BBCがスーダン情勢について小さな記事を出している。現地で一体何が起きているのだろうかと考えたのだが、結論だけを書くと資源を争奪し合う「マッドマックス状態」に近づいているようだ。
映画「マッドマックス」は1979年のオーストラリア映画。石油と水資源が枯渇し資源の奪い合いが起きている世界を描いている。国家が存在するとは考えにくく「万人闘争」状態で自警団が活躍してそれぞれの資源を守っている。
元々アラブ系とアフリカ系の混在地域だったスーダンは南部の石油をアラブ系が独占していた。そこで南スーダンにいたアフリカ系が独立し西側諸国は南スーダン系の民族を支援し石油利権を守ろうとした。しかしながら、大統領と副大統領が決裂し(どちらも正規軍・正規政府ということになる)混乱が広がった。南スーダンではその後も内紛が多発し今も混乱し続けている。
アラブ系優勢だった北部にも一部にも北スーダン系と言われる諸民族が暮らしており内紛が激化していた。
BBCの記事に南スーダン独立時の民族構成図を載せている。ところがこれを現在のRSF支配地域と重ねても支配地域の広がりを説明できない。むしろスーダン側に残った石油利権を国軍とRSFが争っていると考えたほうが説明がつきやすい。つまり基本的には石油利権などをめぐる争いと考えたほうがよさそうだ。
もともと西側諸国はスーダン政府軍を支援していたが、現在はイスラエル・ガザ問題やウクライナ問題にかかりきりになっておりスーダン情勢にあまり関心を持たなくなっている。西側が撤退するとロシアが政府軍支援に入った。
ところが、現在ではアラブ首長国連邦が積極的にRSFを支援しているようだ。ヘメディテイ氏は金(ゴールド)を背景にロシアに接近していたがロシアは政府軍に寝返ってしまった。そこで今度はUAEがヘメディティ氏を支援し始めたと言う流れのようだ。
In a report published in January, the U.N. experts said the RSF, which has fostered tribal alliances stretching across Sudan’s western borders, brought weapons into Sudan from Libya and the Central African Republic, and fuel from South Sudan.
Sudan’s conflict: Who is backing the rival commanders?(Reuters)
Before the war broke out, Hemedti had cultivated ties with Russia. Western diplomats in Khartoum said in 2022 that Russia’s Wagner Group was involved in illicit gold mining in Sudan and was spreading disinformation. Hemedti said he advised Sudan to cut ties with Wagner after the U.S. imposed sanctions on the military contractor. Wagner said last year that it was no longer operating in Sudan.
アメリカ合衆国のトランプ大統領は習近平国家主席やプーチン大統領に強い憧れを持っていて民主主義の擁護には関心を向けない。こうなるとこれまでアメリカ合衆国に押さえつけられていた各勢力は資源獲得競争に夢中になりスーダンのような状況が生まれたと考えることができる。
元々はロシアがクリミア半島とウクライナを侵攻したことで国連安全保障理事国が担ってきた主権国家体制は崩れてしまった。ただしこの時点ではアメリカとヨーロッパが積極的に情勢に介入し主権国家体制はかろうじて守られてきた。
ところがどう言うわけかアメリカ合衆国がこの流れに乗ってしまい結果的に「主権国家」体制が世界各地で壊れ始めている。
日本政府と日本人がこれを真剣に受け止め戦略的に対応することはないのだろうが、我々の生活の前提にある国連と主権国家を中心とする世界は急速に壊れ始めているということになりそうだ。そもそもトランプ大統領と登場で日米同盟の実効性はかなり落ちていると思うのだが、それ以上の変化が世界では起きている。