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トランプ大統領が今度はパウエル議長を恫喝

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連日トランプ大統領の行動様式について調べているとある共通した傾向が伺える。自分の思い通りにならないとジタバタと暴れ、相手が歩み寄ってくるのを待つのである。スーパーマーケットの床に座り込みお菓子が欲しいと泣きわめく子供に似ている。

日本人が日米関税交渉に夢中になっている間、実はFRBのパウエル議長との間に「バトル」が勃発している。トランプ大統領が日本にキツく当たらなかったのはおそらくこのためであろう。

ただし、この件で株式市場が大きく揺れることはなかった。NYダウは500ドル安で終わったそうだが市場が「トランプ大統領がFRB議長解任へ」と折り込めばもっとひどいことになっていただろう。ベッセント財務長官が大きく関わっている。ベッセント氏は狂った一座で「正常な」座員としてお芝居を続けなければならない。

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パウエルFRB議長が「前代未聞の関税の経済的影響を推し量ることは難しい」と講演した。影響範囲が見通せないためにすぐさま利下げを行うことはないと強調したことで株式市場は落胆し、金が高騰し、ドルは値を下げた

パウエル議長が思い通りにならないため、トランプ大統領はパウエル議長は解任されるべきだと投稿した。ポイントは「自分が解任する」と言っていない点にある。誰かに何とかしろと要求しているのだ。

トランプ米大統領は17日、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」と、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。

トランプ氏がパウエル氏を酷評、「一刻も早く解任すべきだ」(Bloomberg)

第一に大統領にFRB議長解任権限があるかどうかはよくわからない。さらにベッセント財務長官も「FRBは行政から独立しており大統領が解任すべきではない」との立場だ。さらに実際にパウエル議長を解任すればおそらく市場は大きく動揺するだろう。特にトランプ大統領は国債と金利を心配している。

トランプ大統領の行動様式には一定のパターンがある。相手を揺さぶって「ディール」を迫るのだが、相手が応じる姿勢を見せないとありとあらゆる手段を使って恫喝する。しかしそれも効かないと見ると「実はあの人はいい人だ」と言ってみたり、逆に「ママは世界一ひどい奴だ」と罵ったりする。

小学校低学年の子供の行動様式に似ている。ママがお菓子を買ってくれない。最初はスーパーマーケットの床に座り込んでぐずぐずと泣き、ママは本当は僕を愛しているはずだとか、ママは世界一ひどいママだと周りに訴えるのである。こうすることで周りの大人が「ママ」を説得してくれるのを待つのだ。

しかし現実的にはトランプ大統領はアメリカ合衆国の国民に選ばれた大統領であり日本はアメリカ軍に防衛を依存している。大統領は小学生の子供ではない。

ベッセント財務長官はFRB議長の独立性がウォール・ストリートにとって重要であることはわかっているが、トランプ大統領を刺激することは避けたい。このためホワイトハウス(トランプ大統領ではなく)に対してパウエル議長を解任すべきではないと「私的に」語りかけているとポリティコが伝えている。

同じことが関税交渉に関しても言える。ウォール・ストリートに及ぼす悪影響を避けたかったベッセント財務長官は、トランプ大統領に対して「とにかく中国なんだ」と説得したとみられており公式にも対中国強硬論を唱えている。ただトランプ大統領の真意は図りかねているようだ。うちわの会合で「自分達には決定権はなく全て大統領次第」と責任回避を図ったという報道も出ている。

この構想を声高に支持する当局者の一人、ベッセント米財務長官は先週、一部のパートナー国について「軍事的な同盟国としては良好な関係にあるが、経済的な同盟国としては完全ではない」と発言。合意に達する見通しは有望だとみており、「そうなれば一丸となって中国にアプローチできるようになる」と述べた。

狙いは中国包囲網、トランプ政権は貿易相手国に関税妥協の見返り要求(Bloomberg)

赤沢交渉団の非公式の見解によればトランプ大統領は日米同盟の片務性について改めて持論を展開したとみられているが、対中国包囲のためには日米同盟は重要なツールになる。今のままの状況が続けばトランプ大統領が日米同盟からの撤退を盾に日本に大幅な妥協を迫るようなことはないだろう。

共同通信は各国が「日本の対応を参考書に」と一定の評価を与えていると書いている。とにかく表面的には刺激はせず「早期妥結を目指す」と強調したうえで、相手が具体的に何を欲しがっているのかを研究した上で、じっくり対策を練ればいい。

すでにアメリカからのデカップリングが進む中国はアメリカ合衆国との交渉に応じずアジア各国に共闘を呼びかけている。同じようにパウエル議長も職務上アメリカの金融市場を守っているだけであり「解任されたら解任されたときのことだ」と考えている可能性がある。トランプ大統領を攻撃するような発言は行わず「今の所解任されるとは考えていない」と冷静に対応している。

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