領が日本に対して8つの要求を突きつけた。為替は金融市場で深刻に受け止められ140円台まで円高が加速している。また8番目は今後深刻な問題となるだろう。しかし日本では「ボーリング球テストなどしていないのだから丁寧にと説明すれば理解しもらえるだろう」という論調が一般的だった。
- 為替操作
- 関税および輸出補助金として作用する付加価値税(VAT)
- コストを下回るダンピング(不当廉売)
- 輸出補助金および他の政府補助金
- 保護的な農業基準
- 保護的な技術規格(ボーリングのボールを使った日本の検査)
- 偽造、著作権侵害、知的財産の窃盗
- 関税逃れのための積み替え
アメリカでは連日のようにトランプ大統領が画像加工された映像や根拠が明らかでない主張をもとに自分の乱暴な要求を相手に押し付けることが日常的に報道されている。しかし英語が苦手な日本人がそれを知ることはない。何もできないのなら知らないのが一番だろう。
8番目は大きな問題になりそうだ。中国が「トランプ政権に擦り寄り中国を排除する動きを見せた国に報復する」と宣言している。アメリカ合衆国民はおそらく関税で大きな打撃を受けるだろうが中国もまた貿易戦争が長引けば企業倒産が相次ぐのではないかと言われている。すでに新卒学生の就職難が心配されておりチキンレースの様相だ。
本来ならば習近平国家主席もトランプ大統領と交渉すべきだが「メンツ」があり交渉に応じることはできない。そればかりか近隣各国に「アメリカと中国のどちらを取るのだ?」と迫りかねない状況になっている。確かに日本の港湾に倉庫を借りて箱詰め作業を行い「メイド・イン・ジャパン」製品を輸出すればアメリカ人は安い価格で中国製品を買い続けることができるだろう。大量に流れてくる物品の製造過程を港湾で精査することなどできるはずもない。
安全保障を強くアメリカに依存する日本はアメリカ合衆国に追従せざるを得ない。脱中国化の動きを迫られることになれば、おそらく100均依存の日本経済は大きな打撃を受けるだろう。パソコンの関連製品も中国企業の製品の品質がかなり向上してきているが、こうした製品の価格も軒並み値上がりするかも知れない。
日本政府と自民党の動きはかなり呑気だ。
石破総理は「最初の面談は顔合わせ程度だろう」と考えていたようだ。トランプ大統領は関税などで相手をゆすれば明日にも問題は解決するであろうという「スピード感」を持っているので意識の乖離はかなり大きいようだ。
農水省はすでにコメの流通を管理も把握もできていないためコメの値段は15週連続で上がり続けている。政府はコメの流通を把握できていないことにも危機感が薄い。「関税問題でアメリカからコメが入ってくるならコメの輸入拡大に反対する農業従事者を説得できて「一石二鳥なのではないか」と呑気に考えているようだ。
日本人は日本語情報空間と強い正常性バイアスに守られており、永田町はさらに強い正常性バイアスによって守られている。
さらに自民党内部は「どう見えるかが重要だ」と考える人が多数派のようだ。内情はどうあれ「包み紙」次第ではなんとでも国民を騙せると考えているのだろう。
自民党はアメリカ合衆国との同盟が政党の存続基盤だ。その基盤が根底から揺らいでいる状態だが「交渉においては強気の姿勢を維持すべきだ」という声が聞かれたという。集団思考に強く囚われており目の前の危機は全く見えていないようである。
自民党は21日、トランプ米政権による関税措置に関する総合対策本部を開き、政府への提言案を大筋でまとめた。日本を対象除外とするよう「攻めるべきは攻めるという強い姿勢で、政府間の協議を迅速に展開する」よう求めるとともに、国内の経済対策も「先手先手で講じていくことが不可欠だ」と強調した。
自民、米関税に強い交渉姿勢要求 提言案大筋まとめる、国内対策も(共同通信)
有権者も目の前の状況を「政権交代が起きると不確実性が高まる」が「自民党と公明党の政権にどこか別の政党が入れば選挙のたびにバーゲンセールが開催される」と状況を理解しているようである。公明党からは玉木雄一郎首班という声が聞こえてくる。亀井静香氏(引退済み)が公明党に強く働きかけているそうである。
産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は19、20両日、合同世論調査を実施した。今後の望ましい政権の枠組みについて尋ねたところ、「自民・公明両党に野党の一部が加わった政権」が48・3%で最も多く、「現在の野党中心の政権に交代」が30・2%で続いた。「自公両党による政権の継続」は13・9%に留まった。
今後の政権「自公」わずか14% 「自公+野党」48% 石破対米交渉「期待せず」59%(産経新聞)
日本人は目の前の問題に対処できないしそのつもりもないと考えるならば、何かが起きた時に大騒ぎすればいいのではないかと思う。
Comments
“日本の関税交渉議論は正常性バイアスに守られている ” への2件のフィードバック
アメリカのトランプ大統領が日本の米高騰をカードに、交渉(という名の恫喝)を行うのではないかと考えていましたが、日本政府自体がこれが国内向けに対して利用できると考えて交渉材料にしてくることを、私は考えていなかったなと思いました。ただし、これをしてしまうと都心の政治家と地方の政治家の間で溝が深まってしまうんじゃないかなと懸念しています(今更かもしれませんが)。
ワイドショーを見ていたら「コメの産地はカリフォルニアで、トランプ大統領の地盤ではないから交渉カードになりませんよね」という識者がいて「なるほどね」って思いました。日本の「持ち帰り型議論」の典型ですよね。